従来のビデオ会議システムにおいて,ユーザはディスプレイによって隔てられ別々の空間にいるという印象を強く受けるため,相手から見られているという感覚は希薄である.本研究において我々は眼球動作を提示する眼球ロボットと相手の映像とをスクリーン上で合成する遠隔対話システムを開発した.相手の眼球に見立てた眼球ロボットが同一空間に物理的に存在することによって相手から見られている感覚が強まり,ソーシャルテレプレゼンスの強化が期待される.
人は運動を行う際,筋肉を収縮させることによって関節トルクを発揮し,運動を実現させている.筋収縮の度合いである筋活動度を推定できれば,人が主観的に感じる負担感を予測できるようになることが期待される.そこで本研究では,オフラインで計算した代表点の筋力推定結果を線形補間することで構築したデータベースを利用することで,リアルタイムで筋負担を可視化することができるシステムを構築する.また本棚のレイアウトサジェスチョンを指向したアプリケーション例について報告する.
空間を共有している感覚をより高める遠隔コミュニケーションシステムの簡易な実現のために,Symbiotic Reality (SR)に基づく共生型空間共有システムの設計開発方法論を定式化する.また,提案した設計開発方法論に基づき,鏡型の空間共有システムを設計し,その効果を議論する.本稿では,このシステムを実際に実装し,研究所公開において公開実験を実施した様子も併せて紹介する.
触覚フィードバック機能を搭載したペン入力機器用スタイラス”VibraPen”を開発した。入手の容易な部品で構成され、端末との接続はオーディオインタフェースを用いているため簡便で、モバイル用途に向く。VibraPenを用いることで、スタイラスが触れている仮想物体の材質の違いや、凹凸感、仮想力覚を表現することが可能である。GUIへの質感の付与、仮想現実感の提示、操作支援などの応用が期待できる。
本研究では,ウェアラブル端末,特に腕時計型端末を用いてキャラクターエージェントとコミュニケーションを行うシステムを開発した.コミュニケーションはジェスチャ等に基づく非言語的なものを想定している.提案システムは,自律的に動作するキャラクターとコミュニケーションを行うAUTOモードと,キャラクターを介して遠隔にいる人間の「気分」が提示されるLIVEモードとから成る.腕時計型端末を用いることにより,ユーザはキャラクターと一緒に生活している感覚で,任意の場面にてキャラクターとのインタラクションが可能となる.本稿では提案システムの実装方法および動作について述べる.
歌唱合成ソフト“初音ミク”は,バーチャルアイドルとして人気を確立しており,初音ミク主演のライブが催されている.しかし現在催されている初音ミクのライブは,あらかじめ用意された映像を流しているだけであり,歌手と観客とのインタラクティブなライブを実現できていない.また平面スクリーンでは前方向以外の映像が無く,観客の視点が一方向に固定され、観客が多方向から視聴するアリーナ形式のライブを行うことができない.本稿では,リアルタイム歌唱生成システム“HANAUTAU”と立体顔形状ディスプレイの組み合わせによって歌唱と歌手の動作を実時間生成し,多方向からの視聴に耐えうるインタフェース“Miku Miku Face”を提案する.
針金ハンガーを頭にかぶると不随意に頭部が回転してしまう現象はハンガー反射として知られ、手首や腰などの頭部以外の部位でも類似現象が確認されている。皮膚圧迫のみで力覚を提示可能なため、ハンガー反射は力覚提示装置への応用が期待されているが、高品位な力覚提示装置の実現のためには提示力覚の強度調整が必要であると考えられる。我々は手首でのハンガー反射時に振動提示を行うと、体験者が感じる力覚が増強される現象を新たに見出した。本稿では今回見出された振動による提示力覚増強の詳細を報告する。ユーザーテストの結果、被験者は振動提示の時のみ力覚の増強を感じ、振動提示によって力覚の強さの制御が可能であることが示唆された。
本報告では,モノに様々な情報や機能を仮想的に持たせて操作することを可能にするシステムMonoGotoを提案する.たとえば,あたかもモノに音声を吹き込み,置いた場所に応じてその音声を再生したり,モノの位置を記録し,その位置への配置を鍵としたりするなど,モノと場の関係を定義することで様々な機能を果たすことができる.本システムの特徴は,利用者がディスプレイを一切見ることなく,モノを動かすことだけで操作を実行できることにある.実装したプロトタイプシステムでは,操作面上方に設置したカメラでモノの位置と角度を取得すると共に,音声の入出力機能を備えている.MonoGotoを用いることで,日頃,人が普通に行っているモノを介した思考やコミュニケーションを支援,拡張することができると考えている.
我々は,チェッカパターンを重ね合わせることで秘密画像が復号される潜像技術,チェッカパターンキャリアスクリーン画像を提案している.また,チェッカパターンの重ね合わせの他に市販のコンパクトデジタルカメラを利用した復号も可能である.一方,コンパクトデジタルカメラを用いて復号する場合,キャリアスクリーン画像を低解像度で出力する必要があり,潜在化処理が必須となる.この潜在化処理として,誤差拡散法による潜在化処理を提案している.しかしながら潜在化効果は秘匿に用いるカバー画像に依存し,十分な潜在化効果が得られない領域が存在することが確認されている.本研究では,このような低潜在化領域の原因が,特定の誤差拡散係数によるものではないことを示す.また,低潜在化領域を生かした情報提示法を提案する.
本稿では,拡張現実感(AR)を用いてロイヤルティ・ポイント(ポイント)を可視化することにより,顧客が購買の際に感じるポイントの取得感や満足感を向上させるシステムについて述べる.従来,ポイントはレシートやポイントカード等で確認していたが,数字で表現されるため,どのくらい貯まったか実感を得にくいという問題があった.そこで,ポイントを拡張現実上でレシートとポイントカード上に重畳表示されるコインとして表現した.このコインはレシートとポイントカード上にそれぞれのポイント数に応じて,積み重ねて表示される.また,レシートとポイントカードを同時に手にすることにより,レシートのコインがポイントカードの方へ自動的に移動する.これにより顧客は,ポイントの取得感や満足感を得ることができる.
