メッセージ
実行委員長メッセージ
インタラクション2021 大会委員長 水野 慎士(愛知工業大学)
情報処理学会インタラクションシンポジウムは、1997年に第1回が開催されて、今年は節目となる25回目の開催となります。主催は、ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)研究会、グループウェアとネットワークサービス(GN)研究会、ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)研究会、エンタテインメントコンピューティング(EC)研究会、デジタルコンテンツクリエーション(DCC)研究会の5研究会です。そして、ユーザインタフェース、CSCW、可視化、入出力デバイス、VR/拡張現実、ユビキタス/ウェアラブルコンピューティング、エンタテインメントデザイン、コンテンツ制作、ソフトウェア工学といった計算機科学、さらには認知科学、社会科学、文化人類学、メディア論、アート、デザインといった人文学の研究者および実務者が一堂に会し、人とモノ、およびモノを介した人と人とのインタラクションに関わる最新の技術や知見について、インタラクティブに議論する場を提供してきました。
今回は当初、学術総合センター/一橋講堂会場とオンライン会場を融合したハイブリッド開催を目指して準備を進めてきました。しかし、昨年末からコロナ感染拡大の第3波が襲来して、2021年1月に関東、関西、東海、福岡に緊急事態宣言が出されたことから、多くの発表者、参加者が一橋講堂に集まることが困難になると判断して、昨年と同様に完全オンライン開催に移行することに決めました。現地での発表や参加を楽しみにしていた方にとっては残念な決定になりましたが、オンラインに精通する多彩なスタッフに集まってもらいながら様々なデジタルツールの活用することで、オンライン開催ならではの良さを出すように努めて、昨年以上にシンポジウムを盛り上げたいと考えています。
本シンポジウムは、基調講演、査読を経て選ばれる登壇発表、実機デモンストレーションを行うインタラクティブ発表(デモ)、および議論を目的としたインタラクティブ発表(ポスター)から構成されます。そして今回、登壇発表とインタラクティブ発表を合わせると180件以上の発表が集まりました。コロナ感染拡大の中で大学や研究所への立ち入りが制限されて、例年とは比べものにならないほど研究を進めることが困難であった中、インタラクションへの投稿と発表を行っていただいた発表者の皆さんに感謝致します。すべての発表はZoomをメインとしたオンラインで行います。そのため、例えばインタラクティブ発表(デモ)は発表者がそれぞれの場所からカメラ中継等でデモ展示を行い,例年のような直接的な体験は困難ですが、その分発表者と参加者との間でリアル体験以上の濃いコミュニケーションが生み出されることを期待しています。また、インタラクティブ発表を1日2部制にしてより多くの発表を見られるようにしたり、Youtube Liveを用いたネット配信を行うなど、発表者と参加者のどちらにとっても有意義なオンライン開催にしたいと思います。
最後になりましたが、インタラクション2021の開催にあたり、多くの協賛学会並びに企業様のご協力をいただいております。ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社、グーグル合同会社には特に学生や子供達に関するご支援を頂き、ソフトバンク株式会社、ソニー株式会社、九州工業大学・合同会社AUTOCAREには企業展示のご協力を頂いております。学術総合センター、国立情報学研究所、および三実花サービス社には,ぎりぎりまで現地開催のために尽力して頂きました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。また、実行委員会・プログラム委員会の委員の皆様には、ボランティアの域を超えて一丸となって準備にご尽力いただき、心から感謝申し上げます。そして、発表者、参加者、委員が一丸となってインタラクション2021を成功させて、インタラクションシンポジウムを更に発展させていきたいと思いますので、皆様何卒よろしくお願い申し上げます。
プログラム委員長メッセージ
インタラクション2021 プログラム委員長 井上 創造(九州工業大学)
今回のインタラクションでは、前回に続き、登壇発表、インタラクティブ発表(デモ)、インタラクティブ発表(ポスター)という3つのカテゴリで発表を募集しました。また、本シンポジウムが、なるべく多くのアイディアやテーマを参加者同士で共有、議論する機会となるように努めました。
■プログラム委員会について
今年もこれまでのプログラム委員会の構成を引き継ぎました。メタ査読者として複数の論文を俯瞰するチーフプログラム委員(19名)と、個々の論文の詳細な査読を担当するプログラム委員(76名)、委員長、副委員長を含めた97名からなるプログラム委員会が審査にあたりました。
■登壇発表について
各チーフプログラム委員は、プログラム委員からの査読結果を踏まえ、オンラインで議論を行い、採否判定案を作成します。その上で、チーフプログラム委員の採否判定会議を2019年12月7日~8日にかけて開催し、十分な議論を経て、登壇発表の採択論文を決定しました。なお、インタラクション2021では、1論文につきチーフプログラム委員1名、プログラム委員4名を割り当てました。
登壇発表には22本の投稿があり、11本を採択しました(うち2本をショート発表)。一部のボーダーライン上の論文にはShepherdingを行い、チーフプログラム委員が論文の改善を個別に確認した上で採録しました。Shepherdingを通して、新規性は高いものの発展途上の論文を積極的に採択し、インタラクションコミュニティの活性化に配慮しました。
また、2021年2月15日に発刊された情報処理学会「インタラクションの理解および基盤・応用技術」特集号から、評価の高かった論文4件を招待して、登壇発表内で発表いただきます。以前にインタラクションで発表された物もありますが、より完成度の高い研究発表が期待できます。
■インタラクティブ発表について
インタラクティブ発表では、例年厳密な査読は行いませんが、特に優れた発表である「プレミアム発表」の選定と、研究や論文の質に著しい問題のある論文を発見するために、チーフプログラム委員/プログラム委員を1論文につき5名割り当て、スクリーニングを行いました。その結果、180本の投稿から、31本をプレミアム発表、149本を一般発表として採択しました。プレミアム発表は、プログラム委員会選出のインタラクティブ発表賞の候補となり、発表当日にチーフプログラム委員団の巡回審査を経て受賞が決定します。
インタラクティブ発表(デモ)とインタラクティブ発表(ポスター)のスクリーニングの結果の詳細は以下の通りです。
インタラクティブ発表(デモ):投稿122件、プレミアム採録22件、一般採録100件
インタラクティブ発表(ポスター):投稿 58件、プレミアム採録 9件、一般採録49件
■基調講演
例年、基調講演は、著名な企業人や研究者をお呼びしていましたが、今回は少し趣向を変えて、若手ながら国際誌や国際会議で活躍している若手研究者を招待して企画してみました。講演者の前川卓也氏は、IoTやAIを活用した行動認識技術を、野生動物の観測に応用する研究で、Nature Communications誌やCommunication Biology誌に発表しており、その内容ばかりでなく研究スタイルもインタラクションの若手の参加者に参考になるかと思います。
■今年の目玉
今回は、いくつかの新しい試みにも取り組みます。Google社のご支援により、小中高生企画「オンラインで見てみよう、聞いてみよう、言ってみよう」ということで、インタラクティブ発表を小中高生向けにオンライン中継します。小中高生からの投票や、質問タイムを設けています。
また、誠文堂新光社「子供の科学」誌からも取材をいただきます。
今回のインタラクションはオンラインのみでの実施となりましたが、これまでのインタラクションの良いところと、オンラインだからできる企画をおりまぜ、日本における最高峰の「インタラクション研究」の「研究インタラクション」ができることを望みます!