本研究では自動車内での環境を想定して,指差し行動を認識し,その指示対象を自動識別することで,その地点と車内での会話との紐付けを行う手法を提案する.複数人に対して小型のモーションキャプチャ装置を用いて位置姿勢の計測を行い,手と頭の位置から直線の式を求めて,複数の直線から交点を求めることで指差し対象を同定する.本稿では,提案手法による識別が可能かを検証する実験を行ったのでその結果について考察する.
スライドを用いたプレゼンテーションにおいて,説明個所の確実な指し示し(ポインティング)は重要であるが,聴衆のすべてが示した場所を認識するまで,場所指定を継続して維持することは努力を要する.本稿では,自然に確実なポインティングを実現するシステムについて述べる.このシステムはコンピュータにあるカメラを利用し,話者のシルエットを認識する.その上で,手に持った目立つ物体を追跡して,シルエットと物体の場所を示すマーク(ポインタ)をプレセンテーションのスライドの上に重ね合わせて表示する.物体の動きが停止したことを検出すると,別の形状のマーク(スタンプ)を生成し,それを聴衆にとって十分な時間だけ保持する.このとき,物体が動いたとしてもスタンプは移動しない.このようにして確実なポインティングを実現した.
KinectインターフェースによるiRemocon制御では,テレビ,扇風機,エアコン等の赤外線信号で操作出来る家電をジェスチャを送ることで制御することができる.ここでユーザが送ったジェスチャのジェスチャ認識情報とiRemoconが学習する赤外線信号情報を結び付けることにより,プログラミングの知識の無いユーザでも任意のジェスチャで任意の家電を制御することが可能になった.
本稿では,携帯端末に装着可能な小型かつシンプルな構成である力覚提示装置SPIDAR-Sを提案する.SPIDAR-Sは一本の糸,モータ,イヤホン端子で構成されている.力の提示には,糸の張力を用いる.一本糸であるために力の向きは1方向となる.モータは携帯端末から出力される音声信号により制御される.スマートフォンやタブレットといった携帯端末の多くにはイヤホンジャックが搭載されているため,イヤホンジャックを携帯端末とのインターフェースとして採用した.
現在までに,多くの玩具が市場に発表され,中でもラジオコントロールカーなどの操作可能な玩具は,技術の進歩とともに性能が向上している.最近では,スマートフォンのアプリケーションで操作可能な玩具も発表されている一方で,それらは子供や幼児にとっては操作が困難な場合がしばしばある.そこで我々は,音を利用した自走式玩具の簡易な操作方法を提案する.具体的にはユーザがベルを鳴らすと,アヒルの形をした玩具がユーザの方向に向かって走行する.このアヒル型の玩具は,2つのマイクを搭載しており,音源の方向を推定する.また,周波数解析をし,音程も推定する.ユーザの後ろを玩具が追走することで,アヒルの親子のようにユーザは玩具を操作し,遊ぶことが出来る.
我々は,現実・仮想を問わず異なる空間に存在するユーザやモノの情報を共有することで,高度なインタラクションを可能とする共生現実感(Symbiotic Reality: SR)に関する研究を進めている.SRは,別々の空間を感覚的に融合させた共生空間を通してユーザに提供され,この共生空間は,ユーザに空間を提示する機能(空間提示機能),ユーザやモノの状態を獲得する機能(状態獲得機能)等を様々な形で実装した複数のシステムにより実現される.本稿では,眼鏡型の空間提示機能,および,眼鏡型空間提示機能と効果的に併用できる状態獲得機能を,透過型ヘッドマウントディスプレイ(HMD)とモーションセンサで実装したシステムを提案する.さらに,試作システムを用いた実験結果に基づき,提案システムの有効性に関する検討を行う.
両眼視線計測の新たな応用先としてランダムドットステレオグラム(Random Dot Stereogram, RDS)における立体視支援を提案する.RDSとは,一見ノイズのようだが一定の視差をもって見ると立体が浮かび上がる画像である6).RDSを見るためには随意的に輻輳開散運動を調整する必要があるが,この調整能力には大きな個人差が存在し立体視が不可能な人も数多く存在する.我々は両眼の眼球運動を計測することで誰でもRDSを見ることが出来るシステムを提案する.構築したシステムではランダムな奥行きを持つRDSを提示した場合と比較して有意に立体視が成立するまでの所要時間が減少することを確認した.また本システムのアプリケーションとして,パスワード入力時の覗き見防止手法を提案し評価した.
本稿では,多様な高齢者に適応した住空間サービス提供のため,高齢者の体感特性をマルチモーダル分析した結果について延べる.高齢者は,暑さと寒さに対する感覚が鈍くなり,その傾向が個人ごとに異なる.高齢者が安心して健康に過ごせる住空間を実現するには,人によって異なる体感を理解し,個々に適応したサービスを提供する必要がある.我々はすでに体感情報に基づいて空調制御を行う住空間状況理解システムを構築している.住空間に関する万人共通の知識を収集したインドアコモンセンスに基づいて状況に応じた機器制御が可能であるが,一人ひとりの高齢者に適応したサービス提供のためには多様な個人特性に関する知識の蓄積・活用が必要である.この観点から,高齢者の多様な体感特性を理解するのに役立つ状況要因を調査するため,実環境における体感入力実験を実施した.体感の個人性の違いに着目した分析により,温度に関する体感の変化に敏感か鈍感かが被験者によって異なる可能性が示された.また,体感入力時の状況を詳細分析したところ,同時刻に同じ環境にいても暑さ寒さの体感が異なる場合があり,会話への関心・参与の度合いが体感の違いに影響することが示唆された.多様な体感特性を持つ高齢者に適応した空調制御の実現に向け,個人特性の違いを考慮した状況理解システムの高度化につながる知見を獲得した.
本論文では,公共の場などでの個人認証における脅威である覗き見攻撃に対して,安全性を高めることを目的とした認証方法ColorPasswordを提案する.ColorPasswordは,数字と色の種類の組み合わせを任意に考え,その羅列をパスワードとして認証するシステムであり,従来のインタフェースや記憶負担量を踏襲している.ユーザは従来のデバイスと同様に入力を行うが,数字と色の入力箇所が重なっていることにより他者はユーザが数字と色どちらを目的に入力したのかを判別することが出来ない.本論文ではColorPasswordの提案と実装について紹介し,その利用について議論する.