ぬいぐるみに生き物らしさを付与する提案の多くは,ぬいぐるみに音声や手足および眼球の動き,呼吸や心拍に伴う動き等を付与するものであった.しかしこうした機能は不完全に実現するとかえって実在の生物との差分を際立たせ,その結果ぬいぐるみに対する没入感を損なう危険があった.そこで我々は実在の生物との差分が際立たない「控えめ」な動きの提示によってぬいぐるみに生き物らしさを付与する構成のひとつとして,目の表面の涙によって生じる光のゆらぎを表現する手法を提案してきた.今回は生き物らしさをより強く感じる光のゆらぎ方を調査するため,振幅と周波数の異なる複数のゆらぎを比較した.
作曲家が作曲を行う際には,大まかな楽曲の構想を考え,メロディの発想を行い,経験的な知識と音楽理論を背景に制作中の曲を検証し,修正を繰り返し完成させていく.作曲初学者は作曲や,音楽理論の知識を十分に持たないため,完成度の高い曲の作曲は困難である.本研究では,それらの知識を持たない人でも完成度の高い曲の作曲が可能なシステムの提案を行う.本システムは,既存の楽曲を分解し,作曲に利用することで,作曲知識や音楽理論の支援を行うものである.これは,素材となる楽曲を選択し,特定のパートの数小節の旋律を作曲する曲の断片として並べることで曲の旋律を構成し作曲を行う.並べた後の旋律は,ピアノロール型のインタフェースを用いて,試聴しながら音高やタイミングの修正を繰り返し,完成度を高めていく.また,オリジナルの旋律を楽曲に混ぜると,オリジナル楽曲の作曲も可能である.作曲初学者が慣れないうちは既存の楽曲を素材として用い,次第にオリジナルの旋律を増やしていくことで,自立した作曲が行えるようになると想定している.
朝の身支度や服の試着時において,自分の背面や側面の姿を確認しながら作業を行うのは難しい.そこで本研究では,壁に固定された回転するカメラアームによって自分を任意の方向から撮影するシステム「Satellite Eyes」を提案する.ユーザはタッチディスプレイを操作することによって見たい位置にカメラを移動させ,撮影された自分の姿を見ながら試着や整髪を行うことができる.本論文では提案システムの概要と開発したプロタイプについて述べ,想定される利用シーンについて紹介する.
糸電話は二人のユーザを糸で結び,会話ができる玩具である.また,音声に加えて,糸を張るという行為から,自らの力を相手に伝えることができる.しかし糸の長さに限界があり,限られた範囲でしか利用できないという問題がある.そこで我々は,糸電話が持つ特性をそのままにし,ワイヤレス化することによって,物理的な制約を受けないバーチャルな糸電話を提案する.ワイヤレス糸電話は,糸と紙コップを介し,音声情報及び糸を引っ張った際の力覚情報をワイヤレスで相手に伝えることができる.本稿では,糸電話をワイヤレス化するための手法について述べ,また,本デバイスの体験者に対してのアンケート調査結果について報告する.
MR Coral Seaは,複合現実感(MR)を用いた小さな水族館のメディアアート作品であり,MRの映像体験と「サンゴディスプレイ」を介して,バーチャルな魚と遊ぶことができる.サンゴディスプレイは,魚と手に反応して振動と光を提示する.サンゴディスプレイは,現実空間に物理的なフィードバックを提示することでMR体験を多感覚的に増強し,バーチャル空間での事象を直接的に体感できる「フィジカルMRディスプレイ」である.本システムでは,投影型のMR映像とサンゴディスプレイとを併せたマルチモーダルなインタフェースにより,プレイヤと共に周囲の観客も一緒に楽しめるMRエンタテインメントを実現した.
近年,安価で高品質な情報環境機器が出現し,これらを用いたディジタルコンテンツの試行が行われている.我々はモーションセンサと頭部搭載型ディスプレイなどを用いて,身体的インタラクションと認知的インタラクションを持ったディジタルコンテンツの開発を行った.開発はプロジェクト型で行われ,成果物はユーザからの評価をフィードバックすることによって改良を行うこととした.今回は,このような手法で開発された3つの連続したディジタルコンテンツとして,「日本文化を伝えるための身体性を伴ったディジタルコンテンツ」,「蟻の視点を体験するためのディジタルコンテンツ」,「クラゲの感覚を体験するためのディジタルコンテンツ」についての報告を行う.
携帯端末での地図による道案内システムは多くのユーザに使用されているが,地図空間と現実空間のマッピングを必要とするため認知的負荷が高い.本稿では,現実空間にAR表示された擬人化エージェントがジェスチャを用いて道案内を行うシステムを提案し,エージェントの道案内ジェスチャを生成する際に採用する視点について検討を行う.携帯端末向けに本システムを開発し,擬人化エージェントがSurvey Perspective(地図のような上空からの俯瞰視点)によるジェスチャを使用する道案内とRoutePerspective(実際にその経路を歩いていくような歩行者的視点)によるジェスチャを使用する道案内に対し,白紙に地図を描くタスクおよびアンケートによりユーザの案内理解度を比較した.参加者20名による実験の結果,Survey Perspectiveによるジェスチャを使用した道案内では,Route Perspectiveによるジェスチャを使用した道案内に比べ、理解度が向上する傾向にあることを確認した.
音楽インターフェースの新しい入力方法を本論文では提案する.静電容量センサーによるジェスチャー認識を用いて,既存の入力インターフェースの拡張と直感的な入力を実現する.静電容量センサ―により,入力センサーへの触る強さ,触る時間,などの触り方の変化で音楽のパラメーターの調整を出来るようにし.またそれにより,既存の音楽インターフェースでは入力しづらかったパラメータ,例えば音のズレ感だったり,音の強弱などを表現することを目標とする.
地磁気センサとコイルを用いた超低周波磁界による通信手法を提案する。超低周波磁界は、身体を透過しやすく、到達範囲を限定しやすいため、生活空間において人の行動を検出する手法として活用することができる。特に、本研究では家具近傍の領域検出手法としての応用を考える。まず、椅子において座った際に情報を提示するシステムを想定して要件を定義した後、関連する各種技術との比較を行った。次に、通信プロトコルの規定、提案手法の静的・動的特性の検証実験を行い、その上で応用可能性として家具とひととの新しい関係性について検討した。
マイクロフォンで音として記録し,ソレノイド型振動アクチュエータで再生することで,身近な触感を再現する手法が提案されている.しかし,再生時の触感は,あくまで記録時の触感でしかない.再生時にユーザの動作を反映させるためには,動作に対応した波形を合成する必要がある.本研究ではなぞり動作時における波形合成の一手法を提案する.
