本論文では,柔軟な布面上で光信号の入出力を行うインタフェース「LightCloth」を提案する.LightClothは拡散性光ファイバで織られた布で構成されている.布の末端には発光素子アレイと受光素子アレイが取り付けられ,布面の発光と,布面に入射する光信号のセンシングの機能を有する.布を構成する光ファイバは同一方向にすだれ状に並んでおり,1枚の布が1次元の位置情報を有する.この仕組みにより,列単位で光入出力を同時に行うことができ,またどの列から光信号が入射したかの認識も行うことができる.我々はフルカラーの光出力と,赤外線による8bitのデータ信号の入力が可能なプロトタイプを開発した.
大型マルチタッチテーブルトップを用いる際、手が遠くのオブジェクトに届かない場合がある。そのような場合、ユーザは、そのオブジェクトをタッチできる位置まで移動することを求められる。我々の開発したHandyPointingにおいては、ユーザは両手によるマルチタッチジェスチャを用いて、遠隔地のポインティングを行うことができる。ユーザは、引出しジェスチャを用いることにより、カーソルの移動を行うのに加えて、そのCD比を動的に変更できる。これにより、大きなCD比による大まかなポインティングと、小さなCD比による精密なポインティングを滑らかに行き来できるため、遠くの位置を高速かつ精密にポインティングできる。
筆者らが開発・改良を進めてきた高速開閉電磁弁方式による13成分嗅覚ディスプレイを用いて,音と香りを同時に体験者に提示し,聴覚・嗅覚のクロスモダリティを新たな角度からアピールできるインタラクティブ・アート作品を提案する.本作品では,体験者がバーチャルアイスクリーム店のカウンターで好みのフレーバーを選ぶと同時に,そのフレーバーにふさわしいと感じる音色(電子音)を決め,小型鍵盤を弾くと音と香りが同時に感じとれるものである.鍵盤が弾けない人のために,予め,楽曲とその進行に従って切り替わるフレーバーを同時に体験できるように自動演奏モードも用意し,本作品の魅力を端的に伝えられるように工夫した.ストーリー性のある映像作品等に付加される音楽と各シーンの臨場感を高める香りを結び付けるケースとは趣旨が異なり,体験者にはより抽象的な印象を与えるものである.しかし,曖昧な要素を補完するかの如く想像力・創造力を掻き立てることで体験者の感性を刺激することもインタラクションの魅力の本質に合致するものと我々は考える.
本稿では,机上において単純な形状の物体をライトの前にかざすと,その物体の形状とは異なる影が動きを伴って生成されるシステムを提案する.このシステムは複数波長の赤外LEDを組み込んだライトを有し,その照射波長パタンを切り替えることで生成される影を制御する.影の生成に用いる物体は任意の形に切り取った複数種のIRフィルタと画用紙で構成されている.システムはこの物体の影をCCDカメラで取得し,スクリーンに映し出す.ライトの波長を切替えることにより,影を生成するIRフィルタの領域が変化するため,静的な物体から生成される影は動的に映し出される.影が持つ“実物体と同じ動きをする性質”を意図的にずらすことで,通常とは異なる視点を体験者に与えることが可能になる.
本研究は,鍵盤楽器演奏初学者のための学習支援システム“Ear-Keyboard”の開発と評価を行う.鍵盤楽器演奏は,日常で用いない身体的能力に加え音楽理論の知識も必要であるため,習得が困難である.それゆえ,途中で挫折してしまう人は少なくない.Ear-Keyboardは,ユーザの譜読みや主旋律に沿って演奏する技術を支援する支援するシステムである.本研究は,鍵盤楽器演奏初学者に主旋律の音高の流れを意識させながら,打鍵位置を誘導することで,鍵盤楽器演奏初学者の学習支援することを目的とする.
近年,デジタルカメラやスマートフォンの普及に伴い,日々多様な画像が撮影され,さらにアプリケーションを介して加工・共有されている.このような,様々なデジタルカメラやアプリケーションの登場によって写真の歴史がまた大きく塗り替えられようとしている.写真の歴史において,新しいイメージを生み出すための方法論および写真のメディア特性の探求がなされてきた.そして,技術史的な発明と並行して,作家各々が発見・発明した新たな「写真のつくり方」が提案されて,写真の歴史が更新されてきた.このような背景のもと,本研究では,カメラ自体にコンピュータが内蔵され,ネットワークに接続されることを前提として,撮られた写真をネットワーク上で共有するだけではなく,ユーザが「写真のつくり方」を撮影時に試行錯誤することを可能にし,その「つくり方」自体をネットワークを介して共有することを考える.具体的には,デジタルカメラ上でのビジュアルプログラミング言語,プログラムの共有改変機能を有するモバイル上の統合開発環境ourcamを提案する.本環境により,デジタル・フォトグラフィ特有の撮影手法や,デジタルカメラ上におけるメディアの構築方法が蓄積され,ユーザが任意の場所で思いついたアイデアをその場でプロトタイピング可能とする.また,本環境を用いたユーザスタディによって,ユーザ自身によって「写真のつくり方」が構築可能となったデジタル・フォトグラフィ環境における撮影行為の変容を示す.
