Webカタログ(インタラクティブ発表3)
またはが付いた発表のみ,3/17(土)14:00~15:45に一般公開されます.
本稿では,音楽音響信号理解技術によって音楽の聴き方をより豊かにするための能動的音楽鑑賞サービスSongleについて述べる.従来,研究開発段階の音楽インタフェースや技術を,日常生活で人々に使ってもらうのは容易でなかった.Songleでは,Web上で人々に能動的音楽鑑賞インタフェースを体験してもらうことで,音楽鑑賞がより能動的で豊かになる質的な変化を日常生活で起こすことを目指す.そして,Web上の任意の楽曲に対して楽曲構造,階層的なビート構造,メロディライン,コードの4種類の音楽情景記述を自動推定して可視化することで,それを見て再生したユーザの音楽理解が深まることを可能にする.しかし,自動推定では誤りが不可避である.そこで効率的な誤り訂正インタフェースをWeb上で提供し,誤りを人手で自発的に訂正する貢献を促す.そうした不特定多数による訂正がユーザ体験の改善に結びつくことで,Songleのさらなる利用を促していく.
本稿では,画像バッファの各画素の色情報を用いて複数のバッファを組み合わせることで一つの出力画像を作り出す拡張現実感の表現手法を提案し,そのアルゴリズムと作例について述べる.本手法によって,拡張現実感上で,現実には存在し得ない不可能立体の表現や,重畳する情報に過去の映像を用いることで時間情報が歪んだ表現が可能になる.本手法では,画素情報を組み合わせるという平面的な処理しか行なっていないにもかかわらず,あたかも立体的な処理を行なっているように見える.
近年,タッチパネルにおける指先への触力覚提示方法として,タッチパネルとの間の静電気力を変化させることにより,テクスチャ感や凹凸感を提示する手法,力覚についてはタッチパネルに搭載したモータによる凹凸感の再現などが試みられている.しかし,これらはタッチパネルに触覚提示機構を内蔵するため,マルチタッチを想定したときに触覚提示機構が複雑になることが考えられる.そこで本研究は手部に電気刺激を与えることで,各指それぞれに力覚と皮膚感覚を生起させ,擬似的な凹凸面を知覚させることを目指す.本手法によりタッチパネルはもちろんプロジェクタで投影された壁面や机面などへの,提示面を限定しない汎用性を持った触力覚提示が可能であると考えられる.
冷蔵庫に食べ物を置きっぱなしにしてしまい,駄目にしてしまうことは多い.そこで,本研究では冷蔵庫の棚板上に物が置かれた場所を検出し,その継続時間をユーザにわかりやすく通知するシステム「RefrigeMeter」を提案する.「RefrigeMeter」は,LEDを格子状に配列した基板と,その上部にはめ込むアクリル板を中心に構成される.本システムは,まず,LEDを光センサとして活用し,棚上に物が置かれている領域を取得し,その履歴から任意の領域に物が置かれ続けている時間を計測する.さらに,その継続時間に応じて,各領域のLEDを異なる周期で点滅する.このように,ユーザは特別な作業を必要とせずに,冷蔵庫内の保存状況(棚板上の物の有無/継続保存時間)を視覚的に区別することができる.また,本システムを試験的に運用して得られた知見から,現状の問題点と今後の展望について議論した.
本研究では,運動視差を用いた自由な視点の変更とマルチタッチデバイスを用いた直感的な物体操作を両立した新しいインタラクションを提案する.マルチタッチによる対象の3次元操作を実現しようとした場合,2次元平面での入力をもとに3次元空間内の対象物体を操作しなければならないため,何らかの制約を設けなければ曖昧性が残ってしまう.本研究では頭部情報および運動視差を用いてこの曖昧性を排除することでマルチタッチによる3次元空間の操作を可能にし,既存研究との評価実験によりの有効性を示す.
集中豪雨に代表される局所的な環境変化に対応するため,高密度な観測網の需要が高まっている.そこで,人口密度を情報密度へと活用する降雨観測システムを提案する.情報のセシングにユーザの活動を利用するヒューマンプローブについて述べ,特に,インタラクションの観点から,筆者らのグループが取り組んできた,傘とGPSによる降雨観測システム「UmbrellaMap」について紹介し,一般化を前提にした観測機器にインタラクションを付与することを提案する.
