情報処理学会 インタラクション2017

KEYNOTE

細川瑞彦
国立研究開発法人 情報通信研究機構 理事
プロフィール
1958年生まれ 東北大学大学院理学研究科修了 理学博士
 
1990年、通信総合研究所(現情報通信研究機構)入所、主に時空計測の研究に従事。初期には相対論効果の精密時空計測への応用を研究していたが、2000年、原子標準研究室長となり、約8年の在任中、日本最高精度の冷却原子泉標準器の開発や、新たに立ち上げた光領域の原子時計の開発で日本初の14桁の精度のCaイオン光時計開発に成功。研究室は現在、Sr光格子時計開発で17桁の精度を達成し、18桁の精度に挑戦中である。
タイトル
「究極の計測精度を求めて -絶対精度18桁への挑戦-」
概要

計測の基準となる単位のシステムとして、現在は広くSI系が認知されているが、その中でも様々な単位が、技術の進歩に合わせ、定義の改定を何度も行ってきている。その改定は、実用上問題にならないよう注意しながら行われているが、科学的には大きな意味を持つものも少なくない。その流れは、王制から民主化になぞらえて理解できるように思われる。また、すべての単位の中で現状でも最も高い精度が実現されている時間と周波数の単位である秒が、最近光の領域で大きく発展し、18桁という途方もない正確さを達成しつつある。定義の改定も真剣に議論されているが、一口に18桁といっても、量子遷移の条件出しから、温度や湿度、振動に地磁気など、ほとんどの要因が6桁目から、ひどい場合には2桁目で変動しまくる環境の中でのこの精度の達成は容易ではなく、多くの困難を克服する技術革新が欠かせかない。このような極めて高い精度がいかにして達成されているかと、それが社会に与える大きなインパクトやその可能性について紹介する。