Webカタログ(インタラクティブ発表2)
本研究では音楽の初学者が手軽に楽器の即興演奏を行うことができる新しい電子楽器[Furimpro]の開発と評価を行う.ユーザはFurimproのデバイスを振るという単純な動作によって,出音のタイミングや音の強弱を制御することができる.また,Furimproのデバイスと地面の距離の長短に対応して音の高さを割り当てているため,デバイスの高さ変えることで音程を制御することができる.このように,ユーザはFurimproのデバイスを「振る」・「高さを変える」といった日常的な振る舞いと同様の操作方法を実現することで,音楽の初学者でも演奏表現に専念することができ,自由に即興演奏を行うことを可能にしている.
外食産業のうちパブレストランと居酒屋の市場はとくに低迷している状況にある。日本の飲食店における特徴的な文化のひとつに「ボトルキープ」がある。客が注文した酒のボトルを店が保管し、その客が再来店したときに引き続き飲めるようにすることで、客のリピート率向上が期待できる。本稿では、ボトルキープの経験価値を高めることにより、店と客、客と客のインタラクションのポテンシャルを高めるアプローチを提案する。そして、そのアプローチを具体化するプロトタイプシステム「BottleTweet」システムを試作したことを報告する。ボトルキープ時のラベルを模したインタラクティブなデバイスとソーシャルメディアが連動することにより、従来は静的であったボトルキープという行為をよりプロアクティブに活用する手段を提供する。
近年,3軸加速度センサやジャイロセンサなどのセンサを搭載したスマートフォンの普及により,人間の行動を解析する研究が盛んに行われている.人間の行動を解析するためには多人数かつ多くのセンサデータを集める必要がある.しかし,多くの人から多様なセンサデータを集めることは,容易ではない.我々は,様々なクライアントソフトウェアを用い行動情報を収集できる多様な行動情報を収集するためのプラットフォームを開発した.また,連続した行動情報に対するアノテーションは非常に重要な作業である.しかし,行動ラベルを対応付ける作業は人の手によって行われ,非常に時間と手間のかかる作業である.また,行動は複合的な構造を持ち,人手によるアノテーションはあいまいさを含む.そのため,作業者が効率的かつ正確にアノテーションするようにシステムが支援する必要がある.我々は,アノテーションを効率化するための行動情報のアノテーション管理手法として,階層的セグメンテーション機能と階層化アノテーションを持ったアノテーションソフトウェアを提案する.
近年Q&Aサイトの利用者が増加している.Q&Aサイトの質問は情報検索型と社会調査型に大別される.このうち社会調査型質問には客観的な正解はなく,特定の個人あるいは集団に対してアンケート調査を行うことで回答を得る.このため,質問者は回答の信頼性を判断しにくいという問題点がある.本稿では,質問者が回答の信頼性を判断するための補助材料として,回答者の質問・回答履歴から,今回答しようとしている質問と類似した質問とそれへの回答を抽出し,これを質問者に提示する.これによって,質問者が回答者の態度や価値観を推測可能とする手法を提案する.Yahoo!知恵袋のデータを用いてシステムの初期的評価を行い,一定の有用性を確認した.
グリッドレイアウトはプロのデザイナの間でも広く用いられる効果的なレイアウト手法だが,紙面に配置する内容に合わせたレイアウトグリッドを作るのは難しい.本研究では,グリッドを用いた作業をインタラクティブに支援する手法を提案し,その実装を行った.本システムでは,ユーザがコンテンツを紙面上で移動・拡大させる際に,コンテンツ全体の配置からレイアウトが持ちうる規則性を解析し,インタラクティブに変化させて提示することで,規則性と独自性を兼ね備えたグリッドデザイン手法を実現する.
近年ネットワーク将棋が盛んになってきている一方,様々な課題も残している.本研究では感想戦やデータベースなどの観点からネットワーク将棋を支援し,対局や将棋研究の活性化を狙う.本稿ではこれまでチャットなどの意見交換が主流であった感想戦に着目し,棋譜の変化を明示的に表して共有するためのユーザインタフェースについて詳しく述べる.