本研究では,PowerPoint上のスライドオブジェクトをジェスチャにより操作可能なプレゼンテーションツールを実装している.ここでは,モーションセンサとして,Leap Motionを用いることで,両手を利用可能なプレゼンテーションツールを実現した.さらに,モーションセンサの認識範囲がプレゼンテーションにおける制約となる問題を解消するために,プレゼンテーションに適したモーションセンサの装着方法について検討した.本稿では,モーションセンサに基づくスライドオブジェクト操作機構,およびモーションセンサの装着方法について述べる.
当事者には楽しく部外者にはわかりにくい絵文字群をデザインし、この利用方法を提案した。ソーシャルネットワークなどで対話を行う際、スタンプなどの絵文字を利用することが増えて来た。絵文字はそれだけで多彩な表現が可能であり、誰がみても理解できるものが多かった。新たに、あるコミュニティで特定の話題について語りあいたい当事者のみにはわかる絵文字群をデザインした。部外者にはわかりにくい絵文字群とすることで、対話内容を晒しながらも恥ずかしい思いなどをしなくて済むという利点がある。今回、基礎的な実験を行い、本手法の基本的な機能の有効性を示すとともに、課題を明確にし、考察を行い、今後の方向性を示した。
家電や様々なセンサ,インターネットサービス(天気予報やニュース,SNSなど),コンテンツまでを様々に組み合わせて統合的に連携・動作させることを目的とした機器やサービスが次々に登場し,住宅のスマートハウス化を進めている.本研究は,その流れにおいてエンドユーザが様々な機器やサービスをより柔軟で自由に組み合わせられるようにすべく,直感的でわかりやすい操作を実現するビジュアルプログラミング環境を開発し,その内部処理を行うためのシステムも構築する.本稿では,そのシステム概要とビジュアルプログラミング環境について述べ,本システムの利用例を示す.
大規模なデータから有用な知識を発見するデータマイニングではアルゴリズムの処理に計算時間がかかる.これに対して,人の介入を前提として,人とアルゴリズムが連携しつつ処理を進めるインタラクティブデータマイニングという手法がある.アルゴリズムの処理中に人が介入するためには,それを支援するユーザインタフェースが重要となる.我々は,データマイニングにおける属性選択の問題に対して,FoBaアルゴリズムと連携してユーザが指示を与えるためのユーザインターフェースを試作した.データ分析者の試用により,操作に応じて瞬時にデータやモデルを可視化したグラフを更新することは試行錯誤に有効であることが分かった.
スケッチはデザイナの情報記録,共有,そしてアイディアの発想のためのツールとして使用されている.本研究ではタブレットPCとデプス(depth)カメラを用い,空間構造の理解やデザインを促すスケッチインタフェースを開発した.手描きのスケッチに三次元構造を組み合わせ,奥行きのついたスケッチの世界を歩き回ることや.空間内に付箋を貼るようにメモやアイディアを描き加えることが可能となる.対象ユーザは建築デザインやサービスデザインを手がけるデザイナの人々である.複数人で同じ空間にスケッチを行うことや,スケッチ後の空間が共有でき,情報の記録から活用までを支援するシステムを目指す.
Twitterのようなリアルタイム性のあるテキストを効率的に入力可能にするために,状況や文脈(コンテクスト情報)を利用して文を作成するテキスト入力システムを提案する.さらに,そのシステムのユーザと対話しながら文を形成するための構造(アーキテクチャ),および文の生成手法・表現の調整方法を記述する.学生を対象に行ったユーザビリティテストとコミュニティFMにおけるシステムの試用から,システムを利用して入力した文と,過去にTwitterに投稿された文を比較し,さらに文の作成支援の側面から有用性を示す.
近年睡眠への関心は高まっている.本研究は睡眠深度によって適した刺激を与えることにより睡眠の質を向上させるインタフェースを提案することが目的である.本稿では睡眠時のユーザの体動をスマートフォンで計測し睡眠深度を測定した結果を報告する.測定したデータをPCに送信してArduinoを制御し,睡眠深度に即した光や音の刺激を与える抱き枕型ディバイスを提案する.
Web上には日々様々なユーザから投稿された「記事」が蓄積されていく.不特定多数のユーザによって投稿された記事は,情報の配置に統一性がない.さらに筆者が不特定多数であることは,「記事」の増加速度を速める事にもつながっている.そうして次々と蓄積された「散在する記事」は情報量こそ多いが,利用性に欠ける.そこでWeb上に散在する「記事」にストーリー形式で効果的にアクセスできるインターフェースを考察し,それを実装したシステムを提案する.
従来のHuman Computer Interaction (HCI)の研究領域では,人間と機械の接点におけるインタラクション(相互作用)に関する研究が盛んに行われてきたが,一方で人間以外の生物を交えたインタラクションAnimal Computer Interaction (ACI)に関する研究が始まりつつある.そこで本研究では,近年普及しているiPad等の携帯情報端末を通して,都市部の人々が森林に生息する野生動物と疑似的なコミュニケーションを行える森林仮想体験環境“リモートしかじゃらし”を構築する.今回は対象となる動物を森林内に生息する野生の鹿とし,予め森林内に設置した誘引餌(岩塩)を,都市部のユーザーがiPadを通して遠隔操作で動かす.これによりあたかも奈良の鹿煎餅のように鹿と疑似的かつシームレスに戯れる仮想環境の構築を目指した.
本研究は,専門知識や難しい操作を必要とせずに扱えるユーザーフレンドリーなプロジェクト管理支援Webアプリケーションの開発と,そのシステムの実現を目指すものである.前報では,そのための手法としてバージョン管理と表形式のインターフェースによってプロジェクトを管理する「タスクチャート手法」を提案した.今期研究では,上述のタスクチャート手法に,日時・進行度・期限・優先順位・制作者等をキーとし,目的別の切り口から全体を閲覧できるビジュアライゼーション機能を導入することによって,プロジェクトの過程を残しながら,それぞれの役割に応じて効率的にプロジェクトを管理する手法を提示する.
我々の社会は知識基盤社会へと移り変わっている.従来の工業社会と違い,知識基盤社会では知識の活用や融合が重要とされている.そのため新しい知識や価値の共創の場を構築することは,社会にとって有益である.本稿では,北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科を対象として異分野融合を促す陣地取りゲームKnowledgeXrossを開発した.評価実験の結果,ユーザーの興味を引くことができ,組織内での知識共創場構築の可能性が示唆された.