本研究は,身体運動による発電の体験から電気の価値を考えさせるエコデザイン“とまらないかざぐるま”の開発と評価を行う.とまらないかざぐるまは,身体運動によって得られる風力で羽を回転させ,発電の体験ができるシステムを実装したかざぐるま型のデバイスである.ユーザは,とまらないかざぐるまの羽を走って回転させることで,立ち止まった後も羽が回転し,LEDが点灯するインタラクションを得られる.とまらないかざぐるまを使用することで,ユーザは身体運動による発電の体験を通して日常的に使用している電気について考え,省エネを意識するようになる.本研究は,とまらないかざぐるまの使用による評価実験を行い,エコに対する意識の変化を検証したものである.
映像の時間(フレーム位置)と空間(画面上の座標)を対応付けることで,あたかも被写体をつかんで動かしているかのように映像を直観的に再生できる技術がある.しかし従来技術では,コンテンツの作成にかかる編集や計算のコストが高く,撮影してすぐにコンテンツを再生できないといった問題があった.そこで本研究では,事前の動き検出を簡略化し,ユーザのなぞった位置と方向に基づいてフレームの検索と表示を繰り返すTouch'n Moveを提案する.これにより,モバイル端末でもコンテンツをすばやく提示することでき,実技をその場で撮影し,直感的に動かして振り返るといったことが可能になる.性能評価では動き情報の検出とユーザの入力による検索のどちらにおいても,高速に実施されることが確認された.
本稿では,小売店において店舗利用者が商品情報を活用しながら,効率的な食材選択・献立決定を支援するショッピングカート型システム``ぴぴっとカート''を提案する.スーパーマーケットのような小売店利用は,日常的な食材購入が主な目的とされるが,買い物時において最も消費者を悩ませているのは「食事の献立決定」であることが明らかにされている.献立のイメージが曖昧な人や食事作りに消極的な人,多忙で献立検討に十分な時間が取れない人にとって,多様な陳列商品の中から適切なものを効率的に発見・選択するのは困難である.そこで,消費者がスーパーマーケットで利用する機会の多いショッピングカートに着目し,店舗内で食材を見ながら献立を決定するプロセスを支援する手法を検討した上で,ショッピングカート型システムのプロトタイプを作製した.
持ち物自慢を支援することで購買意欲を向上させるシステムを提案し、プロトタイプの実装を行った。友人による持ち物の自慢は、口コミ情報として購買意欲に大きく影響を与える。本システムでは、事前の詳細情報の提供や持ち物を目立たせるためのエフェクトの表示、自慢のログの記録により、購買意欲を向上させることを目指す。
色彩は我々に対して様々な認知的効果を生じさせる.そのため,我々は,webページやプレゼンテーションスライドにおいて,文字に対する色彩付与をしばしば行う.文章の内容に対する適切な色彩が文字色として付与された文章を,画面とのインタラクションによって動的に表示すれば,文章はより生き生きとしたものとなり,文章に対する印象を向上させる効果が期待できる.本研究では,文章中の単語に対して各単語の印象を表す色彩が文字色として付与された文章を用いて,タブレットPCの画面をなぞった部分にのみ文章が表示される場合に生じる認知効果を,心理実験によって調査した.その結果,「動的な/静的な」,「楽しい/楽しくない」,「抑揚のある/ない」という尺度において,有意な認知効果が見られた.本研究の心理実験の結果より,色彩が付与された文章の動的な表示には,文章を読む楽しさを向上させる効果があることが明らかになっただけでなく,より生き生きとした文章となり,感情移入をしやすくする効果が生じている可能性が示された.そして,文章に対する印象を全体的に向上させる効果があることが示された.すなわち,文章に対するエンタテインメント性を向上させる効果があることが示された.
本稿では,モニタ画面上の任意の位置に仮想的な匂い源や熱源を作り出すことができる装置を報告する.液晶モニタと共に用いることにより,例えば美味しそうな香りがするスープの温かい蒸気がモニタ画面上の特定の場所から出ているかのようにユーザに感じさせることができる.提案するシステムでは,四つのファンを使って生成した気流を互いに衝突させ,モニタ画面上の特定の箇所からユーザに向かって吹く気流を最終的に作り出す.ファンから出る気流を加熱し,香料蒸気を加えることにより,モニタ画面から匂いや熱が発せられているかのような匂い濃度分布や温度分布を作り出す.提案する装置は,電子広告やビデオゲーム,博物館における展示などに応用できる.