本稿では,ライブ映像と連動可能な新しいペンライトシステムについて検討する.具体的には,ライブ映像及びユーザの動作に合わせてペンライトの発光色や点滅を無線で制御可能なシステムの提案を行う.提案システムは,個々のユーザが持つペンライトと,ペンライト上のLEDを無線で制御する制御PCからなる.ペンライトには複数のマルチカラーLED,加速度センサ,並びに無線通信モジュールが搭載されている.一方,制御PCでは,加速度のセンシング及びLEDの発光色の制御をリアルタイムで行う.これにより,複数のユーザが時間や場所に制約されることなくライブにおけるペンライトの演出を体験でき,かつ,ユーザの動作をインタラクティブに反映することが可能となる.予備実験の結果,約1秒の時間間隔でLEDの点滅や発光色を制御できることを確認した.
本研究WalkingDoodleは,導電性を持つ樹脂と3Dペンを組み合わせて空中に回路を描くことにより,動的な描画物をつくる造形ツールである.3Dペンで自由に描きながらデバイスの電極間を結ぶことにより,デバイスが接続を検知し動作を起こす.動きを伴った造形物から発想を得て線を足していくなど,ユーザと作品が相互に影響を及ぼし合いながら造形することが期待される.本稿ではのWalkingDoodleシステムの設計,実装および体験者の様子と展望について述べる.
シールや圧着はがき,面ファスナーを剥がすという行為には剥がれる際の音や手に伝わる振動,手応え,視覚的変化により独特の快感が伴う.本研究ではこの感覚を拡張し,現実では剥離困難な物体を擬似的に剥がす体験が可能なインタラクティブシステム,剥物館を提案する.剥がす感覚を提示するために電磁石を用い,磁力とその提示時間を制御することにより様々な物体を剥がす手応えを提示する.加えて振動子により振動刺激を,スピーカーから聴覚刺激を,モニタから視覚刺激を提示することで剥がす感覚を実現する.
カメラを登載した模型モノレールをオフィスの天井で走らせることによって,オフィス外の人間がオフィス内の人間と会話することができるシステムを作成した.車輪で移動可能なロボットを利用することにより遠隔地のユーザがオフィスの会議などに参加する試みが近年盛んになっているが,混雑した場所でロボットが自由に移動することは難しいことが多い.邪魔物が存在しない天井を自由に移動できる装置を利用することによって,実用的な遠隔コミュニケーションシステムが実現できた.本システムの利用により,卒業したメンバが部室を訪れる「OB降臨」を手軽に実現することができる.
文章を声に出して読む音読は幼少期に行う事で,社会で必要な表現力や想像力を支える基礎をつくるとされ,小学校では読解の授業で音読が多用されている.音読指導では,文章を読む際に相手が理解しやすいように読み方を調整する能力を重視する項目が多く見られる.しかし,児童が学校の授業以外で,聞き手を意識した音読を継続的に行う事は容易ではない.本稿では児童が音読を行う際に,家庭などでひとりでも楽しく音読ができ,聞き手を意識した音読を促す自律アニマトロニクスを提案する.
本稿では,スマートフォンなどの携帯端末から遠隔操作可能な商品情報配信用デジタルサイネージシステム、WallSHOPを提案する.サイネージには事業者が宣伝したい商品画像が表示されており,ユーザは携帯端末からサイネージに接続でき,自身に割り当てられたカーソルを操作して,関心を持った商品情報にアクセスすることができる.本システムは公共の大画面ディスプレイと個人の携帯端末を活用することで,サイネージを複数人で共有することを可能にした.携帯端末とサイネージを連動させたシステムは従来より提案されているが,基本的にサイネージを1人のユーザがで操作することが想定されており,本システムのように複数人で同時にアクセスすることは難しい.さらに本システムは標準的なWeb技術を用いて構築されているため,携帯端末に別途アプリケーションをインストールせず,標準搭載のWebブラウザだけで実行できるという特徴がある.加えて,WallSHOPは近年提案されたユーザがインタラクティブなデジタルサイネージから影響を受けるまでのプロセスモデルに基づき設計を行い,効果的な広告が行えるように工夫されている.
ドラムは両手両足を使用する楽器であるが,ドラム初学者は手足を異なるタイミングで動作させることに慣れていないため,手足が連動して動くといった傾向がみられる.これはドラム初学者が初めて演奏するフレーズに対し,実際に叩打する感覚を身体で経験したことがなく,手足を動作させる順序がイメージできないためであると考えられる.%別案:タイミングに合わせて叩打する感覚を経験していないため,このため,ドラム初学者は効率的に学習を行うために,予め手足を動かすタイミングを知覚し,演奏フレーズの叩打順序を理解する必要がある.本研究では,演奏フレーズに同期し,演奏者に叩打すべき手足に対して触覚提示を行い,手足を動作させる感覚を経験させることでドラム学習の図る手法を提案し,プロトタイプを用いて有用性の検証を行った.
本研究の目的は,日常の不便なものを便利にするという観点から駅周辺のトイレに着目し,女子大生が自分の状況に適したトイレを見つけ出すための検索システムを提案することである.女子大生のトイレ利用状況とトイレに求める情報を調査し,新宿駅付近のトイレを調査した.これらの結果をもとにBelleLavano:トイレ検索システムを作成し,このシステムを用いて実験を行った.その結果,我々が提案する「目的から検索」の方が,従来の検索方法である「場所から検索」よりも状況にあったトイレを利用しやすいことがわかった.BelleLavanoの特徴の一つである詳細なトイレ情報を集約した「トイレ詳細ページ」まで閲覧すれば,「場所から検索」でも行きたいトイレを利用することができることもわかった.トイレを選択する際,「トイレまでの距離」というよりは「迷わず行けるか」を基準としている被験者もいた.検索時間の平均値を比較した結果,「目的から検索」は「場所から検索」より有意に短くなった.これらのことより,本検索システムは女子大生が求める情報を取得できる検索システムであると言える.