実店舗における買い物の際には,客と店員との間におこるコミュニケーション(接客)がとても重要な役割を果たす.客側にとっては商品の詳細を知る機会として,店員側は商品を購入してもらう可能性を引き上げる手段として接客がおこなわれる.実際には,客が店員に話しかけることをためらってしまったり,店員側も接客タイミングを逃してまったりと,互いにとって有益なコミュニケーションの機会が失われてしまうことも多い.本研究では,客側の「店員へ声をかけづらい状況」の問題点と,そこからから生じる店員側の「接客機会の損失」の問題点を解決するため,グラス型端末が実店舗のユーザの状態を検知し,興味が向いている商品カテゴリを推定する.それにより,システムが店員に代わり,ユーザに対して早く確実に適切な声かけをおこない,これと連携してスマートフォンを通して店員とのコミュニケーションを促すシステムを提案する.
ポスターなど印刷物のデザイン制作では,コンピュータ上に動作するDTPソフトウェア及び液晶ディスプレイを用いて作業を行う.そのため,印刷した際の見え方とディスプレイ上での見え方が異なって見える,“印象の不一致問題”が発生する.本研究では拡張現実(AR)の技術を用いてこの問題の軽減を試みる.すなわち,実際に印刷し掲示した状態のポスターに対してその場でデザイン要素の修正のプレビューを行うことを目的に,デザイン修正のためのARインタフェースの考案・設計を行い,現実を上書きし修正をプレビューできるシステムを開発する.本稿ではフォントの修正に特化したプロトタイプのシステムについて詳述する.
本論文では,事前に行った地域の文化祭での実験評価の結果をふまえつつ,二台のロボットと児童一人ひとりのやり取りを行い,最後に二台のロボットが,ふれ合いの思い出を日記に書いて複数の子どもたちと共有するシステムの構築について述べる.構築したシステムは,ふれ合いを通して子どもの自尊心にどのような変化が現れるかを評価するために用いる.人間関係を含む複雑な状況に囲まれて生きる児童期の子どもたちが,ロボットとのふれ合いを通して自身の存在を受け止めてもらうことで自信を少しでもつけること,ロボットとの関わりが他の子と話すきっかけになることを目指す.
FlashTouchはタッチスクリーンを搭載したモバイル端末と双方向通信を実現する通信方式および技術である.タッチスクリーンは光を放出する液晶パネルと,静電容量によって指の接触を認識するデジタイザーで構成されているため,この2つをインプット・アウトプットとして用いる.スタイラス型のFlashTouch端末により,投影型静電容量タッチスクリーンを有するすべてのデバイスで使用する事ができ,ユーザ間のデータの受け渡しやデバイス間のシームレスなデータの移動といった,実世界でのデバイスに即した情報共有が可能になる.そのため,無線通信やユーザアカウントを用いたデータの移動といった知識がなくても使用できるインタフェースを実現できる.最後に,ユーザ間のデータ共有や,スマートフォンを経由した決済のアプリケーション例を示す.
病院での業務に利用されている病院情報システムと実世界間での情報のスムーズなやり取りは,業務効率の向上だけではなく,安全管理にも貢献することができる.本研究では,Bluetoothを利用して病院内での人や物の位置情報や医療機器の稼働状態などを取得し,取得した情報を処理するためのシステムの開発を行っている.システムには二つの機能を持たせる.一つ目は患者,看護師,医療機器の位置情報から,どの看護師がどの患者にどの行為を実施しようとしているかを推定することで,患者の取り違えによる薬剤の誤投与を防止することである.二つ目は医療機器の稼働情報をシステムでモニタリングすることで,適切に機器が用いられているかを自動で確認することである.本稿ではこれらの機能の概要について述べる.
ウェアラブルデバイスは著しい発展により様々な分野への応用が期待されている一方,技術的な課題だけでなく社会的な課題も存在する.これらの課題を解決にはデバイス開発者だけでなく,幅広い分野の人たちと議論して開発を進めることが重要である.しかし,議論した結果を検証するにはその内容を反映したウェアラブルデバイスそのものが必要であるにもかかわらず,その分野に精通した開発者でなければウェアラブルデバイスの開発は困難であるのが現状である.本研究では,ウェアラブルデバイス開発の知識に乏しい人向けのプロトタイピングを支援するためのツールキットを提案する.本稿では,ツールキットの概要及び実装したツールキットの内容について紹介する.
オンライン学習においてもノートテイキングは学習を深める上で重要である.しかしながら,タブレット端末などタッチパネルでのノート作成は,操作性が悪く,学習者の認知的負荷も高い.本稿では,オンライン学習におけるタブレット端末でのノート作成を支援するために,画面上に提示されている字幕資料を指でなぞることによりノートテイキングを行うツール「TeTra」を提案する.ノート作成における学習効率を高めるために「外的認知負荷の軽減」と「視覚チャンネルと聴覚チャンネルの一致」および「閲覧性の向上」の観点からデザイン要件を定義し,TeTraを実装したので報告する.
近年マイコンArduinoと連携しやすい言語および総合開発環境であるProcessingが注目されている.これらを使うとセンサとCGの連携アプリケーションを書くことができるが,それについての抽象モデルや開発環境は十分といえるものがなく,初心者にとっては難しいものとなっている.TheatreFourzeはCGとセンサの連携を舞台演出手法を取り入れ解釈しやすくしたライブラリである.本論文で提案するライブラリの機能,実例,および行った評価実験の考察を述べる.
良好な都市景観の形成を促進するための景観計画を策定するに際し,行政,事業者,近隣住民が持つ都市景観イメージを円滑に共有することを支援するための都市空間シミュレーションモデルを開発した.ゲームエンジンを用いることで,これまでの都市計画分野で活用されてきたシミュレーションモデルに対して,安価で高品質且つ自由度の高いシステムの開発が可能である.また,プロトタイプモデルの評価で課題となった点を改良するとともに,景観条件の変更と景観評価が可能な新たなシステムの開発を行い,本システムを用いて景観に資する空間構成要素の注視傾向を測定する.注視された空間構成要素の識別子をログとして収集・保存し,これを分析した.さらにHMD等のインタフェースを用いることで,より没入感のある環境の再現を行った.