協奏とは,複数人が同時に演奏を行う演奏形態である.人の演奏にはテンポの揺らぎ,演奏誤りなどの不確実性が含まれるが,人はそのような演奏を聴き,相手に合わせて演奏を行うことができる.本稿では,そのような人の働きを機械で実現する試みとして,楽器演奏者の演奏に自動的に追従して伴奏を再生させる自動伴奏システムを提案する.協奏において人の演奏に合わせようとする働きは,計算機によって奏者が楽譜上のどの位置を演奏しているのかを瞬時に認識し,次の演奏位置を予測する問題と捉えられ,楽譜追跡と呼ばれる.本研究では,テンポの揺らぎ,演奏誤りなどを含む人の演奏を確率モデルとして記述することで,演奏の不確実性に頑健な楽譜追跡を実現し,多声楽器に対応可能な音響入力自動伴奏システムを構築した.
本稿では熱変色性インクを利用し計算機処理によってカード内のイラストを消去可能なカードゲームシステムを提案し,またそのシステムを通してユーザが喪失感を体験するようなゲームデザインについて論じる.このゲームでユーザは白紙部分を持ったカードにイラストを書き込み,そのカードを特性のカード台に置いてもう一人のユーザと対戦する.カード台には温度操作用のペルチェ素子が内蔵されており、加熱処理によってカード内のイラストを変色させ消去することが出来る.ユーザはゲームの結果に応じて自作のイラストカードを失うことになるが、このような喪失体験はトレーディングカードゲームなどの遊びにおいてはしばしば用いられるルールである一方で、データの保存や複製が容易である情報世界におけるゲームのなかでは稀にしか経験されない体験であると言える.本稿ではカードゲームシステムの構成について述べたのち,その結果を基に実装したプロトタイプインタフェースを解説する.その上で喪失感体験を提供可能なゲームシステムについて考察する.
具体的な音高の定まった楽音系列のような音楽的表象ではなく,楽音系列の持つ音楽的意味を演奏操作の対象とする,インタラクティブな作曲演奏インタフェース「輪音」を開発した.輪音は音楽理論を要約したインタフェースを有し,モード,コード,抽象化された音程を演奏操作の対象とする.輪音は演奏操作情報を元に,リアルタイムで楽音系列を生成,出力する作曲補助機能を搭載しており,音楽的表象の煩わしい演奏操作に気をとられることなく,音楽的意味に集中してインタラクティブに演奏ができる.上記のような特徴から,輪音は和声進行を考える際の楽器インタフェースとして用いることができ,また簡単な操作でインタラクティブに音楽理論を学ぶことができるため,学習用,教育用楽器としての利用も期待される.
本稿では,ユーザがパフォーマとなりデバイスのスクリーン上に映し出される影絵芝居に参加し,さらに視覚提示と触覚提示が行われることで影絵芝居の物語を体験できる箱型デバイスを提案する.デバイスは紙芝居舞台の形を模したもので,上部の穴からユーザは手を入れる.プロジェクタにより,デバイス前面のスクリーンにCG影絵芝居アニメーションと実際のユーザの手が投影される.ユーザは2本指による歩行動作によりCGアニメーションで作られた物語を進めていく.影アニメーションとユーザの手の影が接触した際に触覚刺激を与えることで,ユーザは影絵の物語を体験することができる.刺激はモータフェーダとサーボモータの動きにより実装した.本稿ではユーザの動きは歩行動作のみに限定したが,よりユーザに寄ったインタラクションの実現のために,ストーリーの進行に複数の動きを取り入れる必要がある.
本稿ではスマートフォン端末内部の磁気センサに着目し,イヤホンの移動による磁束密度の変化を利用した非接触の入力手法を提案する.画面にスクロールバーなどのユーザインタフェースを表示することもなく,また指で遮蔽することもないため,情報の描画領域を全画面に保ったままの操作が行える.またイヤホンの種類,端末に対する位置,方向の違いによって磁気センサの値が変化することを調査し,その差異に基づいた個人認証手法を提案する.
近年、大衆の3Dモデリングへの関心が高まりつつあり、それをささえるソフトウェアやサービスも増えている.しかし3Dモデリングを行うためのインタフェースは依然としてマウスやキーボードなどの汎用的なデバイスが主であり、人の手が持つ造形能力を十分に活用出来ているとは云い難い.本研究において制作した「ろくろ」は円筒形のセンサ部を多点入力に対応した抵抗膜タッチセンサとし、これを摘む、握る、押し広げる等の作法により、人の立体把握能力を活用した立体的な作法ならではのインタラクションを生み出し、自由度の高いモデリング体験を可能としている。プロトタイプ制作の為の検討及び展示後の評価を元に「ろくろ」の有効性と今後の課題について述べる.
人間同士のコミュニケーションでは,無意識のうちに互いの感情や言葉の意味を捉え,共感や対話の生成を行っている.人間・コンピュータ間のコミュニケーションに関する現状技術では,相手の心理状態を的確に捉え,応答するこことはまだまだ困難である.本研究では,表情・韻律・言語情報を統合した感情モデルに基づき感情認識の高精度化をすすめるとともに,ユーザの感情状態と発話量から構成されるコミュニケーション場に応じて,コミュニケーションロボットが,収集した生活エピソード履歴を利用して,コミュニケーション戦略を決定し,コミュニケーション促進を行う方式を提案する.
