情報処理学会 インタラクション2025

文献情報

タイトル
熟練者の技術を補完する宗田節品質選別システムの開発
著者
  • 窪野 清南(文教大)
  • 川合 康央(文教大)
アブストラクト
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本研究では,この課題を解決するために深層学習を活用した画像認識 AI による品質判別システムを構築した.Google Colab を用いて宗田節の画像データを収集・学習させた AI モデルを作成し,Flask と ngrok を使用して Web ブラウザから品質を判別できるシステムを開発した.システムは高品質,中品質,低品質の 3 段階で分類する機能を備えている.実装の過程では,データの収集,CNN モデルの構築,学習済みモデルの保存,Web カメラを用いた画像認識機能の統合を行った.これにより,品質選別作業の効率化と精度向上を実現し,熟練者不足や教育コストの削減にも寄与することが期待される.本システムは宗田節の製造現場だけでなく,食品加工業全般への応用可能性を有している. 1. はじめに宗田節(そうだぶし)は,主として「ソウダガツオ(宗田鰹)」と称されるカツオ科の魚を加工して製造されるものである.一般に普及している鰹節(カツオブシ)は「カツオ(鰹)」を原料とするが,宗田節は異なる魚種を用いるため,味や香りに相違があり,より力強いコクと濃厚な風味を特徴とする.ソウダガツオはカツオと比して,脂肪分が低く,より強い風味を示すものである.宗田節は,高知県土佐清水市の伝統産業であり,その生産量は全国シェアの約 70%を占めている.鰹節工場では,完成した宗田節の品質を「選別作業」によって判別し,脂肪含有量や形状の欠陥(折れなど)など図1 の複数の基準に基づいて分類している.特に宗田節は,品宗田節質に応じて「高品質」(図 2),「中品質」(図 3),「低品質」 (図 4)に分類されるが,これらの選別作業は視覚的に非常に難しく(図 1),熟練者の経験や感覚に大きく依存している.高品質な宗田節は断面がきれいで脂肪が少なく,スリムな形状を有する(図 2).一方で,中品質や低品質の宗田節(図 3, 4)は脂肪が多く残り,形状が大きく不規則であることが多い.このような外観上の微妙な差異は,人によって判断が分かれる場合が多く,さらに,実際の作業では,一度行った選別を別の作業員が再確認する「二段階選別」が行われており,作業効率と精度の向上が課題とされている.また,宗田節には「裸節」と「枯節」という 2 つの大きな種類が存在するが,特に枯節は表面に付着するカビの影響で,選別がさらに複雑になる.このような課題を解決し,選別作業の負担を軽減することを目的として,本研究では画像認識 AI を活用した宗田節の品質判別システムの構築を目指すこととする.

雑誌名
インタラクション2025論文集
© 2025 情報処理学会
論文ID
1P-66
ページ
486-489
発行日
2025年2月23日
発行所
発行人 一般社団法人 情報処理学会
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