視線は,同じ空間に居合わせなければ届けることができない.ライブやトークショーなどのイベントにインターネット生放送を見て遠隔地から参加する場合には,視線をその場に送り伝えることは難しい.ファンであるアイドルグループの出演する生放送で,どんなに一推しのメンバーに熱い視線を送ろうとも,映像の向こう側にいる人達には届かず,視線を送られている方も向けられている視線に気がつくことができない.本稿では,生放送の映像の向こう側の実世界上に「見せる」ための視線を投映する生放送及び視聴環境を提案する.生放送を行う側では,カメラが捉える映像の範囲をプロジェクタの光がカバーするように設置し,映像を見ている視聴者から送られてくる視線情報を基に視聴者が画面上で見たところと同じ,「その場」に視線を投映する.視聴者が映像の向こう側に送った熱い視線を,その視線が向けられた対象に届けることができる.また,その場にいる観客の視線も奪うことで,視聴者が視線を向けた対象に更なる視線を集めることができる.本稿ではさらに,実際に熱い視線を送るためにハロゲンヒーターを用いる可能性についても言及している.
本稿では,画像処理を利用して映像プロジェクションと手書き文字のペルチェ素子による動的消去を利用したテーブルトップ型演奏インタフェースについて提案する.紙面に手書きで文字を書き,それをカメラで読み込み画像処理した後に紙面に投影し,ペルチェ素子駆動により紙面の手書き文字を消去する.ユーザは指を利用してプロジェクションされた文字を操作でき,文字をぶつけたりすることで音を鳴らす.本システムはソフトウェアとハードウェアで構成され,ソフトウェアでは文字認識及びフィンガートラッキングについて,ハードウェアではペルチェ素子駆動による文字消去及びタッチセンサによるタッチ検出について論じる.本手法によって,本稿で目標とするインタラクションを実現することができたが,より豊かなパフォーマンスを実現するために手書き文字の特徴や指先の動かし方を利用したインタラクションを検討する必要がある.
ミニチュアモデルを手で操作することで3DCG空間の現象やカメラワークを編集できる箱庭環境を提案する。箱庭内のモデル動作をモーションキャプチャすることで仮想空間のコンテンツ生成を容易にすると同時に、プロジェクションマッピングによって箱庭空間を情報強化する枠組みを提案する。
本稿では、赤外波長の特性を利用して複数の情報を提示することが可能なテーブルトップオブジェクトを提案する。提案するオブジェクトは、波長の異なる赤外LEDを用いた発光オブジェクトと、特定波長以下の光を遮断するフィルタで作られたIRコースターである。ユーザはオブジェクトの下に敷くIRコースターを取り替えることでマーカパタンを切り変え、提示する情報を変化させることができる。
人間は他者と交流する際に,抱擁や撫でる動作,あるいは殴打のような身体的な動作を用いてその感情や意図を伝達する.我々は,こうした人と人との交流に見られるソーシャルタッチインタラクションを認識するEmoballoonを提案する.提案するインタフェースは,風船のように内部に流体を密閉した弾性体と,その内部に封入された気圧センサとマイクロフォンから構成される.風船の柔らかく,外部からの加圧を内気圧の変化で検出できる特性を活かした簡便な構成となっている.本稿ではこの構成に基づき,風船を用いてEmoballoonを実装し,その識別性能を評価した.その結果,予備実験により定義した7つの動作に対して83.5%の識別率を得た.また,提案手法の可能性や将来の応用例についても議論する.
遊び手が人形を動かさなくとも,ドールハウス内の人形が動いている映像やCMはよく知られている.しかし市販のドールハウス人形は,遊び手が人形を動かす必要がある.そこで,著者らは,非接触給電技術を用いて,ドールハウスに人形を置くだけで,人形が自動に動く玩具の制作を続けている.
これまでに,物体の把持状態を認識し,HCIへの応用を試みる研究が数多く行われている.一方で,それらの研究は大量のセンサや特殊なハードウェア構成を必要とするため,複雑もしくは高コストである.本稿では,アクティブ音響センシングにより,手軽かつ安価に物体の把持状態認識を行う手法を示す.本手法の特徴は1組のスピーカとマイクを物体に貼り付けることによって,物体を把持する手の姿勢,および把持する力の認識を可能とする点にある.携帯情報端末の操作に本手法を用いることを想定した実験を行った結果,7種類の把持姿勢の認識精度がper--uesr testにおいて90~99%,cross--user testにおいて66%となった.また,3段階の把持力の認識精度がper--uesr testにおいて95~100%,cross--user testにおいて81%となった.