ECを利用してファッション関連商品を購入する利用者が近年増加してきている.しかし,商品の検索結果は衣服画像をリスト形式に並べて表示する場合が多く,試着した様子や他の衣服とのコーディネートがわかり辛いという問題があった.そこで,本稿ではECサイトにある大量の衣服画像群から機械的に衣服領域を抽出し,カルーセルパネルにより衣服画像を動的に並べて表示することで,トップス・ボトムス・シューズのコーディネートを高速に閲覧できるスマートフォン向けの検索インタフェースKiTeMiROOMを提案した.最後に,提案した手法を実際のECサイトに適用し,コーディネートを考慮した商品検索の効率が向上することを確認した.
我々は遠隔地対話者の存在感を向上させるシステムとして“ドアコム”を開発してきた.本稿では,重畳表示型ビデオチャットシステムであるドアコムのどのような特徴が存在感の向上に寄与しているか検証した.枠の3次元的な動きと枠の存在が遠隔地対話者の存在感と映像の立体感を向上させていると仮説を立て,3種類の比較用システムを用いて2種類の実験を行った.結果として枠の3次元的な動きにより遠隔地対話者の存在感が向上すること,枠の存在により遠隔地対話者の存在感と映像の立体感が向上することが確認された.
本稿では,映像制作における撮影時に2次元マーカーによるタグ付けを行うことにより,タグ情報を基にした半自動的な編集を可能とするエンドユーザ向け実写映像作品制作支援システムについて述べる.映像制作の企画段階で作品に必要なシーン等の情報を入力することによりタグ情報とマーカーのセットをシーンの順序に沿って生成する.撮影時に生成された順番に従ってマーカーをカメラに写すことにより,シーンの順序に沿ってタグが付加された映像を生成することが出来る.そして付加されたタグ情報を利用することで企画内容に沿った自動的な編集を行うと共に,その後の手動による編集も可能とする.このように,タグとマーカーを組み合わせることにより,企画,撮影,編集という映像編集の過程の結びつきを強め,エンドユーザにも容易に映像を制作することができる環境を実現する.
人間には聞き取りにくい高可聴域音を用いた音声通信により、パフォーマーと観客とのインタラクションを実現するシステムを作成し実演した.ステージ上のパフォーマーが音楽を演奏することで,観客の持っているスマートフォンと通信する事が可能である.本システムを用いることで、パフォーマーはステージに組み込まれた大きなスピーカーや照明以外の,フロアに居る観客が持つ不特定多数のスマートフォンを小さなスピーカーあるいは照明・VJスクリーンとして使えるようになる.使用している音声はスマートフォン単体で認識可能で,かつ非可聴域に近い音声を使用している為,音楽パフォーマンスに利用し易いものとなっている.
学校の教室や企業の研修室のような空間におけるグループ活動では,少人数からなるグループを複数形成し,それぞれのグループが同じ目的を共有して個別に共同作業を行うような場合がある.本研究では,このような活動にタブレット端末を活用し,ユーザが自由にグループ間を移動して共同作業を行えるような「ダイナミックグループコラボレーション環境」を構築する.この環境では,各ユーザが持つタブレット端末をお互いに結合して机上に並べ,画面上のオブジェクトを端末間をまたがって移動させることができる.また,他のグループへ移動する場合には,机上に置かれた端末を引き上げるという簡単な操作により,グループから離脱することができる.さらに,ユーザのグループ間での移動を促進するために,他グループの作業内容を通知するアウェアネス機能を提供する.このような環境の適用例として,Web上での協調検索作業を支援するアプリケーションを構築した.
本稿では, リアルタイムに日本語の歌詞と音高を同時に入力し, 歌唱合成を利用した演奏を可能にするリアルタイム日本語歌唱鍵盤楽器”VOCALOIDキーボード”を提案する。歌詞入力インターフェースは, ローマ字入力とかな入力を組み合わせた、子音・母音・濁点・半濁点からなる16ボタンで構成されており, 任意の日本語文字を高速に入力することが可能である. また片手で操作可能なようにボタン配置が最適化されており、一般的な12音階の鍵盤を音高入力装置として同時に組み合わせることで, 歌唱合成に必要なパラメータの入力をリアルタイムに行うことができる.