従来のウェアラブルコンピューティングのシステムでは,有線式では煩雑なケーブルの問題,無線式では各デバイスへの電源供給問題がそれぞれ存在する.著者らはこれまでに導電性の布を通して,電源供給とデータの送受信の両方を行うことで,双方の問題を解決出来るウェアラブルコンピューティング向けネットワークシステムTextileNetを提案してきた.また導電布は,その高い導電率から人体表面を一定電位に保つ効果があり,表面筋電位計測時におけるハムノイズ等の外来ノイズの除去に有効である.本稿では,導電布上の電力重畳通信を用いる,多点表面筋電位計測システムの実装について述べる.
近年,スマートフォンやタブレット端末にて,フリック操作やスクロール操作など,スライド操作が一般的になってきている.しかし,タッチパネルの操作では,触力覚フィードバックがないことから,適切な操作の確認が難しい.そこで,我々はタッチパネル面を水平方向に移動させる触力覚タッチパネルを開発している.しかし,モバイル用の触力覚タッチパネル開発ではアクチュエータの小型化が難しく,小さいアクチュエータでは十分な提示力と変位速度を満たせない課題がある.我々は,提示力は大きいが変位速度の遅い人工筋肉アクチュエータを用い機器を構成する.その上で,力覚提示に振動を付加する提示手法を提案・実験評価することにより,変位速度の遅いアクチュエータを用いた場合でも,ユーザの力覚提示の遅れ時間知覚を0.2[s]程度改善させることに成功し,モバイル用の力覚提示タッチパネルを実現した.
文字入力方式としてのフリック入力は,キー押下を繰り返すトグル入力よりも軽負担で素早い操作が行えるため,タッチスクリーン搭載のスマートフォンに広く普及している.フリック入力では,タップ位置で行(子音)を選択し,フリック方向で段(母音)を決定することで文字を入力していくが,タップする際はその位置を見て確認する必要があり,アイズフリーでの速記は多くの誤入力を伴う.そこで,筆者らは入力プロセスを子音と母音の二段階に分け,それぞれをフリックの「方向のみ」で指定する手法を提案する.アイズフリーでの素早い入力が可能になるだけでなく,従来のフリック入力ユーザがスムーズに理解・移行できる点も特徴である.
近年,通販において様々な物が購入できるようになり,テレビなどの家具も購入できるようになった.しかし,通販において家具を買い替える場合,実際に家具を設置した際の雰囲気を知ることが困難である.そこで我々はユーザが動的に指定した範囲の物を通販の商品に仮想的に置き換えるシステムを提案する.仮想的に商品を置き換え,実際に見ることにより,家具を設置した際の雰囲気を知ることができる.また,本システムではユーザが指定した範囲にある実物体を擬似的に消去することにより,置き換えをより自然にし,商品を置いた時の雰囲気を分かりやすくしている.
ある空間内の一点の物理量を可視光の強度や色相に変換する機能をもつデバイスをセンサ・ディスプレイ複合(SDC: Sensor-Display Composite)デバイスと呼ぶことにする.我々は音場の理解を補助する可視化を目的にMEMSマイクロホン,フルカラーLEDとマイクロプロセッサを備えた``音SDC''を開発し,理論で示される物理量に対して偽信号が発生しない枠組の中で音SDCアレイによる可視化の実験を行なってきた.その中で特に実音場におけるリアルタイムの可視化手段は,可視化の対象の正しい理解という枠組みを超えた人との関係を構築可能ではないかという問が生まれてきた.本論文は,パラボラ反射鏡を用いた音の撮像系及びポリプロピレン製フィルムの局所的変形(しわ)から発する音や息などの気流による空力音のリアルタイム可視化と,音,人が介在するインタラクションについて報告する.
著者らはこれまでに,ビデオ映像を用いた遠隔コミュニケーションにおいてインタラクション把握を支援する手法として,自己の代役キャラクタを相手映像に対面合成する実映像対話システムEnhancedVideoChat(E-VChat)を開発してきた.E-VChatでは対話相手が自己を正面から撮影することを想定してキャラクタを配置していたが,実際の利用場面では横方向などから撮影する場面も考えられる.本研究では,E-VChatにおいて対話者の顔を検出し顔方向を推定することで,相手が不特定の箇所にカメラを設置している場合においても画像処理により相手の対面に自己キャラクタを重畳合成する実映像対話システムを開発している.