現代のツールは様々な使用目的を想定しているため多機能であり,個々のユーザにとって有用な機能を探し出すことは容易ではない.普段我々はこのような問題に対し他人と問題意識を共有したり,有用な機能を教えてもらうことで対処をする.しかし現在のインターネット上での知識共有は,フォーマルな文章化が必要であったり,情報を適切に探し出す能力が求められるため,他のユーザの知識を十分に活用できているとは言えない.そこで著者らは,現在使っているツールを認識しそのツール専用のコミュニティに自動でアクセスするメディアを開発した.これによりユーザは情報を探し出すというアクションをしなくても,そのツールに対する意見や議論を感じながら作業をすることができる.
視線,音声などのマルチモーダルな情報をもとに,ユーザの興味,関心や理解の度合いを把握し,それに応じてユーザに適した情報を提供出来るシステムを提案する.本稿では,説明内容とユーザの注視対象の同期関係に着目したユーザの心的状態の推定方法について概説し,ポスターを用いたプレゼンテーションをオンラインで行なうシステムの構成を述べる.
既存のe-コマースにおいては,テキストを用いた商品検索が行われる.テキストを用いてテレビや家具などを検索する場合,ユーザは自身が購入したい商品のサイズを予め把握する必要があり,商品サイズをリアルタイムに把握・実感して絞込むことは困難であった.この問題を解決するために,我々は身体動作を用いて商品サイズを絞込む検索インタフェースである「これくらe-コマース」を開発してきた.これくらe-コマースを用いることにより,ユーザは自身の身体動作を用いたサイズ表現が可能になり,絞込まれた商品をリアルタイムに閲覧しながら商品検索を行うことが可能になる.本稿ではこれくらe-コマースのインタラクション手法とその実装を示す.また,これくらe-コマースの認識精度の評価と,提示させる視覚フィードバックの評価についてそれぞれ述べる.
高齢者のデジタルな情報発信へのハードルを下げ若者への知識伝達を容易にするために,”Question First”インタラクションモデルを提案する.”Question First”とは,新しいデジタルコミュニケーションメディアでの情報発信経験が少ないユーザであっても,使い慣れたデバイスを介してシステムから発せられる質問に答えていくだけで,デジタルコミュニケーションメディアのためのリテラシーを習得しながら,ユーザの持つ知識のデジタル化を可能とするインタラクションモデルである.このモデルを評価するため,電話・メール・スマートフォンアプリケーションの3種類のユーザインタフェースを実装し,2週間に渡り高齢者7名を対象に実験を行った.その結果,”Question First”を用いることで,一つの質問に対し文字換算で平均247文字の回答があり,デジタルコミュニケーションの経験がない参加者からIT未経験者の助けになるという評価を得た.
近年,携帯型タッチパネル端末は,従来の携帯端末と比較して大画面であることや表示領域と入力領域が一体となった直感的な操作など,様々な利点から普及しつつある.一方で,その操作入力方式から,皮脂により画面が汚れる,指が画面を遮り正確な入力の妨げになるなどの問題が生じている.本稿では,これらの問題を解決する手段の一つとして,光学式力推定手法を用いた入力デバイスの提案をした.本デバイスは既存のデバイスに対し,ポインティングや押し込みによる操作を付与する.また,センシングには端末搭載のカメラを利用するため,省スペースかつ安価なデバイスであることが期待される.プロトタイプ及びアプリケーションを作成して提案デバイスの有効性を定性的に評価した.さらに,ブレインストーミングとインタビューによるユーザニーズ調査を行ない,提案デバイスの適用範囲を明確にした.
アーティストやDJなどのライブイベントは,パフォーマと観客が一体となって作り上げるものである.現在,動画共有サイトでは,様々なライブイベントを非同期に鑑賞することができる.しかし,ライブイベントにおける醍醐味である「観客同士が一緒に体を動かして盛り上がる」ことは,非同期メディアゆえに実現していない.そこで本稿では,動画共有サイトにおける動画コンテンツ上に,抽象化・可視化された身体動作情報を重畳することで,非同期メディアであっても,一体感を共有できるエンタテイメントシステムを提案する.また,2つの学会の懇親会で展示・データ共有を行い,一体感を得られるかどうかの調査と考察を行った.
ドラム演奏において,ドラムスティックを制御する技術は重要な要素の一つである.スティック制御において要になるのは手首の動きであり,この動きは手首を曲げる際に縮む屈筋と手首を返す際に縮む伸筋によって担われている,これらの筋肉のうち伸筋を優位に働かせることによって,無駄な力みをなくすことができ,高速で長時間の演奏が可能になるだけでなく,ドラムの音色も良い音になる.しかしながら,伸筋優位のスティック制御を獲得するのは困難である.本研究では,微少遅延聴覚フィードバックを利用したスティック制御矯正システムを提案する.システムを長期利用した実験の結果から,提案システムは遅延による演奏の混乱をおこすことなく,伸筋をより使用する演奏動作にすることが示唆された.