混雑中の公共交通機関において,立ち続けることは疲労と退屈さを感じさせる.しかし,通勤・通学時には時間や路線の制約から常に座席に座ることは難しく,無理に座ろうとするとマナーの問題が発生する.そこで本稿では,積極的に立ち続ける動機を与える手法として,GPSおよび加速度センサを用いてユーザの移動手段および立ち座りを判別し,立ち続けることに対する報酬として育成ゲーム上のキャラクタを成長させるエンタテインメントシステムを提案する.また,ユーザが積極的な行動をとりにくい混雑中の公共交通機関という環境にエンタテインメントを導入するための本システムの設計および実装について述べる.
本稿では,ユーザの生体情報を利用した動画鑑賞システム「E3-player」を紹介する.E3-playerは,鑑賞者の興奮反応に合わせて,動画の音量を変化させることで鑑賞者の興奮を促進することが出来る.実際にこのシステムを利用することで鑑賞者の興奮を促進する事が可能であるということを実験により確認した.今後,動画鑑賞体験だけではなく,音楽などの既存のメディアに対して生体情報を利用することの有効性を探る.
近年,タッチスクリーンを持つ携帯端末が普及し,視覚障がい者からもこの携帯端末を利用したいという要望がある.しかし,視覚障がい者は,触覚を介して指がスクリーンに触れている位置を正確に把握できないため操作が困難である.本論文では,タッチスクリーン上での文字入力操作に焦点を当て,指がタッチスクリーンに触れた任意の位置から指を離さずにスライドさせることで文字入力を可能とする操作方式『Drag&Flick』を提案する.提案方式は,タッチスクリーン操作において視覚的なフィードバックに依存しない文字入力方式である.提案方式の文字入力精度を向上させるために,指の移動方向を精度よく検知するためのデザイン,および指の移動方向の識別アルゴリズムを実装し,指の移動方向の識別精度と提案方式の操作性を確認するための被験者実験を行った.その結果,提案したデザインおよびアルゴリズムに効果があることを確認できた.
コンピュータ画面に向かいながら学習するE-Learningにおいて,学習者が集中している度合いを頭部に設置したウェアラブルモーションセンサでリアルタイムにてモニタリングするシステムの提案を行う.実験の結果,視線を固定する際に生じる頭部の角加速度から,集中時には静止安静時とほぼ同じ程度の運動パラメータが得られている.
現代社会において,一人暮らしは若年層を中心として一般的な生活スタイルとなっている.そのような一人暮らしで孤独を感じる人は男女問わず少なくない.本研究では,この問題を解決するため,サービスに登録している他のユーザの挨拶を次々と再生するスマートフォンアプリケーション「おかえLink」を開発した.これにより,一人暮らしの人が特に孤独感を感じる帰宅時に,利用者が人とのつながりを感じる効果が期待できる.さらに,おかえLinkではユーザの外出時間と帰宅時間を記録することで,ユーザの在宅情報に関するライフログを収集することができる.これによりアプリケーションの利用前には気づかなかった生活の習慣,特徴などに気付くといった効果が期待される.
今日,計算機とネットワークの発達により,多様なモダリティを使用したコミュニケーションメディアが実現されている.しかし,多くのモダリティを利用可能なメディアは,豊富な情報を伝えられる利点を持つ反面,伝えたくない情報まで伝わってしまう問題を有する.一方,少ないモダリティしか利用できないメディアに関しては,それとは逆の得失となる.このため,筆者らは両者の中間的特性を持つメディアが有用と考え,新たなコミュニケーションの試みとして随伴性と自立性のいずれも有しない副次的モダリティを組み込んだ遠隔音声会話拡張アプリケーションEinfühlungMorsを試作した.基礎検討として行った実験から,EinfühlungMorsの副次的モダリティを使ったコミュニケーションは,状況依存的になると同時に,受信側の解釈に強く依存するものとなることが分かった.
近年,デジタルデバイスによる手書きインターフェースが急速に普及している一方で,紙やペンといったアナログな入出力とコンピューティングのシームレスな融合の重要性もまた増してきている.通常のインクを用いて紙に記した手書きの筆跡は消去できないが,これはコンピュータによる紙の機能の拡張の妨げとなりうる.筆者らはこの問題を解決するため,複数の機能性インクを印刷することで構成される,紙面上の筆跡を部分的に消去可能な紙面インターフェース,Re-blank Paperを提案する.本稿では提案手法の利点,その構成方法を述べ,発熱制御の方法について検討し,システムを実装した.