本稿では実世界空間と仮想空間を行き来して人に情報提示を行うAgent「BReA」を紹介する.人はagentと実世界上の物体を参照した対話を行った場合,ディスプレイ上に映るCGエージェントのような2次元agentと対話するよりもRobotのような3次元agentと対話した方が共感しやすく.またディスプレイ上に映った画像を参照する対話を行う場合は3次元agentと対話するよりも2次元agentと対話するほうが共感しやすいことが明らかとされた.一方でデジタルサイネージのように,実世界上の物体を参照しているにも関わらず,ディスプレイにその物体と同一の画像を用意し,その画像を参照した情報提示を行う場合がある.このように実世界上の物体とディスプレイ上に表示された画像の両方を参照して情報提示される場合がある.BReAは実世界空間と仮想空間の間をスムーズに往来することで実世界の物体参照にもディスプレイ上の画像の参照にも有効な情報提示が可能である.本稿ではBReAの有効性を確かめるため,大学のキャンパス内の生協にBReAを設置してフィールドテストを行った.フィールドテストではBReAが客に商品の説明を行った.本稿では,BReAの説明に対する客の反応の観察結果をまとめた
本研究では,スマートフォン単体で動作する音声対話3Dエージェントシステムを開発した.従来のスマートフォン向け音声対話システムとは違って,提案システムでは,スマートフォン内で音声認識や音声合成などの処理を完結することができるため,ネットワークに起因する遅延のない自然な音声対話が実現可能になった.さらに,スマートフォンに適した音声インタフェースを試作し,提案手法の評価を行った.
本研究では,点群データで表現された実物体に対する力覚レンダリング手法について述べる.実物体の点群データは,デプスカメラによって手軽に得られるようになってきた.リアルタイムに取得される点群データを力覚提示する場合,デプスカメラにおける情報獲得に要する時間に対し,力覚提示における情報提示に必要な時間とのギャップが大きすぎるため,力覚提示の障害となっている.そこで本研究では,力覚提示における時間的なギャップを埋めるため,点群データを時間軸上で補間し,その補間方法にICPを導入することを提案する.本稿では,あらかじめ獲得しておいた点群データとそのフレームを用いて,提案する補間処理を適用し,その効果について評価をおこなう.
スケッチブックへのお絵描きは,ペンやクレヨンさえあればいつでもどこでも始められ,特に子供たちにとっては最も身近な芸術制作の一つである.そのため,スケッチブックへお絵描きするような感覚で二次元および三次元のCGを制作できるコンピュータアプリケーションが数多く開発されている.その中で,本論文では実際にスケッチブックにお絵描きをしてもらいながら,描かれた絵をCGおよび音で拡張するメディアツールを提案する.本ツールでは,スケッチブックに描かれている絵をビデオカメラで撮影することで,画像処理技術で抽出した絵の特徴に基づいてリアルタイムでCGの生成や音の再生を行う.提案ツールを通して見た絵は,動き出したりオブジェクト追加されたりするのに加えて,様々な音も発生する.ユーザは絵や音の変化を楽しみながらスケッチブックへお絵描きすることができる.
本研究では、公共の場の空調設定を合議によって決定するairmeetingを提案する。airmeetingは、スマートフォンから送信されたユーザーの「暑い」「寒い」という意見を集計し、エアコンの温度設定を動的に変更するシステムである。この仕組みにより、公共の場を利用するすべての人にとって快適な温度設定を導出することができる。また、システムの評価実験を行い、導出された温度設定と意見送信数の推移を検証し、応用可能性について検討した。
本研究は,親密なコミュニケーションを支援するインタラクティブシステム“Touch-Shake”の開発と評価を行う.Touch-Shakeは,身体接触を検知する棒状のデバイスで,Touch-Shakeを使用するユーザの静電容量に対応して,Touch-Shake本体から発する音と光が変化するインタラクションを実現するものである.また,ユーザはTouch-Shakeを使用するユーザ個々の体格や体調,接触する相手や接触の仕方に応じて様々なインタラクションが得られる.このため,ユーザはTouch-Shakeを用いた身体接触によるコミュニケーションが楽しくなり,親密なコミュニケーションの機会が増える.本稿は,Touch-Shakeの評価結果からTouch-Shakeの有用性を明らかにし,今後の可能性について記したものである.
現在普及している電子書籍は従来の書籍の電子化が主流であり,新しいデバイスを利用しているが読書としての体験は今までと変わらない.そこで,本稿ではこの環境を活用した新しい読書体験を提供出来るシステムとして,3DCG分野の技術であるLevel Of Detailを文章に応用する「Text Level Of Detail」を提案する.「3Dモデルがカメラから遠ければ大雑把な,近ければ緻密なものに切り替える」というLODの概念を文章に当てはめ,「近いほど部分的で詳細,遠いほど全体的で簡易な文章に切り替える」ことで,文章の意味内容そのものを拡大縮小しながら立体的に読み進める,従来とは異なる読書が行えると考え,システムとコンテンツの両面からこの新しい読書体験の実現を目指す.
本稿では,モータフェーダを利用したインタフェースとアプリケーションの開発について述べる.フェーダのノブの位置情報とモータの回転をもとに様々なインタラクションを実現し、それを用いた直観的に遊べるアプリケーションの開発を目指す.