ディスプレイ内で起こるイベントの現実感を高めるためには,ユーザの身体がディスプレイ空間に入り込んだかのような実在感を与えることが重要となる.マウスポインタの操作性を維持しつつ,ディスプレイ内のポインタがあたかもユーザの手の一部であると感じさせるためのアプローチとして,本研究では身体の錯覚現象に注目し,背面入力インタフェースを採用したうえで,視覚・運動感覚・触覚を相互に同期するデスクトップ操作環境を設計した.さらに,被験者実験によって,ポインタの形状の設計に関する重要な指針を得たので報告する.
本稿では,動物の認知機能を活用するマイクロタスク型クラウドソーシングシステムである“アニマルクラウド”を提案する.アニマルクラウドの要求条件として,タスクの学習の必要性,タスク正解率の補完,タスク実行の選択権の確保,が挙げられる.上記要求条件を満たすシステムのアプリケーション例として,ラットによる画像認識システムを実装した.システムの実現可能性を確認するために,ラットの行動実験と,シミュレーションを行った.その結果,約50匹のラットを15日程度学習させることで本提案は実現可能であることが示唆された.
単純な装置で大規模な階層データを効率的にナビゲーションする手法「Gear」を提案する.大規模な階層データから項目を選ぶ場合,階層を移動したり階層内の選択項目を移動したりするために3個以上のキーが用いられるのが普通であるが,Gearでは2個のキーだけを使って階層データをナビゲーションすることができる.Gearでは(1)階層内の項目選択時に端まで来た場合は上の階層に移動する.(2)選択中の項目に下位階層がある場合は一定時間後に下の階層に移動する.という手法により,階層を上下に移動するためのキーが不要になり,2個のキーや回転ダイヤルなどだけであらゆる階層データを効率的にナビゲーションすることが可能になる.
街を移動する際にスマートフォン等によるルート・ナビゲーション・システムを利用するユーザは多い.しかし,移動中に小さな画面で経路を確認することは危険を伴う行為である.このため,人が記憶しやすく視認性の高いランドマークを用いたナビゲーション・システムがこれまで提案されてきた.それらシステムで主に用いられるランドマークは,1)郵便局やコンビニエンス・ストアのような,近くまでいかないと視認できないが,確認することでユーザの現在位置を高い精度で同定できるものか,2)電波塔や高層ビルなどのように,遠方からでも視認できるが,現在位置をおおまかにしか同定できないもの,の2種類であった.本論文では,これらランドマークを,その視認性や位置同定能力から,それぞれ,1)点のランドマークおよび,2)面のランドマークと呼ぶ.これら,点と面のランドマークは,その性質の違いから,同時に使用することが難しく,これまでのシステムは,いずれか一方を用いるものであった.そこで,我々は,3)電車通りや河川のように,すぐ近くまで行かないと視認できないが,その範囲が線状に広がりを持つものを新たに,3)線のランドマーク,として定義し,これを用いて従来難しかった,複数種類のランドマークを同時に利用可能なシステムを提案する.本システムを用いれば,少ない数のランドマークを利用して目的地に到達することができるため,スマートフォンなどの画面を見る回数を減らすことができる.
近年,計算社会科学の分野でウェブ上のソーシャルデータを用いて,社会現象の定量的理解や社会心理学的な実証研究等,様々な研究が活発に行われている.その中でもソーシャルデータを用いた政治選挙の結果予測は重要課題の1つである.Twitterと選挙の関係を表す仮説として, More Tweets, More Votes (MTMV)仮説がある.本研究では,2014年2月に行われた東京都知事選挙を題材とし,この仮説が東京都知事選挙において成立しなかったことを示す.さらに,候補者に対するオンライン注目度を情報エントロピーで計測することを提案し,この指標と得票数との相関が高いことを示す.
本稿は,モバイルディスプレイやアプリケーションウィンドウなど限られたサイズのスクリーン上で,スクロール操作を画面外に拡張することができる連続的なタッチスクロール操作について検討する.提案する連続的なスクロールでは,トラッキングシステムによりデバイスの周囲空間での指の動作を取得することで,タッチスクロール操作におけるユーザの運動領域を拡張し,長距離スクロールにおけるクラッチ数を減らすことができる.これにより,指や手が画面上を覆う時間(オクルージョン)を減らし,安定した画面の情報探索や,素早い画面外コンテンツの獲得を実現することができる.本研究では,大画面タッチスクリーンとモバイルタッチスクリーンの2つの代表的なスクリーン環境において,連続的なスクロールの基礎的なパフォーマンスを既存手法(ドラッグ,フリック)との比較を通して検証した.前者の環境では,スクリーン内に表示されたアプリケーションウィンドウの周囲にウィンドウ内と同一のタッチスクリーンが存在しており,これによりウィンドウ外での指の動きを計測する.後者では,スクリーン周囲は空中であるため,外部の3次元トラッキングシステムにより指の動きを計測した.ユーザスタディの結果,連続的なスクロールは既存手法よりもクラッチ回数,操作指によるオクルージョン,操作負担を減らすことのでき,また見落としの少ない情報探索ができたことが分かった.また,実験結果をもとに連続的なスクロールの設計指針や実装例についても議論した.
世界有数の地震大国である我が国では,市民一人一人が地震・防災に対する正しい知識を持ち,来るべき大地震に備える必要がある.本研究では市民が能動的に地震観測ネットワークに参加し,地震・防災に対する理解を深める事を目的として,教育機関や一般家庭でも導入しやすい市販の安価なMEMSセンサーと,小型コンピュータであるRaspberry Piを用いて小型ユニットを作成し,その集合となるセンサーネットワークとしてCitizen Seismology Network (CSN)を構築した.また利用者が気軽に操作し,地震・防災への関心を高められるようCSNを利用した各種アプリケーションの作成と提案を行った.今後CSNの普及を通して地域の地震・防災リテラシー向上の基盤を構築することを目指す.
函館市には歴史のある観光資源が多く存在している.それらの観光資源と歴史的な関連のある地域史コンテンツを結びつけて提示することで,観光客の観光資源に対する満足度の向上に繋がると考えられる.本研究では,地域史コンテンツのLOD (Linked Open Data)を構築し,観光スポットから歴史的な関連のある人物を辿ることができる観光スマートフォンアプリの構築を行う.提案アプリには,「はこだて人物誌」のRDFデータセットや「デジタル資料館」のRDFデータセットを用いて,観光スポットへの興味を持たせる仕組みを取り入れる.