PCでの作業時に,周囲に頻繁に気を取られてしまう状況では作業に集中できないことがある.本研究はこの問題に対し,作業への集中力向上を目的とした視覚刺激提示手法を提案する.周囲に気を取られてしまう一因として,ユーザの視線が作業領域外へ頻繁に向いていることが考えられることから,本研究では視線をPCディスプレイ上の作業エリアに誘導する視覚刺激を用いる.本稿では5種類の視覚刺激を提示し,その刺激のパタンがユーザの集中力に及ぼす影響を観察した.また,集中力向上に有効であると認められた視覚刺激を用い,実際の作業での使用を想定したアプリケーションについて述べる.
人は好みの異性を目にすると、紅潮・発汗・心拍数の上昇といった様々な生理反応を表出する.我々は逆にこのような自律的な生理的興奮を提示することによって、人物に対する好意を人為的に操作する事を目指す.ユーザの胸部にスピーカを装着し、そこから心拍を模擬した振動を触覚として提示する.これにより、ユーザはその振動があたかも自身の心拍であるかのように感じる.本稿ではユーザに異性のヌード写真を提示し、この状態で胸部に提示した振動の周波数を様々に変化させる事で、異性に対する魅力がいかに変化するかを実験によって検証した.また、本手法を人と対面した環境や視聴覚コンテンツに応用する際の設計についても検討した.
表示素子を配列する大型表示装置において,多数の表示素子を1枚の表示デバイスのように構成する目地レス配列(seamless tiling)について,いくつかの方法が検討されている.我々は画素配列を適正化することで目地レス化を実現する方法を検討し,画素ピッチ3mmの有機EL方式大型表示装置の開発に適用した.本論文では,目地レス配列に適した新たな画素配列について,理論的根拠を明らかにし,その配列を適用した有機EL方式の大型表示装置について述べる.有機ELは,目地レス配列を実現することで,曲面を含む任意サイズの大型表示装置を構成できることから,今後の応用範囲の拡大が期待される.
本研究では,身の回りにあるもの,や声を発する,といった行為に対して任意の音色を割り当てて,あたかも割り当てられた音色を発する物体がそこにあるかのように音を鳴らして楽器のように演奏することを可能にするインターフェースを提案する.本システムは特別なデバイスを必要とすることなくマイク一本のみで実現可能である.身の回りのものに割り当てられた音色は,マイク音声から検出されたアタックによってPCM波形がトリガー再生されたものではなく,マイクの入力音声そのものを加工してその音色が発せられる仕組み自体がモデリングされて生成されるため,どこまでも小さい音や速い連打,奏法による変化など生楽器と同等の繊細な表現をすることを可能としている.また,複数の割り当て対象物に同時に異なる音色をそれぞれ割り当てて複数音同時演奏をすることも可能である.
本論文ではAndroid携帯電話とNFCリーダーを用いて実世界GUIを実装するためのJavaScriptフレームワークを提案する。NFCリーダーと加速度センサーを使うと、ユーザーはディスプレイとマウスでのメニューやスクロールバーのような様々な操作をNFCタグで行える。全てのプログラムはWeb上に配置されたJavaScriptで実装され、ユーザーはAndroid携帯電話にたくさんのプログラムをインストールする必要なく、それらを利用できる。
Twitterのコメントを分析し,イベントに対する印象を抽出する研究が多数行われている.Twitter利用者の中にはイベントに参加したりコメントを閲覧することはあるが,Twitterへコメントを投稿していない人々が多数存在する.そのような自己から印象情報を発信しない人々からイベント印象情報を収集するために,他者が投稿したTwitterコメントから共感するものを選択してもらうことで,自身がコメント投稿する事無く,イベント印象を明示してもらう手法を検討している.しかし,他者のTwitterコメントはイベントの情報だけではなく,他者のイベントに対する印象を示す感情語が含まれており,その影響によってシステム利用者の提示する印象が変化すること,いわゆるバイアスが掛かる可能性がある.そこで我々は24人に対して感情語を含むコメント,感情語を除いたコメントの双方をランダムに提示して,読者が感じる印象を収集した.実験では10種類の感情について収集を行い,コメントに含まれる感情語と収集した印象の関係を分析した.