本報告では,システムが空間の状況を感知し,それを反映した多数の小さいモジュールに基づく表現によって人が思わずゾワゾワ,ビクッと感じてしまう情報環境CreepyWallを提案する.処理は画面上に多数配置したシンプルで小さいモジュールを単位として行ない,モジュール間の規則に基づいた連携によって全体として結果を生む表現を行なう.表現モジュールの大きさや反応の仕方,動き等をうまく調整することで,人が,自身の行動も関わって常に変化する状況を直感的,生理的に知覚できることをねらう.こうした仕組みを通じて,人の気配を感知,活用しながら雰囲気を作り出すことのできる「アンビエント・コンピューティング」の実現をめざす.
ParallelPaintはタブレットと導電性筆を用いた描画促進ツールである.通常絵の具などを用いた描画は静的であるが,本研究は描画した線にアニメーションが重畳され,ユーザの描画時の発想を支援する.本システムはタブレットを画板として用い,その上に紙を置くことでディスプレイの情報を紙に透かして重畳できる.さらにタブレットへの入力と紙への描画を同時に行うため導電性筆を用いる.普段絵を描くように導電性筆に絵の具を付け紙に描くことでタブレットが筆の位置を認識し,筆の動きに合わせて様々な情報を映し出す.
本研究の目的は,対話により体験情報を外在化し,記録として蓄積するための協創環境の実現である.この環境は,計算機に馴染みの薄い話し手を対象に,話し手が体験情報を一方的に語るのではなく,聞き手も積極的に関与することで引き出して外在化し、協調的に情報を編纂していくための基盤である.本稿では,聞き手が話し手から体験情報を引き出すインタラクションのモデルとして,高齢者の土産話に着目した.ユーザ中心設計の観点から一人の高齢者に着目し,体験情報の外在化行為の観察およびインタビューを行ったところ,体験情報に関連する資料や情報があることによって外在化が促進されることが示唆された.この知見に基づき,協創環境のデザイン指針を(1)体験情報を外在化するための情報提示機能,(2)外在化された体験情報の記録機能と定め,実装されたシステムを用いてユーザ観察を行うことで有用性について検討した.その結果,聞き手が協創環境から提示される情報を活用することで,双方向性のあるコミュニケーションが実現し,高齢者から体験情報を引き出しながら,それを電子的に記録・蓄積することが可能であることが明らかとなった.一方で,ユーザインタフェースや機能,提示する情報の構造については改善の余地があることがわかった.
ウェアラブルカメラの登場により,装着者の体験を一人称視点で記録し,共有することが可能になった.しかし,このような映像には,映像の揺れによるモーションシックネスや,視野が装着者の姿勢によって制限されてしまう等の問題がある.LiveSphereは,人間の体験を他者に共有しコミュニケーションを行うためのシステムである.装着者の体験は複数のカメラによって全周囲映像として記録され,伝送される.記録された映像は,画像処理によりリアルタイムに回転運動成分を取り除くことで,装着者の頭部運動が分離される.これにより,モーションシックネスが改善されるとともに,装着者と独立した環境の観察が可能になる.本稿では,システムの実装及び評価実験,パイロットスタディをおこない.ヒューマンテレプレゼンスにおけるインタラクションデザインに関する洞察を与える.
本稿では,市販CDのような複雑な音楽音響信号に含まれる歌声に対して,伴奏音に影響を与えることなく歌唱表現(ビブラート・グリッサンド・こぶしなど)の編集を行うためのシステムについて述べる.近年,既存楽曲をユーザが自分好みに編集・加工することを可能にする能動的音楽鑑賞システムの研究が盛んである.なかでも,混合音中の歌声の編集は最も実現が難しい課題の一つであり,既存の歌声の声質を他の歌唱者の声質に直接変換する技術は提案されているが,歌声がもつ特徴的な音高軌跡,すなわち歌唱表現を編集する技術は実現されていなかった.我々は,歌声・伴奏音の分離と歌声の音高推定の相互依存性に着目し,従来独立に利用されていたRobust PCA (RPCA)とSubharmonic Summation (SHS)を相補的に組み合わせることで,両タスクの精度を改善する手法を提案する(国際的な音楽認識コンテストMIREX2014の歌声分離トラックで世界最高性能を達成).この技術を応用して,既存楽曲に含まれる歌声の任意の箇所に対して,任意の歌唱表現(あらかじめテンプレートを準備するか他の歌唱者から抽出しておく)を直感的に付与するためのGUIを実現した.実験により,提案システムの優れた歌声解析精度を定量評価し,実際にGUIを用いて市販楽曲を高品質かつインタラクティブに編集可能であることを確認した.
マウスやキーボードを使用したテレプレゼンスロボットの操作は,使用者に認知上の負荷を与えるため,複雑な情報伝達が必要なコミュニケーションの場での効果的な利用が難しい.この問題を解決するため,のぞき窓を介して人に対峙した際の動きをモチーフにし,手を使うことなく操作が可能なテレプレゼンスロボット,”Cogi”を開発した.このロボットは,今後需要が高まっていく,高齢者の遠隔コミュニケーションにおいて,市販のテレプレゼンスロボットと比較して操作しやすいものであることを確認した.
日本のアニメでは,手前のものを実際よりも大きく描くことにより,人物の遠近感を誇張する表現が使われ,視聴者により強い印象を与えるという効果がある.この誇張を3D CGで実現した手法にE-IMPACTがあり,手描きアニメだけでなく,CGでも人物の遠近感を誇張することが好まれることが分かっている.しかし,実写映像における3次元的な透視変換を考慮した誇張については,まだ検討されていない.そこで本稿では,E-IMPACTの考え方を実写に適用する際の問題点を明らかにし,実写映像において人物の遠近感をリアルタイムに誇張するシステムを提案する.Microsoft社製のKinect for Windows v2を使い,深度情報や人物の骨格情報をもとに人物の骨格構造を把握した.そして,ある関節を基準として手前の部分に擬似カメラを設置する.2つのカメラからの画像を合成することにより,リアルタイムに誇張された映像を実現した.このシステムを展示会で公開し,300人の人に体験してもらった.体験者が誇張された映像を写真に収めたり,身体だけでなく手に持っているものまでも誇張させようとしていたりする姿が多く見受けられ,デジタルサイネージへの有用性が示唆された.