ピアノ教室に通っている子供にとって,家庭での練習は不可欠である.しかし,家庭内の練習ではモチベーションの維持が困難である.ピアノ練習支援では,技術面の支援が重視される傾向があるが,本研究では,家族が子供のピアノ練習に係わることで,モチベーションの維持を助けるシステムを提案する.家庭での練習において,子どもがピアノの練習をする度に,家族が子供のそばに移動して練習に付き合うのは現実的ではない.そこで,我々は,家族が家庭内で各々の時間を過ごしている際,片手間に子供の演奏に加わることで,子どもの孤独感を解消しモチベーション維持に貢献するシステム“HomeMadeJam”を提案する.
既読情報を再検索する行為をリファインディングと呼ぶ.本研究ではWeb情報のリファインディングを対象に,分類された閲覧履歴の提示とマーカーを用いた支援手法を提案する.Webページを閲覧している際,異なる目的の情報探索が同時に進行している場合があり,単純に見たページを時系列順で羅列しても効果的に記憶を想起できないと考えられる.そこでまず,内容の関連度をもとに閲覧履歴を分類した結果をユーザへ提示する手法を提案した.またページ内のテキストに直接マーカーを引き,ブックマークの代わりに用いることを提案した.本論文では分類手法を実際の履歴に適用し,閲覧目的ごとに分類できるか,また分類結果がリファインディングの情報提示に有効であるかを考察した.
子どもは他者とモノとの関わりを通して,社会性を獲得していく.本研究では,モノを介したインタラクションに着目し,子どもの三項関係の発達を分析した.発達的な視点で子どもを分析するためには,類似した事例を時系列で整理・比較する必要がある.そこで子どもの三項関係を記述するための行動や状況の外面的特徴とモノとの関係を表す心的状況の構造を設計し,マルチモーダル子ども行動コーパスに蓄積した.本稿では,注意誘導とモノの取り合いを例題として,コーパスの構造による行動の発達的変化と心的発達を分析した.その結果,観点ごとの発達分析や,二つの観点を関連付けて発達プロセスを表現でき,インタラクション記述が柔軟な類似場面の表現や,分析の深化に有効であることが分かった.
写真内容に基づいた閲覧や探索を実現させるためにメタデータ付与を継続的に行うことはユーザにとって大きな負担である.本研究では写真間にリンクという関係性を示す構造的なメタデータを記述することで写真情報を構造化する「リンクに基づく情報構造化」を提案して,このリンク付けを撮影しながら行うことができる「RefleCam」という新しいカメラアプリケーションを試作した.リンクに基づく情報構造化は,写真同士をユーザがリンク付けしていくことで,リンクを利用した関連写真の閲覧や探索を行うことができる.そして,RefleCamは撮影した写真に基づき過去に撮影した写真を提示することで,撮影しながら思い出を振り返ることができ,さらに提示された写真の中からユーザが関係すると思った写真を選択することでリンク付けを行うことができる.評価実験を行った結果,RefleCamは,ユーザにほとんど負荷を与えずに継続的なリンク付けを実現していることを確認した.
2011年3月の東日本大震災は、多くの被害をもたらした。その中でも、極めて現代的な被害として注目されているのが、写真・アルバムの流失である。被災者が保存していた写真やアルバムの多くが、自宅の被災に伴って流されてしまった。がれき撤去の間に回収された持ち主不明の写真は、膨大な量となる。被災写真のそれぞれが、撮影され、現像される意味と価値のあったものであり、持ち主の元に返される必要がある。そのための検索・返却方法として写真・アルバムのアーカイブ化と、顔画像認識の活用を考案し、その実践結果を検証する。
本研究では,文法構造などを考慮しない大量の短文情報からユーザが興味を持つ情報を推薦する手法として,編集距離を利用した情報推薦システムを提案する.提案システムでは,ユーザが興味を持つ短文情報に対して,これらを共有するWebサイトからユーザが興味を持つ内容と類似する情報を推薦する.短文情報では品詞のみの情報などが多く,従来の形態素解析を利用した手法では類似度計算が難しい.そのため本システムでは編集距離を利用して文字列の編集操作を基にした類似度算出手法を利用する.短文情報としてTwitterを利用したシステムを実装し,ユーザによる評価の結果,提案システムが推薦した情報について有用性が確認できた.