野球場内の観客のニーズは多様化,個性化の傾向にあるため,このようなニーズに対応することが求められている.球場内では,情報を得ることが難しいことや観客が野球を観る視線が人によって違う.観客には初級者からマニアまで様々な知識を持っている人がいる.そのため,試合を見て感じる観点も自分が知りたい情報も違う.そのため、それぞれの必要な情報を分類して提供できれば,観客が試合の流れを理解し,より試合を楽しく観戦することができると考える.そして,状況にあう情報を生成及び分類して伝達するシステムを制作して実験を行った.そこて,観客のニーズに合わせた情報を伝達することで,満足することができる手段になると考える.
本論文では回転円板を用いた新しいインタフェース手法を提案する.実世界またはパソコン画面上の円板に触れてから回転させることによってGUIのスライダやメニューのような操作を行なうが円板に触れる位置により異なる動作を指示することができるため,ひとつの円板だけを使ってテレビのチャンネルを切り換えたり音量を調整したり各種の制御を行なうことが可能である.またコンテクストに応じて動作を切り換えることによりアプリケーションや環境に応じて様々な操作を割り当てることが可能である.
本研究では父子の繋がりを感じることのできるコミュニケーション支援システムを提案する。提案システムでは、2枚のディスプレイを上下に設置することで父子の身長差を“再現”し、擬似的に実際の目線の高さを作り出す方式を用いている。これにより、「時間は隔てているが同じ空間を共有している」と両者に感じさせることで親子の生活サイクルのずれの解消を試みている。本論文ではディスプレイの提示位置と提示する映像の印象との関係について実験を行った。その結果から、提示する内容がポジティブな内容であれば下部ディスプレイで提示する方がより好意的な印象を与える傾向にあること、提示する内容がネガティブな内容であれば上部ディスプレイで提示する方がより威圧的な印象を与える傾向にあることが観察された。
実技映像をすぐさま振り返ることで,技能伝承の効率を高めることができる.しかし映像は扱いが難しく,撮影が面倒であったり,見たいシーンを探しづらいといった問題がある.特に技能伝承の分野では映像を作業の試行や手順に分けて扱いたいというニーズがあった.そこで本研究テーマでは技能伝承のための実技映像インデクシング手法を提案する.本提案では被写体の動き方と位置に試行や手順の区切りに対応した規則性があることに着目し,ユーザが指定した動きを映像全体から検索しインデクシングする.また動きの軌跡やインデクシングの結果をユーザにフィードバックし,インデクスの効率的な修正を実現した.
本研究では,実世界の受動的な状態から始まる非目的志向な購買行動と同等な行為をweb空間上の情報検索においても可能にするためのシステム,InfoSkinを提案する.このような非目的志向な情報検索を実現するために,ユーザの行動に即応して情報を選別するエンジンを備えたアーキテクチャを示し,漠然と目に飛び込んでくる情報の取捨選択を容易に行えるユーザインタフェースについて述べる.本論文では,その取捨選択インタフェースに焦点をあてた検証実験を行った.その結果,情報の俯瞰や閲覧・入力意欲向上に効果があることを示した.
本稿では,パペットの感情を表す動きを,手の開閉,口の開閉,身体の傾きから検出し,その感情に応じて音声や光のエフェクトを出力するインタラクティブ玩具を提案する.操り人形の1つであるパペットは,手や指に被せて使う非常に簡単な構造であり,子どもの玩具として使いやすく,親しみやすい触感と動きによる表情を持っている玩具である.本稿ではこのパペットの様々な動きを検出し入力インタフェースとすることで,パペットによる新しい遊び方やコミュニケーション,表現方法を提案する.
楽譜には,テンポや音の強さなどを表示する楽譜記号が記載されている.これらの情報は演奏表情構築の一助となるが,詳細かつ具体的な楽曲解釈を行うための情報としては全く不足している.本研究では,曲の内容や,その中にある感情,また作曲者の意図などの,楽譜に記載されていない情報を,初学の独習者にとって適切な形態(画像)で提示することで,楽曲の内容に対する理解を深め,音楽的な演奏表情の実現を目指す.最終的に被験者評価実験により演奏表情の構築へ及ぼす影響を検討する.