本稿では,ユーザが手軽にデータベースの例文を引用し,文章として構築するための英文作成ツールを提案する.提案ツールではまず,意図に近い例文や表現を,キーボードによる日本語入力で検索する.そして,例文の単語や熟語などをマウス操作で移動・編集し,レイアウトしながら英文を作成していく.これまでの英文作成は,辞書サイト等で単語や例文の検索を行い,日本語入力のON/OFFを切り替えながら複数のアプリケーションやウィンドウをまたがってコピー&ペーストする作業になるか,あるいは,完全な機械翻訳で済ませ,翻訳された英文にはほとんど手を加えない(あるいは見ない),という両極端なものになりがちであった.提案ツールを用いることで,文法的には不適格かもしれないが「伝わる英文」を作成でき,会話調で行う短文コミュニケーションサービスで有効であると考えられる.
近年数多く提案されている電子ブックのインターフェースは,従来の紙による書籍のインターフェースを踏襲していることが多い.紙の書籍のインターフェースでは,物理的な制約からページと改行といった概念が生まれている.本研究ではそのページと改行を用いない電子ブック独自のインターフェースを提案する.文章を意味のある単位に分割し,それを画面に1つずつ表示するインターフェースを開発した.
我々は,帯域幅やスペクトルの形状などを変えられる狭帯域雑音を用いた音楽の作成を目指している.本稿ではまず,三角形型フィルタを用いて生成した狭帯域雑音の帯域幅と知覚周波数の関係および帯域幅変化が音楽に与える印象についての報告をする.次に,狭帯域雑音の生成制御を新しく製作した2自由度のペダル型インターフェースで行う音楽演奏システムの概要とその試用評価結果について述べる.
従来の演奏補助機能を用いたシステムは,曲を演奏することによる楽しみを誰にでも与える事ができる一方で,演奏補助を適用する技術的範囲を選択できないために技術習得は行い難いという問題が存在する.そこで我々は演奏補助を減産的に解除していく手法を用いて,練習者が無理なく演奏技術を身に着けられるギター演奏習得システムを提案し,このシステムの構築を行った.これを用いた試用実験を行い,システムが練習者のモチベーションに貢献できるかを調査し,結果,ポジティブな傾向が得られた.
我々は,遠隔地間における対話者の円滑なコミュニケーションを支援するシステム“ドアコム”を開発した.ドアコムは,一方のユーザ(ドア操作側)がドア型インタフェースを用い,相手の空間(ドア無し側)に現れる表示を実現した,重畳表示型のビデオチャットシステムである.ドアコムでは,ドアを相手側の画面のどの位置に,どの大きさで重畳表示するかといった自由度が,ドア操作側ユーザに与えられている.従来のドアコム(ドアコム1)では,ドアの枠内のみ描画していた.そのため,枠外へ手を出すジェスチャをした場合には,枠外に出した部分は表示されなかった.そこで,枠外に手を出すジェスチャをした場合,枠外の描画を行うことが可能なドアコム(ドアコム2)を開発した.実験の結果,「枠外へ手を出す」表現は,指示操作を行う際に良い影響を与える可能性が見られた.しかし,「相手の空間で指示操作をしている感覚」や「相手の空間へ侵入している感覚」に関しては,十分な効果を与えられていないことがわかった.そこで,本稿では,遠隔地への影響を表現可能な“ドアコム3”を提案する.
著者らは,発話音声からコミュニケーション動作を自動生成する音声駆動型身体的引き込みキャラクタInterActorを開発し,コミュニケーション支援の有効性を示している.従来のInterActorでは,音声リズムからうなずきや身振り手振りなどの身体的引き込み動作を自動生成し,キャラクタで表現している.さらにこの身体動作に加えて,音声認識により言葉の意味から身体動作を生成することができれば,使用者の思いをキャラクタに表現させるといった,より表現性の向上したコミュニケーションが実現できると考えられる.本研究では,音声認識を併用することで,InterActorに言葉の意味に対応する情動表現機能を付与し,円滑なコミュニケーションを促す身体的引き込みキャラクタシステムを開発している.
タブレット型PCやスマートフォンなどのモバイルデバイスの普及により,映像コンテンツを閲覧する形態が変わりつつある.その事により,外で歩きながらや家で寝転びながら端末を持って映像を閲覧する事を可能とし,映像を見る際のデバイスと映像閲覧者との身体的関わりが深くなったといえる.本論文では,モバイルデバイスを用いて,映像閲覧者の無意識的な行動や発話,しぐさなどからその映像における閲覧者の興味の変化を推定するシステムについて述べる.
