メッセージ

大会委員長メッセージ

井上 智雄(筑波大学)

 2024年で28回目の開催となる歴史あるインタラクションシンポジウムを今年も開催できることを嬉しく思います。
 今回インタラクションのホームページアーカイブを再訪してみました。最初は最近数年分を確認するだけのつもりだったのですが、興味も湧いてきて、結局初回の「インタラクション’97」まで遡ってしまいました。ご存じの方も多数おられるかとは思いますが、インタラクションシンポジウムは1997年にヒューマンインタフェース研究会の主催で、当時東芝におられた竹林洋一先生が委員長となり初回が開催されました。会場は東京大学山上会館でした。当初よりオーラル発表とインタラクティブ発表があったものの、インタラクティブ発表は15件に過ぎませんでした。しかし早くも2年後の1999年には情報メディア研究会、グループウェア研究会を加えた3研究会の共催で、参加者は200名を超え、会場は東京工業大学大岡山キャンパスの百年記念館に移しています。インタラクティブ発表が50件近くあり、量的にはこれがプログラムの中心となりました。現在のインタラクションシンポジウムの特長はおよそ確立されたと見えます。その後も参加者は増加を続け、会場は早稲田大学国際会議場、さらに学術総合センターに移りました。2005年にはユビキタスコンピューティングシステム研究会も共催となり、参加者が600名を超えています。その後も、エンタテインメントコンピューティング研究会、デジタルコンテンツクリエーション研究会の共催加入、参加者数などに対応した会場や開催期間の変更、投稿件数増加に対するプログラム委員会の2層化、そしてコロナ禍においては3度のオンライン開催など、幾多の改変を経て、昨年に引き続き、5研究会共催、学術総合センターにおける3日間開催の今回に至ります。

 このように振り返ると感慨深いものがありますが、今回は、前回の成功に引き続き対面開催の「インタラクション」を楽しめる回にと考えました。必要な変革はどのような組織においても求められますが、一方で、学会運営の負担が問題との声も聞こえるようになってきました。新しいことをやると、どうしてもそのための負担は増えます。必要性が明確でないことはやらないという判断もあるでしょう。安定した会議をできるだけ少ない負担で開催することは今求められていることのひとつかもしれません。今回は会議の大枠は前回並みとした上で、参加者の皆様の意見を反映したいくつかの変更の他、研究交流に大切と思われるコーヒーブレークのサービスは実施し、一方でバンケット(懇親会)はなしとしています。皆様には活発な研究交流ができますことを祈念します。

 プログラムは発表件数が300件を超える過去最大級で、多様な専門分野から多くの研究者や実務者の参加が見込まれます。投稿下さった皆様には感謝申し上げます。そして、多数の投稿から魅力的なプログラムを作り上げられたプログラム委員の皆様、会議開催に尽力された実行委員の皆様を初め、多くの方々のご協力に感謝申し上げます。
 最後になりましたが、協賛企業の皆様に深く感謝申し上げます。学会ジュニア会員の早期申込が無料であること、そして将来を担う学生の参加費を極めて安価に設定できていることは、協賛企業の皆様のご理解・ご協力によるものです。

 皆様と「インタラクション」会場でお会いできることを楽しみにしています。

 インタラクション2024大会委員長 井上智雄(筑波大学)


プログラム委員長メッセージ

水野 慎士(愛知工業大学)

今回のインタラクションでは例年同様に、登壇発表、インタラクティブ発表(デモ)、インタラクティブ発表(ポスター)という3つのカテゴリで発表を募集しました。査読やスクリーニングにおいては、本シンポジウムがなるべく多くのアイディアやテーマを参加者同士で共有、議論する機会となるように努めました。

■プログラム委員会について
今年もこれまでのプログラム委員会の構成を引き継ぎました。メタ査読者として複数の論文を俯瞰するチーフプログラム委員(21名)と、個々の論文の詳細な査読を担当するプログラム委員(66名)、委員長、副委員長を含めた90名からなるプログラム委員会が審査にあたりました。

■登壇発表について
各チーフプログラム委員は、プログラム委員からの査読結果を踏まえ、オンラインで議論を行い、採否判定案を作成しました。その上で、チーフプログラム委員の採否判定会議を2023年12月7日~8日にかけて開催し、十分な議論を経て、登壇発表の採択論文を決定しました。なお、インタラクション2024では、1論文につきチーフプログラム委員1名、プログラム委員4名を割り当てました。

登壇発表には前年より21件も多い46件の投稿があり、18件を採択しました。一部の論文についてはShepherdingを行い、チーフプログラム委員が論文の改善を個別に確認した上で採録しました。Shepherdingを通して、新規性は高いものの発展途上の論文も積極的に採択し、インタラクションコミュニティの活性化に配慮しました。

また、2024年2月15日発刊の情報処理学会「インタラクションの理解および基盤・応用技術」特集号から論文2件を招待して、登壇発表内で発表いただきます。

■インタラクティブ発表について
インタラクティブ発表では厳密な査読は行いませんが、特に優れた発表である「プレミアム発表」の選定と、研究や論文の質に著しい問題のある論文を発見するために、チーフプログラム委員/プログラム委員を1論文につき5名割り当ててスクリーニングを行いました。

インタラクティブ発表には前年より71件多い295件の投稿があり、48件をプレミアム発表、246件を一般発表として採択しました。プレミアム発表はプログラム委員会選出のインタラクティブ発表賞の候補となり、発表当日にチーフプログラム委員団の巡回審査を経て受賞が決定します。

インタラクティブ発表(デモ)とインタラクティブ発表(ポスター)のスクリーニングの結果の詳細は次の通りです。

インタラクティブ発表(デモ):投稿:203件,プレミアム採択:37件(18.0%),一般採択 165件,不採択:1件
インタラクティブ発表(ポスター):投稿:92件,プレミアム採択:11件(13.3%),一般採択,81件,不採択:0件

■特別講演について
インタラクションでは非常にユニークの研究が発表されており、その中には「人々を笑わせ考えさせた研究」に与えられるイグノーベル賞の種になる研究も含まれると思います。そこで、イグノーベル賞の受賞者の中からインタラクションへの関わりが非常に深い栗原一貴氏、塚田浩二氏、中村裕美氏、宮下芳明氏をお呼びして、「イグノーベル賞受賞者対談」と題して特別講演を行っていただきます。

■おわりに
インタラクションはコロナ禍の影響で2020年から2023年まではオンラインや制限付きの開催でしたが、インタラクション2024では5年ぶりに完全に制限なしの開催となります。そして、登壇発表とインタラクティブ発表のどちらも、過去最大級の投稿数となりました。ご投稿をいただいた著者のみなさま、本当にありがとうございます。このようにインタラクション関係の研究は非常に盛り上がっており、インタラクション2024も過去最大級に盛り上がることが期待されます。参加されるみなさまにとって、インタラクション2024が楽しくかつ有意義なシンポジウムとなることを願っております。最後になりますが、プログラム編成を支えてくださったチーフプログラム委員・プログラム委員のみなさま、そして大会長をはじめとする実行委員のみなさまに心より感謝を申し上げます。