理工系技術に関するワークショップは数多く開催されているが,技術的な関心が薄い層の興味を促すことは難しい.その一方で,エンタテイメント性と学習意欲の向上に関する研究が盛んに行われている.そこで,我々は複数のインターフェースや入力デバイスを使用し,幅広いユーザが楽しんで体験できるエンタテイメントシステム“Rijowarts”を実装した.本システムは技術的な関心が薄いユーザに対して,学習への入り口として興味を持ってもらうことを目的としている.また,お茶の水女子大学の徽音祭(きいんさい)にて展示を行い,200名以上のユーザからシステムに関する評価の回答を得られた.本論文では,実装手法と展示事例,ユーザ評価について報告を行う.
幼児の認知発達、エキスパートの暗黙知、グループによる創作活動などといった創造的認知過程を研究対象とする場合、統制のとれた実験環境が必要な実験的手法の適用が難しく、被験者の生活環境をそのまま利用した観察的手法を併用する事が多い。昨今ではライフ・ログ技術を用いた新しい観察的手法が様々に提案されている。今後は、被験者のメタ認知を支援するためのライフ・ログ視覚化手法が課題となってくると予想される。本論では、モバイル拡張現実ディスプレイへの映像配信を用いた3D自己鏡像提示手法を提案し、また、この手法が被験者のメタ認知をどの様に支援できるかを考察する。
概要:本国の少子化問題は深刻化しており,交際・結婚率の減少が一つの原因として考えられている.近年,パートナがいない人々の多くが出会いの少なさを感じており,お見合いパーティなどの恋愛支援イベントの人気が高まっている.しかし,限られた時間や相手のことを十分に知らない状態では,対話者が自身に好意を持っているか判断することは難しい.そのため,ユーザの多くが異性からのアプローチに対して,不信感を覚えるなど交際への発展の妨げとなっている現状がある.これがマッチング率を下げる要因となり,多大な機会損失を招いている恐れがある.我々の過去の調査では,出会いの場における対話者の心拍情報は自身への好意を判断する指標になりえる可能性を示した.そこで本稿では,自身への好意を判断できることが不信感の払拭につながると考え,好意を判断する指標となりえる心拍情報を光で可視化することで,対話者を判断する新たな指標を提供する“Lovable Couch ”を提案する.
長さを測れるローラ型のスマートフォン用イヤホンジャックアクセサリ,コロコロプラグを示す.ユーザはコロコロプラグをスマートフォンのイヤホンジャックに刺してローラを転がすことにより長さを測り,測った長さをスマートフォンアプリケーション内で利用できる.これにより,数値としてでなくローラを転がす体験として長さを実感することができる.本稿では,コロコロプラグの実装とそのアプリケーションを述べる.
本研究の目的は,HMDと携帯型データ端末の連携方式のデザインである.この目的を実現するため,これまでにメガネ型ウェアラブルデバイスを用いてスマートフォンの画面をAR技術で拡張するシステムOff Screenを提案している.このシステムは,メガネ型ウェアラブルデバイスに表示される仮想オブジェクトを電子端末によって操作可能にした.しかし,カーソルを用いた操作を使用しているため,表示された仮想オブジェクトの操作性が低い,端末相互のシームレスな連携が実現されていない,などインタラクションに関わる問題が存在している.そこで本研究では,このシステムのインタラクションの改善を試みる.本稿では,カードゲームにおけるカードの選択を例としたデザインを行う.提案手法は,カーソルによる操作を撤廃し,電子端末内情報と仮想オブジェクト情報の切り替えをカードの切り替え動作と対応させることで,直感的で容易な操作を実現する.
物理シミュレーションの目的は,現実世界の現象を正確に再現することにあるが,近年はこれを映像表現に応用することが試みられている.そこで本研究は,VFXをポストプロダクション作業の段階において作成することを目的としたビジュアルシミュレーションの開発を行う.本研究が提案するビジュアルシミュレーションは,雷を直感的に操作することを目標とする.本研究が提案する手法は,ラプラス方程式からシミュレーション空間の電位勾配を決定し,それによる進展確率によって雷の大まかな放電経路を生成する.その後,Perlin Noiseを付加することで最終的な雷の放電経路を決定する.また,レンダリング時に放電経路に対してグローを生成し,雷を線光源の集まりと仮定して,3Dシーンのライティングに用いる手法を提案する.
本研究の目的は,鉄道駅利用時におけるベビーカーの体験をユーザの声からアーカイブすることである.著者らは,ベビーカーユーザと,そうでないユーザの鉄道駅におけるベビーカーに関する声を同時閲覧するための,アーカイブコンテンツを制作した.本稿では,このコンテンツのデザイン設計について述べる.本コンテンツでは,体験談を収集するために,Twitterから情報を収集する.得られた体験談には,ネガポジ判定を行い,文章中からキーワードを抽出する.本研究では,ネガポジ判定結果および得られたキーワードと共に,体験談をランダムに提示する視覚化によってアーカイブする.著者らは本研究によって,ベビーカーユーザの鉄道駅に置ける不便性への理解が促進すると考える.さらに,ベビーカーユーザを含む全ての鉄道駅利用者に対して,本コンテンツが,ベビーカーに関する振る舞い方を提案する一種のガイドラインの役割を担うことを期待している.
近年,一般家庭向けにもロボットが徐々に普及しつつある.そこでは,掃除などの家事を支援したり,人とコミュニケーションを取って心を癒したりと,多彩な機能/効果を持つロボットが登場している.一方,多くのロボットは床面を移動するため,日本の都市部のように狭い家屋が多い状況では,「掃除ロボットのために掃除をする」といった状況も生まれ,十分な活用が難しいという問題がある.そこで,本研究ではロボットを配置する場所として壁面に着目し,壁面を移動しつつインタラクティブな情報提示を行う壁時計型ロボット「RoboClock」を提案する.