食卓で共有されている大皿料理から料理を取るとき,共食者間でのインタラクションが期待されるが,大皿料理が持つコミュニケーション活性化機能が十分発揮される形で共有されていない為に,大皿料理を介したインタラクションは限定的である.本研究では,お酒の「お酌」行為に注目し,お酌が持つコミュニケーション機能を「自分の皿に料理を取ることを禁止する」という手法を用いて大皿料理に持ち込む.提案した手法の妥当性を検証しつつ,食卓コミュニケーション支援メディアGiantCutleryの実装を行い,食卓で用いることで初期的な評価実験を行った.
装着型のVRインタフェースや携帯端末など,使用時に皮膚と接触状態にあるデバイスにおいて温度感覚の提示する場合,時間応答性が問題となる.本稿では,ヒトの温度知覚特性の中で,閾値が順応温度に依存する,空間分解能が低い,という2点に着目し,高い応答性を実現する温度提示ユニットを提案する.温刺激と冷刺激を空間的に分割し,順応温度を調整することで,従来の温度提示手法より温度知覚時間が短縮することを,実験により確認した.
近年,様々な生活支援ロボットが研究・開発されてきている.そして,生活支援ロボットは近い将来日常生活の中に溶け込んでいくことが予想できる.その時,人間とロボットが自然にやりとりを行えるようなインタラクションデザインが求められるようになることが考えられる.本研究では3次元深度画像センサを用い,人間の行動モデルであるJerk最小モデルに基づき,初動のわずかな動作だけで手の指す最終点を予測する手法を提案する.提案する手法を実装して実験を行い,まず,人の指さし行動の予測に対してJerk最小モデルを適用することの妥当性を確認した.そして,予測精度を確認するための実験を行った.その結果,平均誤差半径(CEP)は約180mmであり,動作終了時刻の予測について約0.5秒程度の誤差があることを確認した.
会話において,非言語情報は大きな役割を担っている.しかし,発言者が自身の音韻的特徴を客観的に評価する機会は少なく,また,聞き手の非言語行動が見過ごされる等,聞き手の会話への発信が機能しないことがある.本研究では聞き手によって話し手の音声を操作することで,聞き手の会話への働きかけを顕在化させ,それによる会話や関係への影響を調べる.
本稿では,子ども視点で子どもの心の状態の可視化を行い,映像事例に関連付けすることで知識映像コンテンツの構築を述べる.また,子育てにおける思い込みを子どもの心の状態と視聴者の意見を比較することで他の意見に気づき,再度家庭の育児の方針について内省を促す.心の可視化にはミンスキーの6階層思考モデルを用い,対話型映像コンテンツBallonNavi(TM)を利用してクイズ型の映像コンテンツで提供する.実験の結果,第三者の子の事例であるため冷静に分析できたなどの意見を得られ,子育て支援に役立つことに有効であることを示すことができた.
ある気に入った作曲者がいるとして,その作曲者から作曲の支援を得たいとしても,現状では直接支援してもらうことは非常に困難である.一方,断片的な音楽情報を組み合わせて作曲を行う,ループシーケンサ型の作曲が近年注目されている.ループシーケンサ型では,断片的な音楽情報を作曲者自身が探す必要がある.その断片の選択や配置行為には作曲者の嗜好が現れていることが期待できる.本研究では,利用者が付加情報の与えられた断片から作曲を行うことで,他の利用者の作曲支援を間接的に行うことが出来るシステムを提案する.
本研究では,睡眠時に見る夢を手軽に記録するシステム「夢ログ」を提案する.夢ログはユーザが手動で夢の内容を描く機能と,自動で睡眠時の身体状況を記録する機能を備える.夢は覚醒と共に忘却してしまうことが多いため,夢うつつ状態の目覚めから覚醒までの間に目を閉じたまま記録できるよう配慮したする.さらに,ユーザは「起床後」「就寝前」に記録したメモを手軽に閲覧・修正することができる.一方,睡眠中の身体状況と夢との関連性は,現在の科学でもまだ明らかになっていない点も多い.そこで,蓄積した画像ログと寝返り/寝言などの身体状況データを分析し,その関わりを探る.本論文では,夢ログのコンセプトを紹介し,目を閉じたままで絵や文字を書く機能に関する予備実験を行った結果を報告する.また,予備実験の結果を踏まえて設計したプロトタイプシステムについて紹介する.