本研究では,空中に浮かせた複数の発泡スチロール球をピクセルと見立てる実体型三次元ディスプレイを提案する.具体的には球の高さ制御,球の平面移動制御,群制御の3つの仕組みを合わせることにより実現する.そのために,まずは高さ制御と群制御を合わせた浮遊球群の高さ制御機構と,高さ制御と平面移動制御を合わせた浮遊球の空間移動制御機構を実装した.また基礎実験として,浮遊球の高さと風速の関係や球の高さと平面移動による球の影響を調べる実験を行い,キャリブレーションに必要な最小値や,平面移動する際の制限を求めた.
タブレットやスマートフォンなどの電子機器は,仕事現場での専用の機器としても利用され普及している.しかし,これらの機器の操作は手を使うものが一般的で,手が塞がる作業や,手の衛生を保つ必要がある現場では利用に制限が生じる.我々は,手を使わずに電子機器の操作を可能とする靴型ウェアラブルデバイスを提案する.具体的には,電気信号の変化を検出して,特殊な靴を履いたユーザの足によるジェスチャの認識を行い,認識したジェスチャを電子機器の操作命令に変更して機器に送信する.これによりユーザはハンズフリーで電子機器の操作をすることが可能となる.本稿では提案システムの概要と構成,プロトタイプの評価,またその評価結果の一部を反映した開発中のプロトタイプ改良案について述べる.
近年ダンスの義務教育化やダンスアイドルの人気など、人々のダンスへ対する興味関心が高まってきている.しかしダンスは既存の音楽や動画に合わせて演技をすることがほとんどであり,ダンサー自らが自身の動きに合わせてリアルタイムに音や映像を変化させたり,会場の演出をするような演技はほとんどない.そこでマルチメディアを演出するためのディバイスを提案する.ダンスの中でも他のダンスに比べて手の動きが特徴的であり,手の動きが映えるジャンルとして「LOCK」というジャンルに対象を絞ることにする.その演者がこれを身につけることで様々なセンサから動きの速さや力の入れ具合を認識し,それを元にマルチメディアの総合的な演出を演者自身でできるようにする.
近年,様々なメディア技術の発展,プロセッサの小型化,パーソナルファブリケーションの広まりによって,フィジカルコンピューティングやモノのインターネットといった発想の実現が広まっている.環境に対して動的な適応性や,プログラミング可能な機能を人間の周辺環境にある物質に取り入れていく研究は盛んに行われており,建築物に対しても,そうした発想を取り入れる報告がなされている.一方で都市空間には多くの情報が詰め込まれ,発信の仕方も多様化している.しかし,対話性を持ったメディアは少ない.本稿では自然光を利用しつつ,周辺環境や利用者に応じて動的に適応するモジュール構造を持ったスクリーンウォールのプロトタイプを制作し,提案する.制作したプロトタイプは磁石によって連結,取り外しが可能であり,接続された全モジュールがソフトフェアによって制御可能となった.
一般に,複数人の会話では,頻繁に発話する人とあまり発話しない人がおり,発話の少ない人から十分な情報が得られないことがある.また,話す人がより話し,会話が一方通行になりがちなことがある.そこで本研究では,そのような会話をコントロールし,聞き手になりがちな人に話すチャンスを与え,発話の多い人には他者との発話のバランスを考慮しながら会話してもらえるような,ゲーミングフレームワークを考えている.そのための試みとして,複数人の会話において,ユーザの発話加減(どのくらいの時間,誰に話しかけているか)をリアルタイムに可視化するとともに,採点をしてユーザにフィードバックすることで,ユーザが発話機会を調整できるシステムを開発する.本稿では,そのシステムの構成と機能について説明し,システムの有無による発話量の均衡化の程度について比較実験を行い,その結果を議論する.
書籍スキャンアプリは存在するが,自動撮影機能の性質上,手ブレが発生したまま撮影されてしまう問題や,画像内に書面以外の不要な部分が入り込んだまま撮影されてしまう問題が存在する.本研究では,電子書籍ファイルを個人の手でも制作できるようにするためにApple社のiPhone向けの自動撮影機能付き書籍スキャンアプリの開発を行い,これらの問題についての改善を行なった.このアプリの特徴は,自動的に撮影されるタイミングを,書籍がカメラに写っている状態から書籍を引き上げた時にしたことである.
近年,服飾品にLEDを組み込むことで新しい表現/日常の行動を支援する様々な研究開発が行われているが,既存の服飾品の魅力を拡張するアプローチはほとんど行われてこなかった.本研究では,特に石型のジュエリーパーツに焦点を当て,LEDを用いてそのきらめきを拡張するシステム「Sparklry」を提案する.具体的には,(1)既存のジュエリーパーツ,(2)遮光素材に施した微細なスリット,(3) LEDアレイを組み合わせることによって,LED光の量や形を制御し,ジュエリーパーツ上で微細なきらめきを生成する.本論文では,ジュエリーパーツとしてスワロフスキーを用いたプロトタイプ作成/予備実験を行い,各要素の組み合わせによるきらめきの表現力を確認した上で,応用例としてイヤリング型デバイスを試作した.
ダーツ投擲といった,運動の繰り返し精度が競技の結果に大きく影響を与えるようなスポーツにおいて,利き腕の手首に装着することで練習中にフォームをチェックすることのできるウェアラブルコンピュータを考えた.ダーツを投げる直前までの回転運動を3軸角速度センサにて計測し,角速度時間積算による回転角度の推定をベースとして,反復動作の精度を表現する特徴量の検討を行っている.
四肢障がい者が一般的なキーボードを用いたパソコン入力操作を行う際に,短時間に手を大きく移動させる必要があるキー入力操作を補助する腕時計型デバイスを提案する.このデバイスでは,手首をキーボード手前のスペースに固定した状態で行える小さな運動を加速度3軸,角速度3軸のモーションセンサにて取得し,認識処理を行うことで,ホームポジションから手をほとんど移動させることなくショートカットキー等の入力を行うことができる.
スポーツや楽器演奏といった身体運動では,力みが生じることによって様々な弊害が発生する.そこで本研究では高感度な運動センサにより,力みによって生じる物理的な振動を捉えることで,身体への力の入り具合の推定を試みた.その結果,3次元角加速度ベクトルの軌跡長積算値を用いることで,力みの有無を判断できる可能性が見いだされた.