近年,同期的な感覚刺激を呈示することによって,自己の身体像を変調させる試みがひろく行われているが,それらの錯覚誘導プロセスは基本的に離散的であり,身体像が拡大したり縮小したりするような動的な過程そのものを明示的に呈示するものではない.本論文では,自己接触錯覚の誘導スキーマに加え,固有感覚と視覚情報を同期することで,特定の指が連続的に伸縮するような感覚を誘起するシステムを考案したので報告する.
本論文では,初心者と経験者の間で切り絵作品にどのような差があるかに着目した.切り絵の初心者を対象に,タブレット端末とタッチペンからなる切り絵練習帳とその評価について述べる.切り絵練習帳とは,切り絵の熟練者のノウハウを提供するためのものである.切り絵練習帳には,(1)切る順番提示機能(なぞる順番に枠の表示)」,(2)「適切筆圧提示機能(適切な筆圧でのみ筆跡の表示)及び(3)「切り始めと終わり表示機能(なぞり始め,なぞり終わりの強調表示)」の3つの機能がある.簡単な絵柄と複雑な絵柄の2通りに対し切り絵練習帳の各機能やシステム全体の評価を行った.その結果,各機能及びシステム全体ともに,初心者に対し熟練者の切り絵の仕方を身につけるための効果があった.
近年様々なメディアでダンスが取り上げられており,そうした中で新たなダンスの表現が生まれてきている.ダンスと何かを組み合わせるものが多くその中で「LED」の衣装をまとったものがある.しかし,これらのシステムは楽曲や舞台の進行と同期して発行タイミングを合わせるものが多くシステムが大掛かりであると同時に演者光をコントロールすることが困難である.そこで本研究では動きにあった光り方をするようなアルゴリズムを見つけその動きにあった光り方を提供可能なデバイスを提案する.
マルチタッチ可能なデバイスが一般に普及したことにより,これを利用した様々な直感的操作手法を容易に実現できるようになった.我々は,相対座標系および絶対座標系に基づく2種類の入力方式に着目し,これを切り替えるインタフェース設計を行った.スマートフォンやペンタブレットでは手書き文字入力やイラスト描画が容易であるが,一般的なPCに装備されたトラックパッドでは困難である.これは前者が,入力面座標が画面座標に1対1対応する絶対座標系による入力であるのに対し,後者は,マウスと同じく指の移動量をポインタの移動量に対応させた相対座標系を基準とした入力であることが理由である.トラックパッドでも,絶対座標による入力を提供すれば,手書きによる文字・図形入力などが容易になると考えられるものの,PCの大きな画面をGUI操作するためには現行の相対座標入力が有利である.そこで本論文では,トラックパッド入力において相対座標による入力と絶対座標による入力を直感的に切替える手法である,カーボンコピーメタファを利用したインターフェースについて報告する.本方式では,トラックパッド面に対応して絶対座標入力できる小領域を画面上に設定する.カーボンコピーメタファは,この領域を小さなカーボン紙片とみなして,非利き手でカーボン紙片の移動と固定を切り替えつつ,利き手で移動と入力をおこなう手法である.
本論文では,有用な情報を音信号の非可聴域である高周波帯域に埋め込み,音による通信を行うシステムの開発について述べる.本システムを利用することにより,専用の送受信デバイスを必要とせず,汎用のスピーカー,およびモバイル端末に備え付けのマイクロホンによって通信が実現できる.本論文では,非可聴域へ情報を埋め込む手法と情報を取り出す解析手法を提案し,実験により性能評価を行った.また,タブレット端末上でアプリケーションを試作し,駅でのアナウンスにアナウンス内容のテキストを埋め込んだ音声,および歌詞を埋め込んだ楽曲のデコードを実装した.
本研究では,任意の位置から片手にて起動可能な,大型マルチタッチテーブルトップ向けの仮想マウスを示す.ユーザはこの仮想マウスを,4本の指をタッチパネルに接触させ,手を振るように動かすジェスチャにより起動する.このジェスチャは既存のタッチ操作と競合しないため,ユーザは仮想マウスを大型マルチタッチテーブル上の任意の位置にて起動でき,かつ複数人が同時に起動できる.加えて,この仮想マウスでは,親指と薬指の間の距離を変えることによりControl-Display比を動的に変更できるため,ユーザは素早く遠隔地をポインティングできる.
現在広く普及している2次元コードは,読み取り時に入力部となるカメラとの間に一定の距離を作らなければ認識されないという空間的制約がある.一方,近年タブレット端末等の静電容量式マルチタッチディスプレイの普及に伴い,導電性パターンを接触させ,マーカーのように扱う研究事例が多く報告されている.そこで本研究では,両者を統合し,2次元コードを印刷した紙と導電パターンを印刷した透明フィルムの2枚を重ね合わせる事で,カメラ/静電式タッチディスプレイのどちらからも認識可能な新しい2次元コード「CapacitiveMarker」を提案する.さらに,CapacitiveMarkerを用いた様々なインタラクション手法について応用アプリケーションを通じて紹介する.
本研究では、複数の携帯デバイスを任意に組み合わせて同時に使用し、それらを動的かつ立体的に連携させることで、新しい操作感と面白さを実現するシステム(VISTouch)を構築した。ここでは、容易にデバイスの位置を移動させることができる携帯端末の特性に着目し、これらを立体的に接触させることで3次元空間を直感的に操作できることを可能にした。つまり、水平に配置したタブレットを上から見た地図とし、そのディスプレイ上にスマートフォンを接触させることで、相対的位置関係を動的に取得する。スマートフォンを仮想3D空間を見るための窓として機能させ、その位置、方向、角度からの映像をリアルタイムに表示する。実空間と仮想空間を重ね合わせることで実空間の情報が利用でき、映像のみに依存していた従来の仮想3D空間の方向認識を改め、空間把握能力の向上を目指した。このように、タブレット上でスマートフォンを動かしたり傾けたりといった新たな操作感をもたらし、単体では実現できなかった微細な移動情報を利用できるVISTouchの開発を実現した。
トイレの便器にセンサを組み込むことで,ユーザの生体情報を日常的にかつ容易に取得し,健康管理などに応用できるようになった.トイレは多くの場合,複数の人が共用するため採取した生体情報をユーザごとに分類する必要があるが,カメラや音声,体重計による個人識別はプライバシの観点から適切ではない.タッチパネルなどの機器を設置して操作することで個人識別も可能であるが,本来不要な操作であるため操作を忘れることもある.そこで本研究では,トイレットペーパの巻き取り方の個人差に着目し,芯に角速度センサを設置したトイレットペーパの回転特性から個人識別を行う手法を提案する.