近年,GPS備えた携帯電話端末が普及するにつれ,位置情報を用いたサービスが増えつつある.こうしたサービスを提供するためには,緯度経度および時刻を持つ大量の時空間情報を保存するデータベースを高速に検索する必要がある.そのためには空間インデックスを用いることが一般的であるが,空間インデックスを利用できないデータベースを利用する場合には,通常のインデックスを用いながら空間的な情報を検索する手法が提案されている.そうした手法の中で緯度経度だけでなく時刻も含んだ情報を取り扱える手法は筆者らが知る限りでは存在しない.そこで本稿では,空間充填曲線の一つであるZ曲線を用いて緯度経度および時刻の情報を一次元に変換することで時空間情報を検索する手法であるWherenを提案すると共に,その評価を行う.
本研究は、遠隔コミュニケーションにおけるユーザ間の位置関係に着目し、ソファを介した「隣り合う」遠隔コミュニケーションの実現を目的とする。我々は過去の研究において、ソファの隣に人が座った際に知覚される触覚要素と聴覚要素の比較から、触覚要素がより容易に人が座ったことを伝えるという結果を得た。本稿ではこの結果から、アクチュエータを用いた座面変形により人がソファに座った際のへこみを提示するデバイスを製作した。デバイス評価では、被験者が座面変形のみから実際には存在しない「隣に座った人間との肩の触れ合い」を錯覚するケースが確認された。また、座面変形計測のために光学距離センサを採用し、人間がソファに座った際のクッションのへこみ量の計測、要求仕様としてのモータの回転速度とトルクの算出を行った。
博物館における解説コンテンツは画一的であり,来館者の多種多様な興味・関心に対応するのは困難である.筆者らは,対話型映像メディアBalloonNaviシステムを活用し,博物館の学芸員と来館者の質問応答を通じて深化・成長する解説映像コンテンツを制作した.博物館内にコンテンツを設置し,来館者に利用してもらった結果,知識が広がっていく見通しが得られた.さらに,移動博物館やデジタル教科書への展開の検討も行った.
本研究ではユーザが投球動作を意図した前後に発生する微少な力を利用して投球動作を検出するボール型ゲームインタフェースを提案する.本インタフェースを使用することでユーザは実際に投球を行うことなく投げる振りによって投球動作を簡単にVRアプリケーションに入力することができる.投球という能動的な動作を加えることにより,身体を使って遊ぶことができる身体動作ゲームの幅を広げることができ,生活習慣病の原因となる運動不足を軽減し健康維持を行うことができる.評価実験として,多数のユーザに本インタフェースを体験してもらいアンケートや観察から評価を行っている.
本研究では,浴槽縁へ静電容量方式のタッチセンサを組み込むことで湯水がある状況でも指先でのタッチ・スライド・近接の操作が可能なシステムTubTouchを実装した.元々,静電容量センサは液体にも反応するものだが,TubTouchは人の手指と水を区別できる.また,曲面を含む様々な形状の箇所に適用可能である点や日常的な掃除などにも支障がない形で導入可などの特徴もある.本論文では,タッチセンサ機能の特徴と共に浴槽を中心とした浴室内のインタラクションについて考察し,実装システムやアプリケーション例について述べる.
本研究は,iPadなどのタブレット端末のタッチパネルディスプレイの上にのせることで機能するコントロールデバイスの提案をするものである.ボリュームつまみのようなかたちをしたデバイスの先にタッチペンと同じ素材でできた接触部があり,これをタッチパネルの上にのせ、まわすことで実際のつまみをまわすようにタブレット端末のコントロールができるプロトタイプ「つかみどころ」を制作した.
近年,触覚提示によりバーチャル体験を実現するような研究が活発である.そこでは,視覚情報に加え,触覚情報を付加することで仮想的な体験への没入感を高めることが目的とされる.本研究では,身の回りのどんな物体でも麺棒で粘土のように潰して伸ばしているかのような感覚を提示するシステム,ペタンコ麺棒を提案する.我々は物体を自由に変形させて潰してしまうことにある種の快感やワクワク感が伴うことに着目し,麺棒を模したデバイスによってこれを実現するシステムを実装した.具体的には,タイヤを含む複数のクランク機構や,タイヤに対するブレーキを制御することによって,Kinectで認識した物体の凸凹感や摩擦力を提示する.本論文では,本システムの設計と,これが有する再現性,エンタテインメント性について述べる.