本研究の目的は,モーションキャプチャで取得した3Dモーションデータを用いてダンスの振付創作を支援するためのシステムを開発することである.本研究では,ユーザが選択した基本動作に,複数の身体部位動作を自動で組み合わせて短い振付を生成し,3Dアニメーションでシミュレーションを行うシステムを開発した.本システムはタブレット端末上で動作し,基本動作や合成する身体部位をタッチ操作で選択することができる.生成できる振付のバリエーションを増やすため,合成に使用する身体部位を6種類に細分化し,合成タイミングの調整を行っている.また,不自然な動作が生成されにくいように足,腕,胴体の接地状態を考慮し,制約付けによって合成の可否判定,解除,タイミング変更を行う.生成された振付の合成動作と合成タイミングは後で手動で調整することができる.本研究で提案した制約の有効性を確認するため,制約を用いた振付と用いていない振付を生成し比較する実験を行った.その結果,本システムの制約は自然な動作を生成するために有効であることが確認された.
近年,ロボットが医療や家庭など,身近な場所で使用される機会が多くなっている.本研究では,ロボットが人間に受け入れられるにはどのような特性,振舞いを行えばよいかについて,ロボットの振舞いの”生物性”という観点に着目する.先行研究では,ロボットの生物性が高くなるにつれ,好意度が上昇することが示されており,我々は,ロボットの生物性が高くなると,許容度が上昇すると仮定した.本稿は,本実験の前に行う予備実験結果について分析,考察したものである.予備実験タスクとして,机上の物体をロボットが捕獲するまでの振舞いに生物性を実装した.振舞いは,反応時間,蛇行,減速,加速,停止方法の5条件,計24水準で,生物性,親近性について問うものである.予備実験の結果を元に,本実験で使用する生物性の高い水準を選定し,本実験の計画を述べる.
人と機械間においてコミュニケーションを図る際の手段として,皮膚電位を用いる皮膚電位軌跡(skin potential tracker: SPT)の提案を行う.皮膚電位の指標である皮膚電位水準(skin potential level: SPL)をY軸に,皮膚電位反射(skin potential reflex: SPR)をX軸にとり,その時間変化の軌跡をプロットする.その軌跡のことを皮膚電位軌跡(skin potential tracker: SPT)と名付けた.実験の結果,SPTがプロットされた領域によって被験者の心身状態の判別を簡易的かつ視覚的に行うことができることがわかった.さらに,このSPTを利用したゲームの試作を行い,人と機械のインタラクションの実現を試みた.
近年,テキスト情報を介したコミュニケーション技術が幅広く活用されている.しかし,これらのテキスト情報によるコミュニケーションでは,絵文字や顔文字といった表現の工夫がなされているものの,対話におけるうなずきや身振りなどの身体性が活かされていなかった.そこで,電子メールなどのリアルタイム性を求めないコミュニケーション場面を想定し,音声合成による合成音声からCGキャラクタに身振り等の引き込み動作,テキスト情報から言葉の意味に対応した情動表現を生成し,ユーザの思いを伝えるメッセージ読み上げキャラクタシステムを開発している.
タッチパネルを操作する指に触覚刺激を呈示する代わりに,端末を把持する指や掌に触覚刺激を呈示することでハードボタンの押下感や凹凸感を再現する触覚情報呈示端末を開発した.仮説として,タッチパネルの操作に応じて変化する視覚情報とともに端末を把持する手にピストンによる触覚刺激が呈示されることで,実際には刺激が呈示されていない端末を操作する手の指にもその触覚情報が知覚されることが考えられた.そこで,ハードボタンの押下感呈示アプリケーションを開発して実験的に仮説を検討した結果,7名中4名の被験者が把持する手に刺激を与えているにもかかわらず,操作指にも何らかの触覚情報を知覚していた.提案した刺激呈示手法により,触覚刺激呈示場所を代替するだけでなく,錯覚的に操作指に触覚情報を与えられる可能性が示唆された.
人類は,これまでに多くの進化を繰り返してきた.しかし,その一方で,多くの機能も失ってきている.本研究では,その失った機能を取り戻すための試みとして尻尾に着目した.動物のに,現代人の持つ機能を大きく阻害せず,かつ直感的に動作可能な尻尾に着目した.尻尾は,現代人にもある臀部の筋肉により動いている.また動物の尻尾には,その動物自身の感情を表す機能があるとされている.そこで我々は,自己表現や感情表現を行うするといった人間の本質的な欲求を現実世界で満たすことを目的とし,達成するために保持していたものの,人類に至る人類が進化の過程で失ってしまったた器官機能を取り戻すことを目的にし,好きなときに自在に動かすことができるウェアラブルな尻尾型I/Oデバイス:『義尾』を提案する.本稿では,入力に関する臀部筋電位の測定と動作実験,及び,義尾の実装について報告する.また,義尾の出力部のアプリケーションのために,尻尾の動きと感情表現についての予備調査を行った.
近年,スマートフォンやタブレット機器を用いたARサービスが広がりつつある.そこで,我々はARコンテンツに触ることができる力覚提示タブレットを開発した.本研究では,ヒトの触感覚の時間的な順応を利用した3自由度力覚提示手法と,最適化計算手法を利用した安定な張力分配計算手法を提案し,タブレット機器での3自由度の力覚提示を実現した.これにより,実空間に重畳した仮想オブジェクトに対し,機器を持ったまま廻り込む操作と,タブレット機器の背面側の広い操作領域を利用した3次元空間操作と共に,仮想オブジェクトの形や性状を,3自由度の力覚として感じることが可能になった.本稿では,提案システムの構成について詳細に説明する.
バイオリンの練習曲の練習における意欲を保つことは一般的に難しい.多くの練習曲は単調で,飽きられやすいためである.そこで本稿では,ポピュラーミュージックなどの練習者が好んで聴取している楽曲に対して,基礎練習のための練習曲の要素を含んだ伴奏を自動的に編曲するシステムAmuse étudeを提案する.本システムが編曲する伴奏を好みの楽曲に合わせて演奏することで,楽しみながら基礎練習を行えるようになることが期待される.本稿では,システム構成と編曲手法を説明し,ユーザスタディによって提案手法の有用性を評価する.実験の結果,本システムは従来の練習方法に比べ,練習意欲を向上させる可能性があることを示す.