近年,電子的な手書き入力インタフェースが急速に発展する一方,実世界上の紙とペンを用いたインタフェースの重要性も増してきている.紙とペンによるインタフェースは筆跡が実世界上に残ることが特徴であるが,これは計算機での拡張に当たり妨げにもなる.筆者らはこの問題を解決するため,紙面の手書き文字を計算機側から消去可能なARインタフェース,AR-eLaserを提案する.AR-eLaserは,熱変色性インクをレーザ光の熱変換によって加熱し,局所的な消色を実現している.本稿では本方式の利点及びシステム全体の構成について述べたのち,発熱部の即時性について構成の比較検討を行い,その結果を基にシステムを実装した.
本研究は長年尾州地域で培われた毛織物の技術と、現在多くの研究機関にて研究が進められている導電性糸を繊維に織り込む技術を組み合わせることにより、新しい価値の創造を試みたものである。つまり「ヒューマンセンシング導電織物デバイス」に「デザイン性」兼ね備えることにより、新たなる素材の創造を追求したのである。本論文ではこの「デザイン性を兼ね備えたヒューマンセンシング導電織物デバイス」のプロトタイプを試作した。
本研究は,身体接触による親密なコミュニケーションを促すインタラクティブシステム”タッチリング”の開発と評価を行う.タッチリングは,身体接触を検知する腕輪型のデバイスで,タッチリングを装着したユーザ同士の接触インピーダンスに対応して,タッチリング本体による音と光のインタラクションを実現するものである.また,タッチリングを装着したユーザ同士でも,接触する相手や人数によって接触インピーダンスが変化するので,接触する状況に応じて様々なインタラクションが得られる.このため,ユーザはタッチリングを用いた身体接触によるコミュニケーションが楽しくなり,親密なコミュニケーションを自然な形で体験することができる.
生体信号を日常的に取得し,利用する環境を整えることは,ヘルスケアやメンタルケアサービスなどの拡充に欠かせない.そこで本研究では,生体信号測定装置の普及を目標に,スマートフォンの音声入出力端子を用いた低コストな脈波測定装置を実装する.この測定装置は,センサで測定した脈波をスマートフォンのイヤホン端子から出力した音声信号に振幅変調し,マイク端子で取得する手法によってデジタル回路を省略し,低コスト化,小型化を実現した.本稿では,心電データを教師信号とする評価実験を行い,本測定装置で取得した脈波データのLF/HF指標の有効性を確認した.さらに,屋外移動時に取得した脈波データから心拍数を近似し,その増減に注目することで,本測定装置がユーザの姿勢推定に応用可能であることを示した.
バスケットボールは一試合に行うシュート回数がとても多いスポーツである.そのため,シュートフォームの確立は重要になってくる.本研究ではバスケットボールにおけるシュートフォームの学習支援環境の設計と構築を行う.まず,初心者にシュートフォームを教えるためには,熟練者のシュートフォーム姿における身体各関節の角度を測定することが必要となってくる.そこで,熟練者と初心者のシュートフォームをウェアラブルなモーションキャプチャシステム(IGS-190)で取得し,身体各関節の回転角を比較分析する研究を行った.その結果,初心者は熟練者よりシュートフォームの安定性がなく,足や腕の伸展力を利用していないことが分かった.これ等のデータを基に初心者へ熟練者のシュートフォームを学習させるシステムの設計と構築を行った.
大学の研究室などでは,構成員の居場所を示す手段として,位置情報のリストが記されたホワイトボードと磁石からなる掲示板が用いられる.しかし,ユーザ同士が離れた位置にいる場合,この掲示板を確認することは困難である.従って,掲示板上の磁石の位置を検出し,構成員の位置情報を遠隔地から確認することができるシステムの構築が望まれる.本研究では,磁石の位置を検出し,遠隔地から構成員の所在を確認できるシステムを構築する.検出対象が磁石であること,対象には移動制限があることを考慮し,複数の抵抗と磁石を近づけるとスイッチが閉じるリードスイッチを用いて位置検出を行う.また,Webサーバを構築し,センサで取得された情報を閲覧性が高くなるように編集,蓄積し,ネットワークで繋がれた他のコンピュータから参照できるようにセンサネットワークの構築を行った.情報配信のため,Webサーバソフトウェアの一つであるApache HTTP Serverを利用し,Webサーバを構築した.また,一般的にセンサと接続されるコンピュータとWebサーバを構築しているコンピュータは異なる場合が多いため,本研究においても,それらのコンピュータを区別し,TCPソケット通信を利用してセンサ情報の送信を実現した.送信する情報は位置情報であり,現在の位置情報と履歴情報をWebブラウザで参照できるようにした.