本研究では,タブレット端末と3DCGを用いてダンスの振付創作を支援するためのシステムを開発した.プロのダンサーから取得したコンテンポラリーダンスのモーションデータを短い振付動作として用意し,複数の振付の合成結果を,3DCGアニメーションでリアルタイムに表示する.振付の動作合成手法として,全身動作の混ぜ合わせと身体部位動作の差し替えが可能である.また,タブレット端末のフリック操作により,振付動作を合成することもできる.本システムは,新しい振付の発想や意外性のある動きの創出を支援することができる.
ヴァイオリンで雑音のない美しい音を演奏するには,弓を等速で動かすことが必要である.このことは多くの教則本でも指摘されているが,腕の感覚や視覚的判断で等速を保つことも,微細な「音質変化」を感じ取りながら練習を行うことも非常に難しい.そこで筆者らは,運弓速度を「音高変化」として出力し,速度の変化をわかりやすく感じ取ることができる運弓練習システムを提案する.ヴァイオリン本体の指板と駒の間にオープンリールデッキの磁気ヘッドを取り付け,一定の高さの音を録音した磁気テープを弓に貼る.磁気テープを磁気ヘッドに擦る際,その速度が一定であれば音高も一定となり,加速すれば音高が上昇,減速すれば音高が下降する.PCによって音程の検出と再出力を行うことによって,その変化量を調整することも可能である.磁気テープと磁気ヘッドを用いたこの検出方法は,光学的な検出より時間分解能に優れた手法であるため,本稿のような楽器練習支援システムに適していると考えている.
商品の割引を行うwebクーポンというものがあり,一般に広く利用されている.一方,近年HMDの小型化,安価化が進んでいる.将来的にはHMDは日常生活に溶け込み,ショッピング時においても人々がHMDを着用する環境が考えられる.本研究ではそのようなHMD装着環境において,webクーポン利用購買を支援するシステムKURU-PONを提案,実装した.本システムでは拡張現実感を用いた視覚効果により,ユーザの購買欲を刺激する.また,クーポン利用購買において重要となるクーポン対象商品の購入,クーポン対象外商品の同時購入を支援することが可能となる.
本論文では電気浸透流(Electroosmotic: EO)ポンプと弾性表面波(Surface Acoustic Wave: SAW)デバイスを用いた超小型匂い発生ユニットを試作し、動画像の提示に同期して匂いを発生させ、「香る動画像提示システム」を実現した。揮発性の低い香水を映像と共に被験者に提示し、被験者の回答より高速に香りを提示して除去できることを確認した。
生演奏のエレキギターの音に反応してロボットが踊るアミューズメントコンテンツの作成方法に関して論ずる.従来の音楽反応型ロボットとの違いは,生演奏とロボットモーションとのインタラクティブ性にある.すなわち,ロボットはギター演奏により運動が時々刻々変化し,逆に演奏者はロボットからの刺激を受けアドリブを変えていくことで,生のジャムセッションを楽しむことを狙いとしている.本論文では,スライド・ビブラート等ギター特有の奏法を推定する手法提案の後,演奏データから得られる演奏特徴量に基づき望ましいロボットモーション(ポーズ)を選択する手法を検討する.小型ヒューマノイドロボットによるパフォーマンス実験及び観衆による評価実験について紹介する.
本研究では,英単語の暗記法である語源暗記法と単語の意味を表したアニメーションを用いた子どもの英単語の暗記を支援するシステムを開発した.開発したシステムでは,2つの名詞を組み合わせてできた複合名詞の暗記を対象とした.iPadを用いて操作を行うことにより,複合名詞を構成する各名詞の音声およびアニメーションを提示し,さらに,それらを組み合わせてできた複合名詞の音声およびアニメーションを提示するようになっている.静止画とアニメーションの条件を比較した評価実験を行うことにより,本システムの効果測定を行う.
ユーザの表現意図を適切に表したノンバーバル情報を伝達するためには、適切なカメラワークと編集が必要なため,質の高いビデオコンテンツを制作するのは困難である.撮影経験の少ないユーザに対する予備実験のもと,漸進的インタラクティブ撮影モデルを提案した.本論文では,映像が表す雰囲気などのような感性情報を撮影技法に関係づけるモデルを基にユーザの撮影知識や技術を補うシステムについて述べている.ノンバーバル情報として特定の雰囲気を選択すると,システムが撮影中の映像とカメラアングルやズーム速度などカメラ操作を解析しユーザを支援する.これまでに開発したシステムはカメラ部分が大きく,重量があったため,小型化を図った.評価実験より,システムは適切にユーザの意図を反映するような撮影支援を行うことが示された.提案システムにより撮影知識や技術の獲得を支援することができ,ユーザがショット撮影をより適切かつ効果的に行えるようになる.