認知障がい者の認知リハビリテーションとして,記憶を想起させるメモリノートがよく使われている.本研究では,加速度センサなどのウェアラブルセンサ情報に基づき,リハビリテーション行動を認識し,メモリーノートに記載されたスケジュールに対して行動達成度を付与することにより,リアルタイムでリハビリテーション評価のフィードバックを可能とする動作同期型メモリアシストシステムを提案し,Androidプリケーションとして実装・運用を行う.
多くのコミュニケーションツールはユーザー同士で同じツールをダウンロードし、インストールも済ませておく必要や、ユーザー登録を事前に済ませておく必要がある。そのためイベントやものに関してその場にいる複数人ですぐにインターネットを介したコミュニケーションを始めるには参加の壁となる。そのような壁を減らすためには、誰でもすぐに利用できるシステムを誰でも持っているようなモバイル端末が初期状態から備えている機能だけで行う必要がある。また、モバイル端末は通常のPC画面よりも画面領域が限られているため、会話の展開を追う場合や、途中から参加する際の内容を把握したりする場合は非常に難しい。それらの問題を解決するために、Webブラウザで利用が可能な"TopickUp"を提案する。これは、イベントやものに付属させたNFCタグに触れることによって参加し、その場にいる複数人とのコミュニケーションをすぐにとれるようにする機能を持っている。なおかつ、内容のまとめをユーザー同士でつくりあげタブレット型端末に表示したサブ画面によって、自分たちがどのような会話をしているのかをわかりやすくできる機能を実現している。
パーソナルコンピュータ(PC),スマートフォン,タブレットPCなど,複数のコンピュータを利用する状況では,表示されている情報をコンピュータ間で転送する必要がしばしば発生する.単一コンピュータ内でならば,コピー・アンド・ペーストやドラッグ・アンド・ドロップなどの直接操作により情報の移動が容易に可能であるが,複数台のコンピュータによる環境では,転送先機器の探索や指定などのために煩雑な操作が必要になることが多い.そこで本稿では,急速に普及しつつあるマルチタッチ可能なトラックパッドやタッチディスプレイを利用して,複数コンピュータ間でのコピー・アンド・ペースト操作を直感的に実現する操作技法:記憶の石(Memory Stones)を提案する.本方式はコンピュータ上に表示されている情報を,ユーザが複数の指を使ってつまみ上げ,これを別のコンピュータに運び・置く動作により,コピー・アンド・ペーストを実現する.
ラジオ放送は,インターネット配信の開始やSNSとの連携など新しいメディアへと変わろうとしている.筆者らは,ラジオの“別の作業をしながらでも聴ける”という聴取スタイルに注目し,効果音をリアルタイムに鳴らし合うことで番組に対する感想を共有するシステム「ラジへぇ」について検討してきた.本論文では,ラジオ番組「くらもといたるのいたらナイト」とのコラボレーションで実施した全9回の実証実験とその結果について述べる.実験参加者(番組聴取者)による感想の入力傾向の解析,および,聴取者と出演者両方からの主観評価をもとに,本システムの特性や可能性,課題について考察した.
本研究では,調理環境において,明示的なコンテキストをユーザに敢えて示すのではなく,視線・感情表出などの気づきを誘発するサインのみを提示することにより,より直感的にユーザの調理行動支援を行う新しい犬型インタフェースを提案する.子供に対する調理への関心向上や認知障害者向けの調理リハビリテーションなどへの応用が期待される.
屋内ナビゲーションの需要は近年高まってきているが,屋内測位は様々な原因から普及にはまだ時間がかかる.本研究では,屋内測位のインフラが十分でない地下街などの屋内で,実用性が高い歩行者ナビゲーションの実現を目的とする.そして,その場に詳しい人が携帯電話越しに迷っている人を案内するように,システムとユーザがランドマークの視認性確認の対話を行って現在地を推測する対話型歩行者ナビゲーションを提案する.この提案手法を評価実験で比較した結果,ユーザに安心感を与えられることを確認した.また,部分的な屋内測位とPDRを加えることにより安心感を大きく向上できることを確認した.
