我々はこれまでに,糸状形状記憶合金を利用した微小振動アクチュエータを開発し,触覚の高次知覚を利用した新しい情報呈示手法を提案してきた.人間はもののテクスチャを触覚を利用して認識する際,視覚情報や体性感覚も有効に活用している.そこで,視覚ディスプレイ上に表示したテクスチャ画像に対応した触覚刺激を,形状記憶合金ワイヤを利用した触覚ディスプレイによってユーザの手掌部に呈示するシステムを構築した.本システムは,複数のテクスチャ画像をモニタに表示し,ユーザがどのテクスチャ上をどのような速度でなでるかによって呈示刺激を変化させることにより,能動的に物体の表面を撫でているかのような感覚を呈示することが可能である.システムの評価実験から,触覚と視覚の同時呈示により,よりリアリティのある触覚感覚の呈示が可能となることがわかった.
本稿では,実世界情報を獲得するための新たな枠組み「クリッカブル・リアルワールド」を提案する.ユーザは携帯端末で実世界中の対象を撮影するというインタラクションを通してその対象に関する実世界情報を獲得することが可能になる.システム側に求められる技術課題には,撮影対象を認識し,その対象に関する検索キーワードを抽出することが挙げられる.本研究では,公開画像データベースを利用することでこれらの課題を解決する方法を提案する.
コンピュータネットワーク化と少子高齢化が進む現代社会において,文化の差異や障がいの有無に関係なく誰でも使用でき,常時装用してハンズフリーでいつでも・どこでも使用でき,ユーザの見守り支援ができるウェアラブルコンピュータが必要である.本稿では,外耳(耳と耳の中)の動きを光学式距離センサで計測し,その計測結果をもとにウェアラブルコンピュータに情報を提供する常時装用型コマンド入力装置(愛称:みみスイッチ,Me-Me switch)について述べる.
本稿は,ペンタブレットによるドローイングの支援に関するインタフェースの研究報告である.従来のコンピュータドローイングインタフェースは,ペンの筆圧,傾き,回転をセンシングし,ストロークの濃度,太さに対応させるにとどまり,これら以外のパラメタの調整(ストロークのカラー,テクスチャなど)には,メニュー,アイコンなどのGUI要素をユーザが操作する必要があった.そこで,筆者らは,ペンの把持位置を用いてストロークのパラメタを調整する手法を提案し,その実現可能性を探るため,デザイナを被験者としたドローイング時の把持位置変化の計測実験を行った.またそれらを入力パラメータとして利用するドローイング支援システムについて報告する.
多くの女性は美しい肌を保ちたいと考えているが,美しい肌を保つことは手間がかかり,困難である.そこで我々はライフログを利用した遠隔美肌カウンセリングシステムを提案する.これは,肌に関連した要素のログを簡単にとり,そのデータを美容の専門家と共有することで適切なスキンケアアドバイスを受けることができるシステムである.このシステムを使うことで誰でも簡単により美しい肌を保つことができると考えられる.
コンピュータからの情報を手形状として出力するシステムは少ない.そこで,本研究では手形状によるフィードバックシステムを目指し,電気的筋肉刺激により手形状を制御するPossessedHandを提案した.14個の非侵蝕性のパッド型電極を用いて,前腕周辺の手指を駆動する筋肉に電気刺激を与える.PossessedHandを用いて各々の手指関節についての動作実験を行った所,16関節の連動した屈曲と8関節の独立した屈曲動作を確認した.また,指伸展動作も確認した.この実験結果をふまえ,ナビゲーションシステム,3次元フィードバックシステムと楽器演奏の学習補助のインタラクションシステムを提案した.
本稿では,大型ディスプレイによる複数人物への情報提示制御法について提案する.大型ディスプレイでは個々の対象それぞれへの適切な情報提示を行うことは難しい.このような問題に対し,本研究では人間の視覚特性の一つであるコントラスト感度関数を利用することによって各対象に選択的に情報を提示する手法を提案する.具体的には,このコントラスト感度関数を用い,あるに対象知覚しやすく,その対象以外から知覚しづらくなるような空間周波数の画像を重畳表示する.実験を通じて本手法の有効性を確認した.
本研究では,家庭内の様子をオルゴールのメタファを用いて音で提示するインタフェース「イルゴール」を提案する.イルゴールの背面に設置したぜんまいを巻いてふたを開くと,オルゴールのBGM に乗せて,過去の家庭の音が聞こえてくる.ユーザは,オルゴールで過去の思い出を振り返るような感覚で,家庭の様子を知ることが出来る.本論文では,実験住宅に複数のセンサを設置してユーザの行動を取得し,イルゴールを用いて生活状況が確認できるかを調査した.