我々は,操作者の指先に電気刺激を与える,新しいタッチインタフェース技術を提案する.表面が導電層から成り,圧力検知が可能なタッチインタフェースにより,操作者の指先に低周波の電気刺激を加えることで指先に振動しているかのような感触や,一時的な衝撃を与えることができる.また,電気刺激の強さの制御を行い,ユーザの押下圧に準じて段階的に触感を提示することを可能とした.本稿では提案システムの詳細とその上で実現されるインタラクション技術について述べる.
近年,カメラはビジュアルマーカの認識に使われたり,コンピュータビジョンの入力として使われるなど様々な用途に用いられる.特にビジュアルマーカの認識に撮影画像を使用する場合では,写実性を考慮するよりは,素早く手軽な撮影を優先する場合がある.しかし,既存のデジタルカメラでは液晶画面越しに撮影領域や対象物の構図を決めていた.このような撮影手法では,写実性を優先した撮影は可能であるものの,小型の液晶画面を通して撮影を行うためユーザの視野が制限され,動物体の撮影や複数の被写体を連続で撮影することが難しい問題があった.また,実世界で撮影対象物を決めてから液晶画面内で撮影を行うことが多いため,実世界から液晶画面の仮想世界を跨ぐ必要があり,手軽で素早い撮影が行なえていないのではないかと考えた.そこで本研究では,手軽で素早い撮影手法として投影式ビューファインダとひねりズームを組み合わせたClippingLightを提案する.そしてそのClippingLightにより,静止したターゲット,動ターゲットの撮影を行った場合の撮影にかかるユーザの時間的・心理的負荷について調査を行った.その結果,一般的なデジタルカメラに比べClippingLightの方が素早く,快適で容易な撮影が可能であることが分かった.
ピアノ演奏では,正確な打鍵や適切な指使い,リズム(打鍵および離鍵のタイミング)などさまざまな技術が求められる.筆者らの研究グループでは,演奏初期段階における打鍵位置や運指の習熟を高める学習支援システムを構築してきたが,リズムの学習に関しては考慮してこなかった.楽譜にはさまざまな音長の音符や休符が存在するが,譜読みに慣れていない初学者が,5線譜上に書かれた音符および休符の音長をイメージすることは難しい.また,ピアノロール譜のように,打鍵や離鍵のタイミングを明確に提示する楽譜も存在するが5線譜の学習ができない.そこで,本研究ではこれらの問題を解決するために,リズム学習を考慮した5線譜ベースのピアノ演奏学習支援システムの構築を目的とする.提案システムは,音長を逐次チェックする機能をもち,リズム情報を直観的に提示する手法について検討している.さらに,ピアノロール譜を比較対象とした評価実験を行い提案手法の有用性を検証した.
複数人物による対面会話場面を実世界に再構成するためのシステムを提案する.本研究では,時間・空間を隔てた会話の状況を,あたかもその場にいるかのように観測できるシステムの実現を目指し,会話者の顔画像をスクリーンに投影しつつ,その人物の頭部運動をスクリーンの物理的な運動として補強して提示するという表現モダリティを提案する.本システムでは,会話者の人物配置に合わせて,別地点に複数のプロジェクタ,及び,透過型スクリーンが配置され,各スクリーンに等身大の人物像が投影される.スクリーンにはアクチュエータが接続され,計測された会話者の頭部姿勢と同期して,スクリーンの姿勢が動的に制御される.人物の頭部運動には,視線方向の遷移に伴う首振りや頷きが含まれ,このスクリーンの物理的な運動と画像運動との相乗効果により,これら会話者の動作がより明確に観測者により知覚されることが期待される.さらに枠なし透明スクリーンへの背景なし人物像の投影により,遠隔人物が観測者の部屋の背景に重畳表示され,高い存在感の醸成も期待できる.本稿では,このスクリーンの動きの効果として,会話者の視線方向がより分かりやすく,その結果,話し手の話し掛ける相手がより正確に理解されるという仮説を立て,被験者実験によりこの仮説の妥当性を示唆した.