デジタル時代においては,手書きする機会が少なくなり,パソコンや携帯電話などに搭載された漢字入力システムで文字を記述することが多くなった.英語などの音素文字の入力方式と違い,漢字圏の文字入力システムでは,主に読み方から漢字へ変換する方式が採用されている.このため,使用者が漢字入力システムに過度に依存すると,漢字の字形を正確に記憶しなかったり忘却したりしてしまい,結果として手書きで漢字を書くことができない人が増加するという問題が生じている.本稿では,読み方から漢字へ変換する入力方式を対象として,一部の文字を不正な字形の漢字に差し替えることによって,強制的に使用者に漢字字形を確認させ,漢字形状記憶の損失を防ぐ漢字入力方式を提案し,その有効性を検証する.
スマートフォンの普及にともない,イヤホンジャックアクセサリと呼ばれるイヤホンジャックに差し込むタイプのスマートフォンアクセサリが普及しつつある.スマートフォンのイヤホン端子の多くはマイク入力を備えた4極ミニプラグであり,外部デバイスを固定/給電/通信するのに適するが,入出力を備えたインタラクティブなイヤホンジャックアクセサリはほとんどない.そこで我々は,スマートフォンに差し込むことで駆動する,インタラクティブなイヤホンジャックアクセサリを提案する.
本研究の目的は,力覚情報が付加されたテキストメッセージコミュニケーションにおける力覚の機能や効果を検証することである.本稿では,力覚インタフェースSPIDAR-tabletを用いてテキストに力覚を付加できるシステム,HAPPicomを提案した.このシステムは,ユーザーが選択したテキストに,いくつか用意された力覚パターンから選択した力覚を付加することができ,電子メールやテキストチャットなどに応用できる.我々は,これを電子メールに適用したアプリケーションは,HAPPicomailを被験者が使用する実験を行って,テキストコミュニケーションにおける力覚の機能を検証した.その結果,力覚は3つの機能(強調,感情表現,情景描写)を持つことがわかり,力覚つきメールコミュニケーションでは,力覚が感情を表現するために多用されることがわかった.
GPSを搭載した高機能スマートフォン端末の普及により,自分自身や知人の位置情報を共有することが容易になった.しかし位置情報はプライバシと結びつきやすく,日常的に共有するには精度が高いと問題である.本研究では,日常的に利用可能な位置情報共有手法を提案する.提案手法ではプライバシを保護するために,位置情報の空間的精度に着目した.ユーザの登録情報によって共有する現在地の空間的精度を制御することで,プライバシの保護を実現する.
本論文では,ユーザの表情を撮影した動画(以下,表情動画とする)を用いて,ユーザの嗜好を反映させ個々のユーザに適した動画ダイジェストに反映させるシステムについて述べる.本システムは動画を一度視聴した後,改めて自分が気に入ったシーンだけを楽しむ動画ダイジェストを作成するために使用する.ユーザは本システムのプレイヤー部分で動画を再生し,同時にWebカメラでの撮影が開始される.動画の再生終了後,Webカメラにより撮影した顔動画像を解析し,ユーザの表情が大きく変化した部分を動画から抽出し,動画ダイジェストを自動作成する.本システムの動画ダイジェストならば仮定ではなくユーザが実際に盛り上がり,表情が変化したシーンをそのまま動画ダイジェストにできる.本システムを用いて実際に動画を視聴し,動画ダイジェストを作成・視聴までの評価を24名の評価者に対し実施した.結果のアンケートでは,映像中の対象物から動画ダイジェストを作成する手法と比べて高評価を得ることができた.
興行として実際に観客の前でパフォーマンスを行うスポーツは数多い。中でもプロレスにおいては娯楽性が非常に高く、観客に対するアプローチは必要不可欠である。本研究では手軽に観客がプロレスの興行内容に参加でき、その娯楽性をより向上することのできるシステムを提案する。
録画装置やインターネットによるオンデマンド映像配信によって,ユーザはテレビ番組表のスケジュールに合わせるという生活から解放され,いつでも好みの映像を見られる環境が実現された.一方で映像コンテンツは鑑賞時間を要するため,視聴時間の確保が難しい.そのため,今日では「いつ見るか」のほうが課題となりつつある.すなわち,ユーザはコンテンツへのアクセスが比較的自由になった一方で,日常生活という時間制約からは自由になれていない.そこで,本研究ではユーザの時間の制約を解消しながら見たいコンテンツとの接点を無理なく拡大する環境TimeFillerを提案する.TimeFillerは,人生の仕事や生存に必要な明確な目的を持った活動の時間以外の曖昧な空白時間にユーザが見たいと望んでいたコンテンツで満たし,時間を有効に利用するメディアプラットフォームである.