近年,肥満およびメタボリックシンドローム患者の増加は世界的に問題となっている.メタボリックシンドロームは動脈硬化のリスクを高め,さらに心臓病と脳卒中を誘引することから,予防対策が重要視されている.スマートフォンおよびウェアラブルデバイスの台頭により,ヘルスケアに関するデータの記録・管理は容易となったが,メタボリックシンドロームの診断基準のひとつである「腹囲」に関しては,既存のデバイスでは対応することができない.そこで本研究では,ベルトがバックルを通過した距離を測定し,腹囲を自動推定するベルト型ウェアラブル計測デバイス,および測定データの記録,可視化を自動化するスマートフォンからなるシステム“おなかのげんじつ”を提案,実装する.測定精度実験の結果,平均相対誤差は0.66 [%]となった.また,スマートフォンアプリケーションにより測定データの記録,グラフによる可視化を実現した.
シャワーを浴びながら音楽を聴く際の音楽体験の向上を目的として,これまでに我々はシャワーの水流を制御することによってユーザに触覚刺激を与えるシステムを提案した.本稿では本研究の第2報として,シャワーを用いた振動触覚刺激装置の身体での振動知覚強度の検証,動作音の静音化について報告する.本装置を体験させた結果,明瞭な振動知覚が可能であることがわかった.また,本稿で作成したカム機構を用いた装置の動作音は,前報で作成した装置と比べ約20dBA減少した.
本稿では,導電繊維を編込んだ手袋をセンサとして用いた安価なデータグローブGROVEについて述べる.本研究の目的はスマートフォン操作におけるタッチパネルや音声操作に換わる新たな手法を提案することである.GROVEでは導電繊維を一種のセンサとして用いることで,安価なシステムの構築を行っており,実際にスマートフォンの操作や,ロボットハンド等の操作に利用することができる.
本研究では,遠隔地間においての触覚コミュニケーションを可能にするリストバンド型デバイスおよび通信システムを提案する.本デバイスは,ユーザーが本デバイスを触れた位置・圧力度合いを取得し,通信相手に対してその触れられた位置,圧力度合いを,振動モータらを用いた触覚提示によって伝達するものである.著者らは本デバイスをComBandと呼び、本稿ではComBandの概要,本デバイスおよびシステムの設計について述べ,また本デバイスを介した触覚による対話の可能性について述べる.
本論文では,人の動きに呼応して動く壁[HELLO WALL]の体験を通して,人が人工物の動きに対して抱いてしまう生き物らしさの性質を探る.まず,人工物に生き物らしい動きをさせるための制作プロセスとして,「オズの魔法使い」と呼ばれるプロトタイピング手法を紹介する.そして,実際に「オズの魔法使い」を用いてHELLO WALLを制作する.さらに,体験可能な展示形式で展示し,体験者にユーザ調査を実施することで質的分析を行う.
スポーツ映像を視聴する際には,視点変更の必要性が生じる場合が少なくはない.本研究では,複数の視点から視聴できる映像を多視点映像と呼び,Microsoft社のKinectを用いて生成したデータをもとに多視点映像を合成し,それを表示するシステムを試作した.加えて,合成多視点映像をユーザが利用するかどうかを調査した.その結果,経験者は合成映像であっても多視点映像を利用することを明らかにした.また,経験者は自分の動きの確認や自主練習等に本システムを使いたいと思っていることも明らかにした.
ブロック玩具に対する能動的音響計測を用いてインタラクティブなプロトタイプを作成する手法を示す。ブロックの形状を有する音響センサをプロトタイプに取り付け、そのプロトタイプへの操作をソフトウェア上で学習させることによって、デザイナは容易にインタラクティブなプロトタイプを作成することが可能である。
本稿は,参加型演劇YOUPLAYで用いたインタラクティブシステムについて報告する.YOUPLAYとは,一般の参加者が演者となり,決められた物語の中で役を演じる舞台となっている.舞台は床一面壁一面に映像が投影されており,舞台の天井にカメラを仕込んだり,参加者がセンサを身に着けることによって,映像や音声がインタラクティブに変化し,参加者は物語の中に没入して演じることができる.YOUPLAYはこれまでにYOUPLAY Vol.0 (03/20–24, 2013)とYOUPLAY Vol.1 (11/16–24, 2013)の2度,大阪梅田のHEP HALLにてそれぞれ全40公演ずつ行なっており,参加者の様々な反応を見ることができた.実運用を通じて確認できたシステムの有用性や不具合,またその改善策について記述する.
競技かるたは,百人一首を用いた対人競技であり,札を対戦相手より先に取るには集中力,瞬発力,反射神経が必要である.また,競技かるたは基本的に審判がつかない状態で行われるため,札取得者の判定は競技者間で行う.しかし,札取得の時間差は数十ミリ秒程度であるため,目視で判断ができず口論になることも多い.高速な動作の判定にはビデオ判定が考えられるが,競技かるたでは複数の試合が同時に行われるため,設置のコスト面で不適である.そこで本研究では,競技者の手首に加速度,角速度センサを装着し,札取得の動作を行った際に取得したデータから,札取得タイミングを推定する2種類の手法を提案し,それぞれの性能を評価する.
本研究では,音の拡張現実システムSEANAを開発した。提案システムは、利用者の動作をスマートフォン(Android端末)で認識し、その動作と対応づけられた音を外部のスピーカーから鳴らす機能を有する。私たちの日常生活に動作を誇張した音を付与することで、エンターテイメント等での応用を期待することができる。利用者の動作の認識には、パターン認識アルゴリズムであるサポートベクタマシン(SVM)を用い、本研究では、その有用性を調査した。特徴量には、Android端末で測定が可能な加速度センサ、ジャイロセンサの各出力値を用いた。評価実験では、SVMのカーネル関数を変更した場合の識別率を比較した。
冷蔵庫は家庭や職場において複数人で共有して使用することが一般的であるが,利用者各々が飲食物を雑多に置くため,所有者不明の飲食物が冷蔵庫内に放置されたり,誤って他人の飲食物を取り出してしまうなどの問題が発生する.これらの問題に対処するには冷蔵庫内の飲食物とその所有者を管理する必要があるが,冷蔵庫に飲食物を入れるたびにその食品の所有者を手動で入力するのは面倒で実用性に欠ける.そこで本研究では,冷蔵庫のドアハンドル部分に圧力センサを設置し,冷蔵庫使用者のドアを開ける動作で個人識別を行う手法を提案する.実験より,4人グループにおいて平均識別精度88.6%を得た.