企画や開発を行う場面で特定のテーマや既存の題材をもとにアイデアを新たに考える際,発散的思考技法がしばしば用いられる.しかし,このような技法を用いても,生成されるアイデアは思考者の固定観念による束縛を受け,その外側にある新奇なアイデアを得ることは依然として難しい.この問題に対して本研究では,代表的な発散的思考技法であるブレインストーミングを,アイデア生成の手段としてではなく,思考者が持つ固定観念を発見する手段として使用し,その結果をもとにさらにアイデアを拡げることを支援する,新規な発散的思考技法BrainTranscendingを提案し,ユーザスタディによりその効果を検証する.
人の自発的なまばたき反応は外的な視聴覚情報に対する注意過程に緩く連動している.特に,人に再現性の高い注意を引きつけることのできる動画は結果的に視聴者間でのまばたきを同期させることが知られている.本研究では,動画を再生している間のまばたきを自動的に測定し,その同期の程度を算出するシステム,AMSES(Automatic Measurement System of Eyeblink Synchronization)を報告する.このシステムは,従来は手作業で行われていたまばたきの分析をリアルタイムで処理することを可能にし,安価な視線検知デバイスを利用することで,高価な視線検知デバイスを利用する手法と比較してはるかに簡便で安価に解析を行えるという特徴をもつ.今後,まばたきの同期パタンの媒体(プレゼンテーション,映画,テレビCM,ウェブ広告など)による違いやコンテンツの種類による違いを明らかにしていくために本システムが活用されていくことが期待される.
クラブやライブ音楽会場において観客らが音楽に合わせて踊る/体を動かすなどの身体活動を収集し,それらの活動量に応じた映像/照明として提示することにより観客が盛り上り感を共有するシステムを試作した.近年スマートフォンやBluetoothデバイスで広がりつつある身体活動センシングを音楽会場に適用することで,音楽体験の向上をめざす.
近年,プロジェクションマッピングや体験型シアターである4DXシステムを利用し,映像にインタラクションを付加することによってより臨場感のある映像表現が可能となっている.しかし,映像の臨場感を家庭でも簡易に楽しめるシステムは少ない.本研究ではopenframeworksとArduinoを用いてユーザが用意した映像を検知し,特徴的なシーンに合わせて温度や振動などを自動で制御し呈示することで,映像の臨場感やエンターテイメント性を付加できるシステムを提案する.
本稿では,Bluetooth Low Enegy(BLE)によるパッシブな近距離無線通信技術を用いて,実店舗とECサイトを繋いだ双方向の商品レコメンドを行うシステムを提案する.本手法では,BLEに対応したスマートフォンを持つユーザが,実店舗の商品棚等に配置するBLEモジュールに近づくことで実世界での行動を取得する.この情報をレコメンドアルゴリズムの一部に組み込むことでwebと実世界の行動が融合した商品レコメンドを実現する.これにより,ユーザのECサイトにおける商品購買の過程で,自分がかつて実世界で興味を持った商品に関連するものを推薦することが可能となる.また,実世界においてもECサイト上の行動をもとに,興味のある商品が近くにあることを通知し,購買のきっかけを提供することができる.
自動車に備え付けられた安全運転をサポートする様々なシステムは,今日では販売されている車両に多く装備されるようになった.しかしながら,これらのシステムは主に自動車のみに備え付けられ,自動二輪車や自転車には備え付けられていない.本研究では,二輪車の安全性の問題点について検討した上で,二輪車に必要な安全性向上システムのための基礎検討を行った.これによって,安全性向上システムを二輪車に装備するための問題点や検出器を生成するにあたる課題が判明した.さらに、本稿では,自動二輪社の車体後部、ライダーのヘルメットへの装着の二種の取り付けの状態の考察を行った.
In this paper, we propose a rapid motion retrieval technique using Dynamic Time Warping.Frames of motions are represented by feature vectors whose elements are integer values. The number of thefeature vector dimension is reduced by using the Principal Component Analysis method and values of ele-ments in the vector are quantized into two bits. The similarity matrix between frames of motions representedby the feature vectors is generated for rapid calculation of Dynamic Time Warping. Preliminary experimentsare conducted to nd the optimum dimension number of the feature vector by evaluating the motion retrievalperformance. Comparative experiments with existing methods have proved that our proposed technique cancomplete retrieval tasks more than 30 times faster than the traditional Dynamic Time Warping method andshown almost the same level of precision and rapid calculation time as the method described in [1] using thek-d tree algorithm.
音声によるコミュニケーションが困難な子どもたちのコミュニケーション支援の一環として、音声認識を用いたスケジューラを提案する。われわれはこれまでに、聴覚障害児・者のコミュニケーションを支援するため、会話の内容を音声認識し、その結果を絵カードや写真で表現するコミュニケーションツール(タブレット・アプリ)の開発を進めてきた。本研究では、このコミュニケーションツールを発展させ、音声認識によるスケジューラを開発する。本スケジューラの機能はTo-Do登録・確認・完了の3つであり、これまでにTo-Do登録と確認機能の基本部分を実装した。
近年,e-learningにインタラクティブ性を導入するために,html5やJavaScriptが利用されるようになった.また,グラフィックプログラミングを支援するJavaScript APIであるWebGLの技術により,Webブラウザ上で人間らしく振る舞うCGキャラクタのアニメーションを表示することが可能となっている.Web上で利用される講義動画形式のe-learningは,これらの技術の発達に伴い,インタラクティブ性の向上が望まれる.本稿では,モーションキャプチャ装置によって取得された,講義を行う講師のモーションデータを利用した,Web上で3Dアバタがインタラクティブな講義を行うe-learningシステムを提案する.講義動画の代わりに3DCGの講師アバタを利用することで,静的な講義アーカイブをインタラクティブなコンテンツに変更することが可能となる.本システムの開発を目的に,モーションキャプチャ装置を利用して講義の3Dモーションを撮影し,短い講義データを作成した.また,作成した講義の3Dモーションデータを処理し,Webブラウザ上で3D講師アバタによって講義が行われる視聴システムの開発も行った.
本研究では,ビリヤードを用いて作曲するシステムを作成した.音楽は通常,楽器によって生成されるものであるが,ビリヤードの道具にセンサをつけ,ゲームを楽しみながらそのインタラクションとして音楽が生成されるシステムを提案する.
演示プログラミングとは,作成したいプログラムの動作をユーザがコンピュータに対して演じて見せて,そこからコンピュータが自動的にプログラムを作成することである.この演示プログラミングをプログラミング学習に利用することを本研究の目的とする.学習の題材は迷路ゲームとし,演示プログラミングによる生成されたプログラムが,学習者のプログラミング理解度を向上させるかを検討する.