近年,健康への意識の高まりから健康支援システムに対する注目が集まっているが,従来の健康支援システムは生体情報をもとにアドバイスを送るような間接的な支援がほとんどであった.本研究では,健康支援システムが提示する情報の内容をユーザが疑わないことを活用し,プラセボ効果を用いて生体情報を操作する新しい健康支援システムを提案する.本稿ではそのような健康支援システムを実現するために,運動時や緊張時のように心拍が大きく変化する状況において虚偽情報をユーザに提示することにより生体情報に影響を与えられるか検証する.評価実験の結果から,虚偽情報の有効性はユーザにより異なるがその影響には一貫性があることや,虚偽情報の種類により影響の大きさが異なることが確認された.また,現在の心拍数とコンテキストにより,自動で虚偽情報を生成し提示するシステムを実装した.
遠隔地の対話者を視覚的に提示する方法として,ビデオ,アバタ,写真の3つの方法が挙げられる.しかし,これらの方法による音声対話への効果を観察データから明らかにしたという報告はない.我々はそのような観察データを得るために,発話中の途切れの頻度と割合に注目した.そして,我々は視覚的に提示する情報について身体動作と外見の要因に分け,音声対話への効果を確認するため4つの条件を設定した.設定した4条件は,身体動作と外見を提示するビデオ条件,身体動作のみを提示するアバタ条件,外見のみを提示する写真条件,何も提示しない音声のみの条件である.我々はこれらの条件下で対話実験を行い,発話中の途切れの回数と時間を調べた.その結果,外見の提示の有無に関らず,身体動作の提示によって途切れの回数と時間が減少していることが分かった.この結果は,身体動作の提示により音声対話が円滑化していること示しており,アバタがビデオを代替する可能性も示唆している.
近年,特に学生の間で「リア充爆発しろ!」という表現が流行している.これは様々な要因によって現実(リアル)の生活が充実している人,「リア充」に対してうらやましさや憧れの意味を込めて使われる言葉である.本研究ではそのようなコミュニケーション方法を取り入れた大学生のための行動記録ライフログアプリケーション「REAL10」を開発した.REAL10では,ユーザがスマートフォンを用いて自分の行動を10カテゴリで分類し,記録する.また,アバタービューやグラフビューなどによって蓄積した行動記録の振り返りを可能にし,ランキング機能,リア充爆発しろ!機能によってフレンドとのコミュニケーションをとることができる.このようにREAL10ではライフログサービスを基本としながら,SNSの性質を持たせることで,ユーザが友人と共に楽しみながらアプリケーションを利用することを可能とする.それによってユーザが行動ログを蓄積することに飽きることなくアプリケーションを継続して利用していけると考える.
本研究では多人数会話において表出される非言語パターンの有無を自動でアノテーションする枠組みを述べ,この手法によりアノテーションされた各非言語パターンの時系列遷移を分析する.本研究では状況説明タスクを実験協力者に行ってもらい,各種モーションセンサを用いて腕・頭部のジェスチャに関する時系列データを取得し,説明者のジェスチャ,聞き手の頷きの有無を自動抽出した.生起する各非言語パターンの遷移を分析した結果,説明者,聞き手の全ての非言語チャンネルでパターンが生起しない特異な区間が存在する事を確認し,この区間に説明者の言い淀みと,もう一方の説明者への説明補助を要求するシーンが多く含まれることを示した.さらに,聞き手の頷きの有無の利用が言い淀みシーンの検出に有効である事を示した.
我々は,つまむ動作(pinch:ピンチ)によって,複数のスマートフォンで実行しているアプリケーションの連携を動的に設定するインターフェース,Pin-chを開発した.スクリーンをまたいで表示が連続するようにしたり実行中のレイアウトの変更に反応するようにアプリケーションを設計することで,単独画面ではできなかった新しいインタラクションを持つ様々なコンテンツを考えることができる.また,物理的な接触を必要とすることから,スマートフォンを持つ複数の人での利用を考えると,ネットワークや電話を介さない直接的なコミュニケーションを促進するメディアとしても期待できるだろう.本稿では,接続の仕組みと,それを利用したアプリケーションの開発について説明し,実際に作成したアプリケーション例を紹介する.作成例はプロトタイプ的なものであるが,インターフェースの実効性を検証することができた.