情報処理学会 インタラクション2025

本研究では，イラスト描画における振り返り行為の労力や精神的負荷を軽減し，ポジティブな振り返りを促進するシステム「振り返りスタンプ」の設計・実装・評価を行った．イラスト描画において，学習者が自らの制作物をポジティブに振り返り，技能の熟達に役立てることが重要であるとされる．しかし従来の振り返り手法である自ら振り返る観点を考え文章を書く手法では多くの労力がかかり，また，また自分の作品の上手くいかなかった箇所を指摘するなどネガティブな視点が多いため，振り返り行為が精神的負担となりやすいことが課題であった．
 提案システム「振り返りスタンプ」は文字スタンプを用いてイラストを振り返ることができ，従来の振り返り手法よりも手軽である．
 イラストの構図、顔などのカテゴリごとに分かれており，学習者の自己肯定感を促すためポジティブな内容のスタンプを多く用意している．評価実験の結果，従来の手法である比較手法よりも，振り返りにかかる時間が比較群の40％まで短縮された．また，ポジティブな振り返りの割合が比較手法よりも3倍多く，より多くのポジティブな振り返りができることが明らかになった．また，System Usability Scaleによる評価で79点と良好な使い勝手が確認されたが，より手軽な振り返りのためスタンプ配置や拡大縮小の操作の改良が必要であることも判明した
 今後は，スタンプの種類や表現の豊かさを充実させ，効果的かつ豊かな振り返りを可能にすることで，イラスト描画の振り返りをより支援するシステムの構築を目指す．