本稿では,動画共有サイトにおける動画コンテンツ上に視線を重畳表示して拡張するエンタテインメントシステムを提案する.動画コンテンツを見ている時の視線を視線計測器で取得,サーバに共有し,動画共有サイトであるニコニコ動画上で動作するシステムを実装した.また,動画中継を見ながら,リアルタイムで視線を共有する企画を行い,他者の視線を見ることによる気付き,エンタテインメントとしての視線について考察を行った.
本研究では,人間と植物のコミュニケーションを活性化させ,植物が人に与える心理的作用を拡張すべく植物に感情表現をさせる機構を提案した.この手法により従来短期的にはリアクションを行えなかった植物が育成者の働きかけに対し反応を示すことが可能となり,植物従来持つ心理的・生理的な癒しや安らぎの効果を増進させることを目的とする.感情表現をさせるための手法として,植物に複数個のアクチュエータを取り付け,複数人にアクチュエータを操作してもらうことで感情表現動作方法を提案してもらい,そのデータを統合し喜怒哀楽の4種の表現動作パターンを生成した.さらに生成された表現動作パターンで作動する植物に感情を感じることができるかを被験者に回答してもらう実験を行った.その結果,喜・哀・楽の感情において有効なデータが得られ,複数人による動作データの統合から植物に対して感情を感じさせる動作を生成することが可能であることが分かった.本稿では主に植物の動作手法について言及したが,今後植物周辺に環境センサを実装することによって,人間-植物間のインタラクティブなコミュニケーションへと応用していく.
クラウドソーシングで複雑な作業を行う場合には管理者作業,つまり対象となるドメインにおいて高い知識を持つ人間による作業が不可欠である.本発表では,手書きシートの書き起こし支援システムを対象に,管理者作業を適切に分割し,クラウドソーシングおよび既存の自然言語処理技術を活用することで,ドメインに関する知識をあまり持ち合わせていない一般の作業者を利用した場合でも同様の目的を達成できるかを実験により考察する.
集団での意思決定プロセスを記録するために議事録を作成する.しかし議事録の作成には発言の書き起こしや冗長な記録を読み返すといった負担が生じる.本研究では記録者に負担をかけず,閲覧者の要求に合わせた議事録提示を行うために,意思決定手法のひとつであるノミナルグループ手法(NGT)を用いて,その議論構造化特性を活用した振り返り支援手法を提案する.提案手法を計算機上に実装するための初期的検討として,通常のNGTを実施してそのプロセスを記録し,一般的な議事録による振り返りと,提案手法に基づく振り返りを行った結果を比較した.その結果,提案手法に基づく振り返りによって,より短時間に精度の高い振り返りを行えることが明らかになった.
我々は,実物の本を用いてその関連商品を直感的に探索できる実店舗レコメンドシステム"つながりテーブル"を開発した.本システムはテーブル上の2冊の本の間に,それらの関連を表す"つながり"や,同じ関連を持つ関連商品の情報を表示し,ユーザに提示することができる.ユーザは,実物の本を直接動かす,回すなど直感的なインタラクションを行って,本同士の関連を発見しながら別の関連商品を対話的に検索することができる.本システムによって,実際の書店または図書館など本を大量に扱う場所において,ユーザが自分の好みや目的に合った本を直感的に見つけることができる.そして我々は,本システムについて評価実験を行った.
嚥下や発話といった日常的な行動において,舌は必要不可欠な存在である.しかし老化や疾患など様々な要因が舌の運動機能に悪影響を及ぼし,嚥下・発話行動に問題が発生することがあることが知られている.この症状の改善には舌を含めた口腔筋のトレーニングが効果的であると考えられており,多くのトレーニング手法が提案されてきた.しかし口腔形状や舌運動の計測は困難であるため,そのほとんどはインタラクティブ性に乏しいものとなっている.本研究ではこれまで,特に口腔外における舌運動の衛生的な検出手法SITA(a Simple Interface for Tongue motion Acquisition)を提案してきた.本発表では,提案手法における舌先位置の検出精度の評価結果について報告すると共に,舌運動のために試作したアプリケーションについて紹介する.