本研究では「光」と「音声」を同期させることで対象の存在感を示しやすくするライトスタンドを提案する.店頭にて商品の紹介を近くに設置したラジカセのような音声再生装置を用いて紹介したりディスプレイ装置を利用して映像紹介することがある.しかし,これらの音声や映像は物理的な商品と個別展示になってしまい,関係性が希薄である.そこで本研究は「音声」に合わせてLEDの光の強弱を調整し記録したものを再生することで見た人にあたかも対象がしゃべっているように見せ存在を示しやすく演出するライトスタンド型プレゼンテーションシステムLightalkを提案および試作した.本論文ではその試作について紹介し,実際に使用しての考察および議論を行う.
実世界の立体的な建物や物体に映像を投影するプロジェクションマッピングの技術では,立体物の形状を補償した映像を投影することで歪みの無い映像投影を可能にしている.本研究では,この手順を逆にし,正しく組み立てた場合に歪み無く見える映像を投影することで,部品の取り付け位置や向きを提示するトイブロック組み立て支援システムStudI/Oを提案し,実装した.ユーザ自身が手作業で行う位置調整により,人やトイブロックの位置検出のためのセンサーは不要であるため,投影を行うプロジェクタのみというシンプルな構成で効果的な実用性の高いシステムである.
本稿では,小学生における漢字の書き取りをより効率的に行うためのシステムである,デジタルペンを利用したゲーム性を持たせるなど小学生が飽きずに漢字練習できるインタラクティブなシステムについて提案る.Airpenというデジタルペンを用い,紙面に手書きで漢字を書き,事前に登録した手書き漢字データは書かれた漢字の筆跡を識別し,スクリーンに書かれた漢字を表す,書かれた漢字はデジタルペンを操作でき,それぞれの漢字に対し音階を割り当て,漢字をぶつけたりすることで音を鳴らす.本稿の目標は手書き漢字を活かしたインタラクティブな漢字学習,小学生の漢字学習を楽しくさせて,学習者の学習意欲をあげるツールを研究目的とする.本システムでは,小学生一年生で習う80字漢字は手書きデータを登録した.今後は小学生で習う手書き漢字データを登録することが課題である.
本研究ではお絵描きとダンスを用いた新しいインタラクティブデジタルシステムである「お絵描きダンスステージ」を提案する.初めにユーザは紙にペンで自由にキャラクタをお絵描きをしてから,スキャナによってお絵描きをシステムに取り込む.次にユーザは10秒間程度のダンスを行いながら,Kinectによってユーザのモーションをシステムに取り込む.お絵描きおよびモーションのデータが揃うと,テーブルトップ上の運動視差立体視CGで表示されたダンスステージにユーザの描いたキャラクタがユーザのモーションでダンスをしながら登場する.そして,ユーザはCGキャラクタとのインタラクションも楽しむことができる.
筆者らは,MRによる主観視点体験と共に周囲の観客の体験を重視した複合現実型エンタテインメントの研究に取り組んでいる.本研究では,HMDを装着したMR体験の主体となる「プレイヤ」と,観客でありながら敷居の低いインタラクションによって気軽に体験に参加できる「オーディエンス」の双方が協力してコンテンツを体験できるプレイヤ・オーディエンス協調型の新しいエンタテインメント・システムを実現する.
本稿では,動画コンテンツと現実世界とを融合させることでユーザが動画の世界に入り込んだり,動画中の人物が現実世界に飛び出したりすることを可能とするシステム,VRMixerを提案する.本システムは,動画セグメンテーション手法によって動画の登場人物と背景とを別々に仮想空間内に配置することで簡易的な3次元空間(2.5次元空間)を構築する.構築された空間にデプスカメラによってキャプチャされたユーザを配置することによって,ユーザが動画の世界に入り込むことを可能とする.本研究では,動画から人物領域を自動で抽出するために,顔検出と人物領域検出を併用した3次元グラフカットセグメンテーション手法を提案する.抽出した人物領域を2.5次元空間の前方に,その他の背景領域を後方に配置することで仮想空間を構築し,デプスカメラによってキャプチャされたユーザは仮想空間内を自由に移動できる.本システムを通して,動画の中の世界と現実世界とが融合した世界,Video Realityの実現を目指す.
本研究では,水の上に油(オイルバブル)を浮かべ,プロジェクタにより映像を投影するOil Bubble Displayを提案する.ユーザはオイルバブルを変形・結合・分離させることで,投影像とのインタラクションを行う.Oil Bubble Displayでは,オイルバブルへの映像の投影を行うために,オイルバブルに光を散乱させる物質を混合する.オイルバブルの位置および形状に合わせて映像を投影するため,オイルバブルの位置および形状を赤外線を用いて計測する.本稿では,Oil Bubble Displayを用いた形状操作と色操作の二つのアプリケーションを実装した結果を示している.形状操作では,オイルバブルの形状に合わせて映像を変形し投影することで,投影像の形状とのインタラクションが可能となった.色操作では,一つのオイルバブルに一つの色を投影し,複数のオイルバブルを結合・分離させることで,色とのインタラクションが可能となった.
空中像はディスプレイから飛び出し,光学系により反射・屈折し,実空間へと結像されるので,像に手を伸ばすことによるインタラクションが可能である.複数の空中像を表示する方法として,ハーフミラーを用いた像の重ね合わせによる多層化手法がよく知られている.しかし,ハーフミラーを用いると前後の層の光線が重なってしまい,オクルージョン表現ができないという問題があった.本稿では光線制御のためのマスクとして液晶シャッターを利用することで,上記の問題を解決する.液晶シャッターの階調と,実際の透過率の関係を実験によって明らかにし,不透過空中像を利用したアプリケーションを示した.