人々がある商品のプレゼンテーションを行う際に,手でその物を持って行うことは一般的である.物を持って話すことは,そのことについて話しているということを明示的にするため,わかりやすい.また物を持って話すことは,それが人の身体の一部となり,ジェスチャの一部となる.さらに,そこに声と同期するためより商品がより魅力的に見え他者の目を惹きつける.そこで本研究では,音声と動きを記録し再現するターンテーブル型のプレゼンテーションデバイスSyncPresenterを提案する.そして,SyncPresenterの利用シーンについて紹介し,本システムの応用可能性について議論する.
本論文は,数多くの動画からより短い時間で,ユーザが見たいと思う動画を見つけ出す支援を行う手法について提案する.近年,YouTubeやニコニコ動画のような動画共有サイトの需要が高まり,多くの動画コンテンツが蓄積されている.これら蓄積された動画コンテンツの中にはユーザの興味・関心が沸くコンテンツが多く埋もれている.そのため,すべての動画を視聴することができれば数多くのすばらしいコンテンツに出会うことが可能である.しかしながら,すべての動画を見ることは不可能である.そこで,本研究では,複数の動画を同時に視聴することで視聴時間の短縮を図る手法と,「複数同時視聴」に「ながら見」(ながら作業)を組み合わせることで視聴時間を短縮する手法について提案する.また,『複眼』を実際に開発し,評価実験を行うことで本手法の有効性を示した.
本稿では,人間の演奏表情に反応し演奏を変化させていくジャムセッションシステムの構築の前段階として,遺伝的プログラミング(Gentic Programming, GP)を用いて,アドリブのジャズギターの演奏表情と演奏者の主観的な演奏表情状態の探索を行うシステムの検討,提案を行う.既にクラシックの演奏表情付けに向いている探索能力を持つ事が示されているGPを用いて,ジャズギターの演奏データから,演奏者に演奏後に示してもらった「激しい〜緩やか」と言った主観的な演奏表情の探索を行う.100曲の演奏データとその主観的演奏表情状態データを用いて探索を行う.
本稿では,様々な動画を単一または複数同時に視聴した際の脳活動を測定することで,動画の同時視聴においての組み合わせと理解度の関係を明らかにすることを目指す.動画の効率的な理解に関する研究は多くなされているが,同時視聴において内容による理解度の変化について言及した論文は少ない.そこで,本研究ではNIRSによる計測を用いて様々な動画を視聴した際の脳活動を測定し,動画と脳活動の関係から同時視聴の可能性について検証する.
本稿では,動画共有サービス上に投稿されている楽曲動画に付与されたコメント内容をユーザがインタラクティブに変更可能なシステム「Nicolizer」を提案する.本研究の目的は,ユーザが動画に対してインタラクションすることで,「もっと大量にコメントを流したい」,「より泣けるコメントにしたい」,「コメントを感情的にしたい」,「真面目な内容にしたい」といったさまざまな要求に応じて動画のコメントを変更可能な仕組みを実現し,ユーザが能動的に動画を多様な観点から楽しむための方法を提供することである.本稿では,楽曲動画を対象として,視聴中の楽曲動画に合った,「笑えるコメント」や「泣けるコメント」をユーザの操作に応じて自動的に生成し,視聴中の動画に提示する仕組みを提案する.Nicolizerを用いることで,これまで受動的な閲覧しかしなかったコメントに対して視聴者は能動的なインタラクションが可能となり,同じ楽曲動画を聴覚的にも視覚的にも繰り返し楽しむことができると考えられる.
近年,マンガの描き方を記した書籍には『視線誘導』という技術が記載されている.『視線誘導』とは「ページのコマの絵を追っていく読者の視線の自然な流れを作る」技術である.この視線の流れを作者がコントロールすることで,マンガ内の時間感覚やリズムなどを希望した通りに読み進めてもらえる.本研究はこの読者の視線移動傾向を考慮し,初心者を対象にしたマンガ作成支援システムを構築することを目的とした.書籍および参考資料に記載されている視線誘導の例からマンガを作成し,視線分析装置を用いた実験と分析を行った.また印象の変化が発生するとされるものにはアンケートを実施した.その実験結果を利用し,システムを設計する.
ユーザーの手首に装着したモーションセンサーにより,対象物を「触っている」状況を間接的に検出し,その結果をインタラクションに反映させる入力インタフェースの提案を行う.空中,固い面,柔らかい物体をなでる際に手首に生じる3軸角速度を調べた結果,それぞれに特徴的な信号パターンが得られた.また,3軸加速度を併せて用いることで,手触り感に応じた音響再生を行うコンピュータインタラクションについての検討を行った.