本稿では,トランプゲームのエンターテイメント性とコミュニケーション性の向上を目的とした,プロジェクタ・カメラシステムによる拡張環境の構築について述べる.まず,12人に数種類のトランプゲームを実際に行ってもらい,そこで得た拡張に対する要望から必要な機能を定めた.カード認識機能では,上部に設置したカメラでカードを撮影し,“場”に出ているカードのマークと数字を識別する.また,手の出現する位置からプレイヤーを特定する機能,プロジェクタを用いたエフェクト投影機能を実装した.これらの機能を組み込んだプロトタイプを用いて神経衰弱を拡張し,ユーザ評価やカード認識精度の評価を行った.その結果,実環境での認識が可能であることや,エンターテイメント性,コミュニケーション性の向上が確認できた.
本論文では,ジェスチャを取り入れて操作するUbi-Cameraを提案する.これは,従来のカメラにあるファインダとズーム機能を,親指と人差し指でフレームを作って構図を決めるジェスチャで置き換えて撮影するものである.Ubi-Cameraでは,WUWのような画像認識技術を用いたカメラが抱える問題も解決される.プロトタイプを制作し,ユーザースタディを行った結果,様々な改善点に加えて新たな可能性も見いだした.
回転角度検出センサーを用いた座面の回転動作という簡単な身体動作による入力インターフェースの開発について述べる.回転した角度情報をもとにリズムやサウンドを再現し,また多くのデバイスとリンクさせることでより多くの機能を可能にすることで,音楽療法における適応,そして効果向上,発展をめざす
C/C++言語プログラミングを行う際にプログラム理解支援を行うインタフェースSuZMeを開発した.本インタフェースはプログラム実行時にデバッガとして機能し,プログラムのメモリ状態を平面空間に可視化する.アドレス空間を平面空間に対応付けることで,アドレス空間に対してパンニングやズーミングなどの自由なインタラクションが可能となり,プログラムの状態を直感的に把握することができる.本論文では,可視化した平面空間におけるインタラクションを提案する.
現行のタッチパッドはポインティングや文字入力など多様な機能を有する一方で,触角手掛かりが無いためブラインドタッチ等の高度な入力は困難である.一方でマウスやキーボード等の専用デバイスは持ち替えが煩雑である.我々は光拡散の特性や指先の血流変化から掌や指の位置や姿勢,デバイスに掛かる圧力などのパラメータをカメラで計測し,マウスやキーボード等の入力にマッピングするシステムにより,多機能と良好な操作性の両立を目指している.本研究では,掌に追従するホームポジションや指先の高さ情報を用いて「キーに触れる」→「キーを押し込む」→「入力」を擬似的に再現するインタフェースを実現し,キャラクタ入力モードのユーザビリティの向上を図る.なお,実際に提案システムを用いてパフォーマンスを計測した結果,ポインティングモード・キャラクタモードの切り替えに時間は平均0.4秒,キャラクタ入力速度は平均1.6回/秒であった.
著者らはマスクや仮面,フルフェイスヘルメット,着ぐるみ等使用した際に顔面の動きを非接触にて計測しインタフェースとして利用可能なセンシング技術の開発を行っている.これまで,マスク型のオブジェクトにフォトリフレクタを多点配置する事で,非接触にて顔面の動きを計測する事ができた.顔面の動きは主に口,目,眉,頬の動きを計測している.本稿ではこの仕組みを利用して,顔面を入力としたインタフェースとして本機構がどのように利用可能かを提案する.
実験教育の支援では安全に実験しつつもそれに学習者が依存しないようにすることが必要である.そして,そのためには学習者の能動思考が重要であると考え,提示された情報の解釈における多義性の活用を提案する.本論文では,情報の多義性が学習者に対して与える効果を安全(危険回避)と学習の観点から明らかにするための実験を実施し,多義性と安全効果および学習効果の関係を表す2次元平面を明らかにした.これにより,目前の危険回避を優先すべき状況や,学習者の独立を促進することが望ましい状況に対する最適な情報提示方式を選定することが可能になる.