屋外で使用するパーソナルロボットにはユーザに対する自動追従と,ユーザが自らハンドリングする二つのモード間をシームレスに切り替えるシステムが必要である.現在このようなシステムを簡単に実現できるユーザの接近やタッチをロバストに識別できるセンサは存在しない.この研究ではユーザを電磁場で包み込み,その電磁場の変動からユーザの行動を選択的に検知するセンシング技術を提案する.センサを取り付けたロボット模型に対するユーザの接近,タッチ,立っている方位の情報が検出できることを明らかにした.
近年、HMDの発達により、VR世界の映像を目の前に映し出すことであたかも自分がVR世界の中にいるかのような感覚をもたらすことが可能になった.そのため、HMDを利用してジェットコースターを体験したり、仮想の家の中を自由に探索するといった仮想体験をリアルに再現することができる. HMDの映像に加え、力覚提示装置を併用することで、視覚と力覚の二つの感覚を利用してより高度にVR世界に没入することができる.ユーザが自然にVR世界の物体に干渉するためには、力覚提示装置がユーザの動作を制限しないウェアラブルな装置であることが望ましい.本研究では、HMDの併用を前提とした、ユーザの両手に力覚を与えることで「仮想物体を両手で掴む動作」を実現するウェアラブル手首力覚提示装置“SPIDAR-W”の開発を行う.
複数の演技者が同じ動作を同時に行っていることが求められる競技ダンスにおいて,動作の同一性をリアルタイムにて評価する腕時計型コンピュータを提案する.3軸角速度合成ベクトル長の時間変動についてパターンマッチングを行うことで,センサデバイスの装着位置を強く意識することなく気軽に利用できるシステムの検討を行った.
本研究では,楽器演奏を用いた音楽によるコミュニケーションを支援する.そこで,演奏が容易で誰でも演奏することの出来る,双方向通信可能な楽器型コミュニケーションデバイス「Cajam」を提案する.Cajamは2人のユーザが同時に使用することを想定している.Cajamの筐体は乳白色のアクリルと木で構成された箱状の打楽器である.Cajamのアクリル面は打面インタフェースであるとともに発光するフィードバックエリアであり,Cajamの天板は振動のフィードバックエリアである.Cajamの打面を叩くと,叩いた箇所と他方のCajamが発光し,ユーザに光のフィードバックを与えると同時に,相手Cajamの天板のフィードバックエリアを振動させ,ユーザに振動のフィードバックも与える.これらの,音に加えた光と振動の要素により,インタラクションをより豊かにし,コミュニケーションを円滑にすることを目指している.
本研究は,スケートボードの基本技術を短期間で安全に上達することができるシステムを提案する.スケートボードに乗るためには,車輪の動きと板の傾きを滑走する中で制御するため,高度なバランス感覚が必要であり,バランスが崩れると転倒をするなどの危険が伴う.また,板の先を大きく左右に振ってスケートボードを推進させる「チクタク」という基本技術は,大きな重心移動を伴うため初学者がはじめに直面する習得困難な技術であるとされている.そこで,本研究ではスケートボードの危険性とチクタクに着目し,大きな重心移動を伴う推進動作を安全に習得するためのシステム「Tick-Tack Board」を構築し,初学者の上達を支援する.Tick-Tack Boardは,板の裏面前方に横向きの車輪,後方に振り子運動の支点となる半球を取り付けた構造のスケートボード型インタフェースと,これらの装置と連動して変化する足下の疑似路面映像で構築されている.ユーザは,Tick-Tack Board上で板を左右に傾けたり,半球を支点に振り子運動を行うことができる.そのため,板の傾きや振り子運動に必要な重心移動を,連動して変化する足下の映像を見ながら段階的にトレーニングすることができる.
人と人の対面コミュニケーションは,言語情報と共に相手の表情や身振りなどの非言語情報を交換する豊かなコミュニケーションである.また,現代の遠隔地コミュニケーションは,対面コミュニケーションと同様な表情や身振りなど視覚情報の交換も可能になり,豊かなコミュニケーションが実現している.本研究では,現代の遠隔地コミュニケーションの視覚情報に含まれない非言語情報に着目し,対面コミュニケーションにおいてのみ可能であった”ぬくもり”を交換する双方向コミュニケーションデバイス「ぬくもり通信」を開発する.ぬくもり通信は卵形のインタフェースで様々な色のLEDが光る仕組みになっている.この光は加速度センサで検出した傾斜によって発光デバイスの発光状態を制御し,フルカラーで光るシステムである.卵形の半分から上は自分の傾けて変化させたLEDの色,卵形の下半分は通信相手の傾けて変化させたLEDの色が反映されるようになっている.相手の色に合わせるか合わせないかの選択がデバイスの色に反映するのでお互いの思いやりの気持ちの量が判断できる.この思いやりの量をカウントし,一定値を超えるとヒーターが作動することで卵形インタフェースが温かくなる仕組みになっている.対人でしか感じられないぬくもりを仮想空間で交換し,双方向のより親密な遠隔地同期コミュニケーションの実現と,遠隔地コミュニケーションにおいても対面コミュニケーションのような豊かなコミュニケーションを目指す.
接線曲面は,空間曲線の接線の集合で構成される可展面であり,車体や船体,衣類のデザインに応用されている.接線曲面は複雑な構造を持つものが多く,2D画面での表示からはその形状を理解することが困難である場合が多い.本研究では,ボリュームディスプレイ上に接線曲面を表示するためのソフトウェアツールを提案・実装し,接線曲面の表示におけるボリュームディスプレイの有効性の評価を行った.
本稿では,電子黒板と学習者用端末を用いる学習環境を構成するソフトウェア群(システム)の開発について述べる.本システムでは,一枚の板書面,紙面を基本単位としたデータ交換を軸に,電子黒板ソフトウェアと学習者用端末上で動作するソフトウェアの連携を強化することを目標としている.
本研究では,アニメーションとKinectを使用し運動イメージにより投球練習を支援するシステムを開発した.開発したシステムでは,ボール投げのスピードの上昇を目的とした.Kinectを用いて練習をすることによって,体験者自身の動きをその場で見せ,動きに対応させたエフェクトおよび音声を提示した.その結果,運動記録の上昇と投げ方に良い効果が見られた.