The matrix LED can be used for not only displaying but also sensingthe incident light by the generated photo current.This fact enables to implement the display and input methods onone matrix LED unit.The authors have been proposing and developing the block device withdot-matrix LED unit as display device, as well as input device by usingvisible light, ``LED Tile'' system, and its applications.In this paper, the two ways of extensions of LED Tile system have beendescribed, extending the display size and extending the number of colors.Their hardware implementations and software library descriptions, aswell as the plan of their applications are also described and discussed.
Though communication skill is important for life, it is difficult for people with communication disorder to quantify and improvecommunication skill without professional help. We propose a measurement system of communication based on life-logtechnology to monitor the parameters associated with communication skills. Particularly, smiles are employed to use becausebringing a smile to someone's face enables smooth communication. In this paper, we tried to measure how often the user makesomeone smile, and then to feed back the frequency of making others smile to the user, by a method introducing game elements.
Amazon.comのようなショッピングサイトでは,アイテムに対してレビューを簡単に作成・閲覧できる機能が提供されている.レビューに書かれた他者の意見は有用であるが,小説や映画などのストーリーを持ったアイテムに対するレビューには,ストーリーの内容(本稿では「あらすじ」と呼ぶ)が書かれている場合がある.レビューによりあらすじが分かってしまうと,実際に小説や映画を見た時の楽しみや感動が減ってしまい,問題である.そこで本研究では,ストーリーを持ったアイテムに対して,レビュー文を対象としたあらすじ分類手法を提案する.あらすじの判定には5つの代表的な機械学習アルゴリズムを適用した.そして,人名と特有語の一般化による分類性能の向上を図り,F値を用いて評価を行った.また,あらすじを非表示にするシステムを開発した.最後に,被験者実験によりシステムの評価を行った.
娯楽の一つとして、個人が自分のチャンネルを持ち、ゲーム配信、料理配信、野外配信といった生放送をすることで不特定多数の視聴者と同じ時間を楽しむニコニコ生放送、Ustream等が最近、盛んになってきている.例えば、1人で来たことのない観光地にやってきた場合、ニコニコ生放送で配信を行うと、観光地に詳しい誰か、自分と趣味の合う自分のチャンネルの常連さんと楽しく散策を行うことができる.その種の放送を行う際、大部分はWebカメラやスマートフォンを使用して配信を行っている.そこで本研究では肩乗りアバタを用いた生放送システムを提案する.ロボットを配信者の肩に乗せることで、視聴者の視線と配信者の視線がほとんど一致する.それにより、従来の生放送よりも臨場感、没入感のある放送を実現できると考える.本研究の目的はニコニコ生放送というあまり堅苦しさの無いツールを使って、肩乗りアバタの装着者と複数人の視聴者との円滑で、楽しい1対多のインタラクションを実現することである.
アパレルショップで衣服を選ぶ際,気に入った服があれば試着をし,自分の体のサイズに合っているか,自分に似合っているかを確かめている.一方で,服装選びは,服を来ていく先での天候や気温,状況などの様々なコンテキストによって左右される.例えば,購入する商品が着用を予定しているシーンに適しているか,その商品を着用した自分は他人からはどう見えるかといった観点も,商品を選ぶ際の大きな検討材料となる.本発表では,これらの利用時のコンテキストも合わせて提示し,より客観的な視点で自分の姿を確認・評価できる試着ミラーを提案する.
本稿では,楽曲やミュージックビデオ等の音楽コンテンツ間の多様な関係性を意識しながら,Web上で新たな音楽コンテンツに出会うことができる音楽視聴支援サービスSongriumについて述べる.Songriumは,二つの音楽コンテンツ間に矢印タグを付与し共有できるWeb上のサービスである.矢印タグとは,音楽コンテンツ間の明示的あるいは暗黙的な関係に対するソーシャルタギングを可能にする新たな枠組みであり,人々が矢印タグを自由に名付けて定義し,共有していくことで,様々な関係性を扱えるようになっていく.ユーザは音楽コンテンツ間の多様な関係を矢印タグでたどながら,様々な未知の音楽コンテンツに出会うことができる.さらに矢印タグが普及すれば,各音楽コンテンツの位置づけが視聴前に判明し,人々はより多くの関係性を意識でき,新たな音楽コンテンツを生み出す土壌となることが期待できる.