本研究では,映像鑑賞と飲食行為を連動させる手法を提案する.これまで筆者らは電気味覚を飲食物に付加する装置を味の出力装置として提案してきた.今回我々は電気味覚付加装置を新たに入力装置として用いる手法を提案し,飲む,食べる行動を検出する手法を提案する.この手法によって,飲食に合わせて映像を変化させたり,あるいは味質を変化させたりといった様々なインタラクションを実現することができる.本研究ではさらに,味覚の知覚レイテンシと視覚のレイテンシを計測し,提案手法でのタイミング調節について考察を行う.
本研究ではユーザが抱える癖を通知し,矯正する手法を提案・検討する.癖を矯正するためには,癖が発生した時にユーザが癖を認識し,矯正することが重要である.しかし,癖を認識するためにタスクを中断させてしまっては「タスクを遂行する」という本来の目的が果たせない.そのため,ユーザがタスクへの集中を維持しつつ,通知を認識して癖を矯正するシステムが必要である.本研究ではユーザが注視している対象に,癖がもたらす長期的結果を連想するような視覚効果を加えることで癖の矯正を試みる.本研究ではVDT (Visual Display Terminals)作業をしている時の姿勢を矯正する.我々は姿勢が悪くなると視界がぼやけるシステムを2つ作成した.2つのシステムはそれぞれ短時間の使用と長時間の使用を想定し,異なる通知動作を持つ.短時間用のシステムでタスクへの影響を調査した結果,提案手法はタスクの遂行に影響を与えないことが判明した.長時間用のシステムで癖の矯正効果を調査した結果,提案手法は癖を矯正する動機を与えることが判明した.
こする行為によって発せられる「キュッキュッ」という音を検出して入力ユーザインタフェースに用いることを提案する.そしてその具体的な適用例として,浴槽をこすることでDJが行うスクラッチ演奏を楽しめるエンタテインメントシステムBathcratchを開発した.ここでは,浴槽をこすった場合にのみスクラッチ音が鳴る仕組みを実現している.本稿では,こすり音の音響的特徴とその簡易検出手法について述べ,Bathcratchシステムについて述べる.
従来の色付き粘土などを用いた粘土造形は,柔軟な形状に対して色彩は静的であり,動的な粘土を用いることで創造性が刺激されると考えられる.本研究NeonDoughは電子回路やセンサ,LEDを内蔵したモジュールを含む光る粘土を用いた粘土細工である.具体的にはモジュールに内蔵された電極間の抵抗値を計測し,各モジュールのフルカラーLEDの色を変化させる.くっつけると色が混色され,伸ばすことでゆるやかに色が変化する.本稿ではシステムの設計,実装および体験者の様子と展望について述べる.
場所や人数を限定せず,大きな動作で遊べる電子玩具に関するインタラクションデザインと仕組みに関する検討として,チャンバラごっこを基にした体感型電子玩具「チャンバライザー」を提案する.近年,電子玩具は様々なセンサを用いて多様な操作が可能となったが,主にはテレビゲームでの使用に限定され場所や人数の制限がある.チャンバライザーは,そうした制限を持たない電子玩具として提案する.この玩具は加速度センサを用いて身体の動作による操作を行い,赤外線の通信により対戦を行う.本稿では,チャンバライザーの機能や遊び方,設計,実装等について述べる.
本論文では,複数の子供達がゲームを通して社会性や協調性を学ぶことを目的として開発したシリアスゲームLine Ho!ckeyの設計コンセプトと,試作と評価を経て実施した改良内容を報告する.Line Ho!ckeyは4人が2人1組に分かれ,チームメンバが協調してテーブルトップ上に指をタッチしてラインを描画し,移動を行うことによってボールを弾いてゴールを狙う,チーム対抗で行うホッケー型のゲームである.協調して操作しなければラインは描画されず,ゲームに勝つことができないという特長がある.シリアスゲームはゲーム内でのゴール(結果)よりも,ゲーム外でのゴール(能力等の取得等)を主目的としたコンピュータゲームのことで,Line Ho!ckeyにおいては,協調した操作の実現方法に工夫した.本開発により得られた成果は,今後子供達で発生している様々な社会的な問題解決への活用が期待される.