スマートフォンのようなモバイルコンピュータにおいて写真撮影が行われるようになったことで手軽に複数人で写真を撮影・共有して体験を記録することが可能になった.一方で,撮影行為自体は,依然カメラプレビュに映る被写体を撮影するだけであり,他のユーザと協調をはかるような撮影の仕組みはあまりない.そこで我々は,複数人で協調しながら写真撮影ができるカメラアプリケーション,Camvasを提案する.Camvasは,キャンバスと呼ぶ領域に撮影された写真が埋め込まれる枠(カメラフレーム)を複数配置して,そのキャンバス上で写真撮影を行い,一つの画面上に複数の写真が自由にレイアウトされた作品をつくるシステムである.そして,キャンバス作品は複数人で共同制作することができる.キャンパスの中のカメラフレーム毎に撮影者を指定することで,指定された撮影者はそこに自分が撮った写真を埋め込む.キャンバス上で写真撮影が行えることで,他の写真を明示的に意識して撮影することができ,これによって複数人での協調をともなう撮影を実現する.
本論文では,明るさと方向を制御可能なロボティック照明群とペインティングインタフェースから構成される照明システム「Lighty」を提案する.ユーザは部屋の天井に設置されたカメラのリアルタイム映像が映し出されたタブレット上でペインティングを行うことによって,部屋の中の輝度分布を自在にデザインできる.入力された目標輝度分布はカメラ画像上に等高線で可視化される.システムはユーザによって指定された輝度分布を満足させるような照明のパラメータの組み合わせを最適化によって求め,その結果を直ちに照明に反映させる.GPUを用いた並列処理によって最適化計算が高速に行われ,ユーザは塗りながらインタラクティブにライティングの結果を確認できる.開発したミニチュアスケールの実験環境についてデモを行う.
本研究は,体験的知識のメディアとしてのロボット,また,体験的学習のパートナーとしてのロボットを実現することを目的とする.そのためのアプローチとして,体験学習の際で利用される携帯情報端末PhotoChatを利用し,写真とその上への書き込み情報を状況インデクスとし蓄積する.同じ体験学習を別のユーザに対して行った際に,状況インデクス化された状況と同じ状況が発生すると,写真と書き込み情報をユーザに提示する.提示するだけでは気付かれない等の問題が起こり,ユーザへの支援がうまくいかないことが起こる.そのため,ロボットによる直接的なアプローチをすることで,体験学習の支援を行なう.
本システムではKinectを白杖に搭載した視覚障がい者支援システムを提案する.Kinectによって得られた距離画像と加速度センサー値を用いて物体を認識し,結果をユーザー(視覚障がい者)にオンデマンドで提示することで,日常生活を支援するシステムを目指す.本システムでは,歩行可能な床面,障害物,椅子の座面,上り階段,落下危険箇所を認識対象とする.
プレゼンテーションにおいてスライドのある部分に聴者の注目を集める方法として,ポインティングデバイスの利用が挙げられる.しかし,ポインティングデバイスは話者が注目箇所を示し続けなければならず,聴者がスライドから目を離していた場合に注目箇所を見逃すと話の流れが分からなくなり,その後の説明についていけなくなる危険性がある.また,話者はスライド上の重要な箇所は説明の際に何度か参照する必要があり,その度にポイントを行うことはプレゼンテーションの負担になってしまう.本研究では,話者のシルエットをスライドの背景として表示し,話者自身がポインティングデバイスとなり発表を行うことができるプレゼンテーションツールにおいて,動作を行うことにより注目箇所をマーキングする方法を示す.
ドラム初心者は,ひとつの譜面を打楽器ごとに複数の譜面として解釈し,それらのタイミングを合わせながら演奏しようとしがちである.この練習法では,どのタイミングでどのように身体を使うかが分かりにくく,そもそも正しく演奏することができない.そこで本稿では,譜面を縦に裁断することで,拍ごとの身体の動かし方を理解させるシステムを提案する.裁断された譜面からは練習に不要な情報を取り除き,さらに繰り返しや同じパターンを発見しやすいように色分けする.これで練習できるようになった後は,譜面を段階的に統合していくことによってフレーズごとのまとまりや横のつながりを理解していく.
大画面壁面ディスプレイも離れて見ればタブレット端末程度の大きさとなる.本研究ではプロジェクタで表示した大画面ディスプレイに対してより少ない動作でタブレット操作のようにポインティング可能なリモートタッチポインティングを提案する.提案手法は身体の一部(頭など)を基点座標,操作する身体の一部(手など)を操作点座標,その先のディスプレイとの交点をポイント座標としてポインタを表示する.
本稿では自動車内における会話に着目し,会話を配信することで街に関する情報の流通を図ると共に会話が共起されるかを検討する.会話データの収集と提示にスマートフォンを用いることでより手軽なシステムの構築を目指す.また,会話のインデックスとして指差しに着目し,自動車内での指差しの認識手法について検討する.
漫画やアニメをはじめ,手描きのキャラクターの顔は印象的で表現方法として視覚的にわかりやすく親しみやすい.また画力に差は出るが,誰でも気軽に描くことができる.そこで本稿では手描きの顔が持つわかりやすさや親しみやすさに着目し,ユーザが描いた顔を検出してインタラクションさせるシステムを提案する.