インターネットを介して遠隔地にいる相手とゲームを行うインタラクションは,仮想空間内のアバタを介して行われる場合がほとんどである.したがって,仮想空間内でのインタラクションでは,身体接触を伴うゲームを再現することは困難である.また,遠隔地間でのインタラクションでは,相手の存在を身近に感じられないという問題がある.本研究では,身体接触を伴うゲームの1つである指相撲を遠隔地間で再現するロボットハンドを開発した.このロボットハンドは,人の手のような温度や柔軟性があり,遠隔地にいる相手の親指の動きを伝達・再現することができる.このロボットハンドを通して,相手と擬似的に触れ合いながら指相撲をすることで,親近感や存在感が強化されることを期待している.
仮名漢字変換の気軽さで数式のデジタル入力を平易にする,主に標準のキーボードをユーザインタフェースとする技術を平成23年に提案した.ユーザが数式を読むのと同じ,単純な文字を入力すれば容易に数式を構築でき,システムが機械学習型辞書を使ってインテリジェントに候補を算出するので,所望する数式要素を対話的に選択するだけでよく,操作が単純である.評価実験を行った結果,GUIタイプの従来技術に比べ1.75倍数式入力のタスク達成時間が速いことが判り,本方式の優位性が示された.本研究では提案技術を応用し,Webアプリケーション版数式エディタ(MathTouchWeb)を開発したので報告する.
外遊びをすることは,身体を動かす目的以外に,五感全体を使ってあらゆることを体感し,友人たちと一緒に遊びながら社会性や新しい秩序を学ぶという目的があると考える.しかし,近年の傾向をみると外遊びや運動をする子どもは減っている.本研究は外遊びの魅力を引き出すため,既存の遊具では実現できない要素を取り入れたインタラクティブな縄跳び「音の輪」を提案する.音の輪は,跳ぶテンポに合わせ音楽のテンポが変化する縄跳びであり,複数人で同時に跳ぶことで,音楽のテンポをそれぞれがコントロールし,音楽の重なりを作り出すことができる.試作の早い段階で子どもたちに使ってもらい,ハードウェア、ソフトウェア両方のデザインに関するフィードバックを得ることができ,プロトタイプのさらなるバージョンアップに取り組んだ.
本研究では、変化するエージェントMorphing Agencyという、人とコンピュータのための新しいエージェントインタラクションのコンセプトを提案する。従来のロボットエージェントやバーチャルエージェントは、ユーザーとインタラクションするためのエージェントは一貫した様態を持つ。これに対し、本研究で提案する変化するエージェンシーでは、エージェントの様態が場面場面によって変わりうる。このように様式を変化させることで、様々な人間の状態に合わせたインタラクションが可能となる。我々はmorphExplainer、transExplainer、parasiticBeltの3つのコンセプトを示し、Morphing Agencyの可能性を探る。
怒りや悲しみなどの否定的感情を含む文章は,読者に不快感を与え,そういった感情がさらに他人に伝染していく現象も報告されている.本稿では,文章が不快感を与えるレベルを制御することを目指し,不快感をもたらす文章表現を書き換える手法として,婉曲化手法・リフレーミング手法・文末表現変更手法・腰砕け手法・表現誇張手法を提案する.さらに,否定的な感情が伝染するのを緩和する手法として,段階的換言手法,ユーザによる感情表現の換言,そして無機能ボタンによる意思表明という手法を提案する.これらの手法を用いて実際にTwitterのつぶやきにおける不快感レベルを制御するシステムの試作・運用を行った.
私たちは多くのアプリケーションやウインドウを立ち上げ,切り替え,そして閉じながらPCで作業している.画面が刻一刻と変化し,次々と情報が現れては消えてゆく中を,ユーザはわずかな短期記憶を頼りに渡り歩いている.そしてついさっき見たはずの情報であっても,それを確認しようとすると情報源は既に消えてしまっていることも多い.このようなとき必要となるのは,アプリケーション毎のアンドゥや,大がかりなバックアップ/復元のように操作を取り消す機能ではなく,あたかも短期記憶を拡張するかのように,過去の状態を自由に閲覧して思い出させる機能であると筆者らは考えた.そこで本稿では,簡単なマウス操作でデスクトップの任意の領域をくり抜いて,反時計回りのドラッグ操作によって時間を巻き戻し閲覧するツールを提案する.閲覧範囲は自由に変形したり半透明化したりもでき,過去のマウスカーソルも閲覧することができる.
歩数データは,健康支援や運動量測定の他,歩数計付き携帯ゲーム機などによってエンタテインメントに利用されてきた.本稿では歩数データを用いて音楽とアニメーションを生成するアプリケーションを提案し,直観的なライフログデータの提示方法,及び歩数データを用いた音楽とアニメーションの新たな表現手法の提供を目指す.