"Thermo-Drawing"は温度感覚をインタラクティブに表示できる情報提示用小型ディスプレイを使用した温度のお絵かきができるシステムの提案である。国籍や年齢、視覚障害などのハンディキャップにかかわらない温度による触覚表現と情報伝達の可能性を提案した。
本稿では,マルチタッチ操作を用いることで,現実に折り紙を折る動作に近い操作で携帯機器上で折り紙の体験ができるシステムを提案する.計算機上で仮想的に折り紙を作成する研究はこれまでにも多く行われているが,それらのほとんどが入力にマウスを用いていた.本システムでは,現実世界で折り紙を作成する時と同じ指を用いるマルチタッチ操作を用いることで,より実際に折り紙を折る操作に近いインタフェースの構築を目的とする.本稿では,実際にiPad上に谷折りに対応したシステムを構築したことを報告し,今後解決すべき課題について述べる.
現在,歩行機能診断を実施する際,運動能力とバランス能力に関する検査が行われている.特にバランス能力の検査には高価な重心動揺計が用いられていることなどから,その診療報酬は高額となり,年金生活の高齢者にとっては大きな負担となっている.本研究では,介護施設や家庭で使用できる安価かつ簡便な装置を念頭に,歩行運動安定性やリハビリ効果を確認できるシステムの実現を目指す.そして高齢者の歩行機能診断を目的とした運動特徴量計測方法について提案する.また本報告では,評価実験の結果として,加齢や歩行障害の有無に起因する運動特徴量の差異を確認し本手法の有用性を示した.
我々の研究グループは、新しいスケッチ学習支援システムを構築した。新しいシステムは、従来の拡張現実感の利用によって実現された自由な構図を受け継いでいる。さらに、概略形状から詳細形状への段階的な描画誘導を考慮している。そして「部位」「方向」「差異」の3つの情報を含んだ具体的なサポート情報を提供することができる。また、新たな操作のインタフェースも搭載している。これによってシステムの完成度はさらに高まった。
障子は古来より日本家屋において空間と空間を仕切る役割を果たしてきた.障子によって仕切られた空間は,完全に隔絶されるわけではなく,内部にいる人と外部をゆるやかにつないでいる.これにより内部にいる人はプライバシーを保護しつつ,外部と完全に隔絶されないことで心理的な安心感が得られる.本稿ではこの障子の機能を用いることで遠隔の利用者同士をゆるやかにつなぎ合わせるコミュニケーションメディアi-JOHS(Interactive JOint (seperated) Home Spaces)を提案する.これにより遠隔の利用者同士のコミュニケーションを促進し,離れていても居を共にしているような感覚が得られるようになることを狙う.
着席時の上体や足の身体動作を用いてデスクトップPCなどの操作を行うインタラクションシステム「しりコン」を提案する.本システムを利用することで,動作の方向や量を利用した直感的な操作や,実世界での意味を反映させた,動作をメタファとしたような操作をデスクトップPC操作で利用可能になる.また,座るというデスクトップPC使用時の自然な状態から操作を行うことが可能になる.我々は着席時の身体動作を認識するために,イスの座部に設置する圧力分布測定シートを作成した.本稿ではしりコンの利用と身体動作の認識,そして今後の発展について詳しく述べる.
本研究では,複数個の磁力球がまとまった磁力球群による立体的な形状変化と移動を可能にする実体ディスプレイ装置およびその上での身体的なインタラクションを提案する.生物的な振る舞いの模倣や創造およびそれらがもたらす効果に関しては,従来からインタラクションデザインの分野でも検討されてきた.今回は,磁力球群に外部から磁気を付与した時に生じる独特な動きに着目し,シャクトリムシのような生物感を有する物体の移動を実現するために,移動,姿勢の制御およびインタラクションに関する設計と実装を行う.
電子楽器の新しいインターフェースとしてゴムの伸縮を利用することを提案する。ゴム遊びやチューブエクセサイズのように、ユーザはゴムバンドの両端を持って演奏する。音の変化は、ゴムが伸縮する際の光透過性の変化をCdSセンサにより検出することで表現する。
現在3DCGモデリングは,主にマウスを用いたモデリングツールによって行われている.しかし,それらのモデリングツールには専門的知識や特殊な操作が要求される事が多く,一般的に敷居が高い.本研究では,身体情報について着目し,ジェスチャを用いたモデリングインタフェースについての提案および検討を行う.本稿では,モデリングの対象を回転体に限定し,現実に使用されている「ろくろ」をベースとしたモデリングインタフェースの提案および,実装方法の検討を行う.現在までに,手形状の取得,回転体モデルの変形操作などの,ろくろ体験の基礎的機能を実装した.センサの解像度による仮想空間と現実との差異や,力覚フィードバックが得られないなどの課題はあるが,実現性のあることを確認できた.