現在のe-コマースにおいて,商品の画像は2次元画像にて表されることが多い.2次元画像を参考にしてユーザが商品を選択する場合,その商品の実際の大きさの感覚(サイズ感)の把握が困難である.そのため,幾つかのe-コマースサイトでは多視点画像を用いて擬似3次元的に商品の提示を行っているが,多視点画像を準備することは店舗側にとってコストがかかる.我々は携帯情報端末を用いた多視点商品画像の記録閲覧システムを示す.携帯情報端末のみを用いて簡便に記録閲覧可能なシステムを構築することにより,店舗側の記録コストを減らし,さらにユーザ側の閲覧性を向上させることを目的とする.本稿では,提案する記録閲覧システムのインタラクション手法とその実装について述べる.
本論文では,人の関心を呼び起こし,インタラクションを誘発する環境的な情報空間(インタラクティブ・アンビエントスペース)として,人の声に着目したUtteractiveWallを提案する.UtteractiveWallは,壁型のタッチインタフェースを持つ複数の大型ディスプレイにより構成し,人の発する声を次々と録音し,それをオブジェクトとして可視化し,さらにそれに触れると録音した声が再生されることで,人々の関心とインタラクションを生み出す空間を作り出すものである.カメラとマイクを協調的に用いることで人々の位置を判定し,人々の動きに応じてオブジェクトがダイナミックな動きを示す特徴を持つ.本システムで構築した環境は,アンビエントスペースを用いた今後の様々なインタラクションの基本環境として展開が期待できる.インタラクティブ発表用にはデスクトップ型を展示する
個人宅の書架は,友人や客人との会話のきっかけになるなどコミュニケーションツールとしての役割がある.また,多数の書籍を持つ人にすれば書籍の実在感・所有感を日常空間として保つ場所として書架の存在意義があると言える.電子書籍の普及に伴って個人宅での物理書籍の割合いが減り,ひいては物理的な書架がない人が増えることが考えられる.そうなると,所有者本人の書籍への感覚や,他人とのコミュニケーションが失われる懸念があると言える.そこで我々は,近い将来の日常生活空間における壁ディスプレイを想定して,電子書籍を実寸大表示する電子書架システムを構築し,それらコミュニケーションや実在感・所有感に関する研究を行っている.本稿では,マルチタッチ可能な壁ディスプレイを用いて実寸大表示できる電子書架システムについて,その実装と表示,また操作可能な書籍や棚とのインタラクションについて述べる.
ネオジアム磁石を動かして携帯端末を操作するインタフェース-G-Sharkを提案する。磁気センサの配列を利用して、磁石の3次元位置をトラッキングすることで、携帯端末の周辺スペースでの3次元インタラクションを可能にした入力インタフェースである。磁石トラッキングアルゴリズムを工夫して、携帯端末の処理でもリアルタイムにインタラクションできるようになった。本論文でG-Sharkの実装と携帯デバイスのアプリケーション、インタラクションでの応用の考察について、また、イヤホンに入っている磁石などの普通の磁石の利用の可能性の検討についても述べる。
従来の恋愛支援技術の研究は,遠距離恋愛者を対象に研究開発が進められてきたが,近距離恋愛者に対しても支援すべき課題が残されていると考える.恋人間の愛着行動(いわゆる「いちゃいちゃ」)は,幸福感を得るためや相手との関係をより良いものにするために重要な行為である.恋人達の多くは,常に愛着行動をとりたいと願っている.しかしながら公共空間では,目の前にパートナーがいるにもかかわらず愛着行動を行うことができない.そこで我々は,公共空間内での対面状況において,周囲に不快感を与えることなく愛着行動を行えるメディアの研究開発を進めている.本稿ではこのメディアの実現に向け,どのような種類の行動を伝え合うことが有効かに関する基礎的検証を行う.
本論文では,家具をインテリジェント化するデバイスを提案する.家庭内の家具を操作したとき,自動的に電子機能が実行されると暮らしが便利になると思われる.例えば,玄関のドアを開けたとき,今から間に合う電車の発車時刻をユーザに提示する機能が実行されれば,ユーザはわざわざ電車の発車時刻を調べる手間が省ける.しかし,既存技術でこれを実現ためには,ユーザが家庭内にも関わらず何らかのデバイスを装着したり,特殊なジェスチャを行ったりしなくてはならないものが多い.ユーザにとって利用しやすいシステムを実現するためには,電子機能の発動や結果確認のためにコンピュータを明示的に意識・操作することなく,普段どおりに家具を操作するだけで済むことが望ましい.我々が提案する小型デバイスは,加速度センサやスピーカなどを内蔵し,ユーザはこれを接着したドアなどの家具を普段どおりに使うだけで,デバイスから音声出力される電子機能の実行結果を確認できる.家具は特殊なものである必要は無く,どの国の一般家庭にも数多く存在する可動家具(引き出し,ドア,郵便受けなど)に広く適用可能である.電子機能を実行するためのトリガ操作(ドアを開けるなど)をシステムに登録する方法も簡単であり,ユーザはトリガ操作を1回実行するだけでよい.