Webカタログ(インタラクティブ発表1)
初心者にとって,教本のみの自習により楽器の演奏スキルを習得することは困難である.これまで,ピアノ,ギター,ドラムなどの楽器については,学習支援環境の構築事例があるが,擦弦楽器については,演奏するスキルを習得するためのパラメータの数が多く,また,その計測が容易ではないため,研究事例が少ない.そこで,本稿では,磁気式位置センサを利用して手指の動きを自動計測し,それを利用して擦弦楽器の演奏スキルの習得を支援するための学習支援環境を提案する.事例としては,二胡の学習支援環境を構築した.
「学実ねっと」は中高生を対象としたWeb検索,ブラウジングを支援システムである.総合学習や調べ学習の際にテーマを探し,所望するWeb資料を見つけだし、まとめる作業の際に使用することを目的としている.本論文では,Webブラウジングシステム「学実(まなみん)ねっと」を構築するにあたって,ユーザー参加型デザインを導入し,予備実験,実装,実証実験を行った過程および結果を報告する.
本研究では,ユーザの使い方に考慮したユーザインタフェース(UI)デザインを支援する手法を提案する.ユーザにとって使いやすいUIを実現するには,見栄えの良さだけではなく,「誰が,どのような目的で,どのように使うか」といった,使い方の熟慮が必要である.しかし,それらを熟慮することは熟練を要する難しい作業である.そこで本研究では,ユーザがどのように使うのかをシナリオとして記述し,シナリオを用いたUIのデザインを支援する手法を提案する.具体的には,1.シナリオ作成する際に階層構造を用いて,シナリオの何処を詳細化したかを明確に記述できること,2.構造化されたシナリオから機能を抽出することを支援すること,3.抽出した機能とその属性を可視化し,直接UIデザインに活かせるようにすること,の3つのプロセスを支援する.これにより,シナリオを元にユーザの利用状況を考慮したUIのデザインがより円滑に行えるようになる.
遠隔地の匂いおよび映像を再現するシステムの基本原理を紹介し、またそのシステムを用いて嗅覚を頼りに一次元の匂い源探知を行う「遠隔匂い源探知ゲーム」の概要を説明する。また、デモを実施し168名のアンケート結果からシステムの有効性を確認する。
一般的なビデオ会議システムでは,会話相手の存在感が同じ空間で対面している時よりも希薄であるという問題がある.我々は,ロボットハンドを用いることで,遠隔地間での握手を再現することができれば,会話相手の存在感が向上するのではないかと考えた.予備実験の結果から,握手用のロボットハンドには,通常のロボットハンドに求められる性能とは異なり,十分な握力,人間の手のような温かさ・柔らかさが必要であることが分かった.本研究では,これらの要件を満たす握手用のロボットハンドを開発した.このロボットハンドをビデオ会議システムに装着し,会話相手と握手をしている感覚になるかを調べる実験を行った.
本報告では,映像の特徴レベルの情報を用いて音に変換するインタラクティブシステムEyeke(Eye Mike)を提案する.Eyekeは,メディアの特徴レベルの情報を効果的に生かしたインタラクションを実現する研究の一環として,映像と音に焦点を当てたものである.システムは,色相を用いた色処理による限定色選択とキャリブレーションにより,インタラクティブな環境でも安定して動作する.手持ちwebカメラを指揮棒のように操作して音楽の演奏が出来るインタラクティブな楽器や,景色を音で聞くシーン・ソナーとしてのEyekeの展開についても紹介する.
かわいい検索は,かわいいブログ記事を通して,コスメや雑貨などのかわいいアイテムを探す事を目的としたブログ検索システムである.ブログ記事の見た目の要素となりうる,「絵文字」「顔文字」「行間」「ひらがな」などに着目し,視覚特性の違う5種類(ゆるかわ,キュート,きれい,おもしろ,まじめ)のかわいい見た目のブログ記事を探す事を可能にした.本論文では,かわいい検索における検索行動の分析と評価を行った結果について述べる.評価の結果から,5種類のかわいいタイプが,4種類にまとまる事がわかった.
我々は既に三次元手書きモデリングインタフェースBlueGrottoを提案している.このBlueGrottoでは没入型VR環境での空中描画によって様々な幾何立体プリミティブを入力できる.本論文ではBlueGrottoを拡張することで複数のユーザが同一のモデル空間を共有してモデリングを行えるインタフェースを実現する.また実験により,拡張BlueGrottoを用いて複数のユーザが協同作業を行い実用CADのための幾何立体モデリングを完了できることを示す.
運動支援システムとしてトランポリンをインタフェースとして用いたVTF(Versatile Training Field)が提案されている.従来では前進,バランス運動による方向転換,ジャンプ運動のみ入力可能であるがこれらの動作のみだとゲームデザインが限られ,運動の継続性に影響があると考えられる.そこで本稿ではトランポリンインタフェースの動作の拡張手法を提案する.追加する動作は並進,後退の2つで測域センサを用いてこれを実装した.石川県での展示において操作性の検証,体験の様子を観察した結果,今回の動作の拡張手法が有用であることを示すことができた.
本研究では,ピアノ演奏練習における孤独感を解消するために,同じ曲を練習している他の人と楽譜への書き込みを共有するシステムBondScoreを提案する.本システムにおいて,まず練習者は曲に対して思ったことを楽譜に書き込むが,これは他の練習者とも共有される.これにより普段自分一人の心の内にしまっておかざるを得ない考えを他人と共有できるようになり,ピアノ演奏練習の孤独感が緩和され,ピアノ演奏練習へのモチベーションを維持・向上できるのではないかと考えた.初期的なユーザスタディを行ってみたところ,一定の有用性が確認できた.
ヘルスケア機器や家電製品からの情報をライフログとして共有する新たな「マイクロブログ」モデルを提案する.我々はこのサービスをLNSと呼ぶ.人々はスマートフォンなどのクライアントツールを用い,「モノとヒト」を繋ぐLNSとtwitter等の「ヒトとヒト」とを繋ぐマイクロブログを一元的に参照することで,新たな情報の気づきとコミュニケーションの活性化を得ることができる.本稿では,LNSにおける家電等の機器とサーバとの間の通信に関する設計,クライアントからサーバに記録されたライフログを取得する設計について述べる.
本論文では,同時に再生されている多数のビデオ素材の再生状態をユーザが対話的に変化させていくことができるインタラクティブメディアシステム"GAYAIT"を提案する.システムの操作はユーザの動作をWebカメラで取得して行う.システムのビデオ素材としてメッセージビデオを用いた場合,同時再生しているときには雑踏のワイワイガヤガヤという状態だが,ユーザ操作によって一つのビデオ素材を選択すると個人のメッセージが浮かび上がって聞こえてくる.歌唱シーンのビデオ素材を用いた場合には,全員の合唱合奏と各個人の独唱独奏を対話的に切り替えて楽しむことが可能である.GAYAITは個と群衆の共存とその瞬時の切り替えを楽しむことができるシステムである.
学習者の理解状況をリアルタイムに集約することを目的としたレスポンスシステムとして,クリッカに代表されるリモコン型デバイスを用いたものや,携帯電話や小型情報端末を利用したものがこれまで提案されてきた.これらのレスポンスシステムに必要なデバイスは安価になってきているとはいえ,一般に管理が必要であるため,学習者個人に貸し出したり回収したりする作業が授業運営側の負担につながっていた.そこで我々は電子デバイスを用いず,2次元コードを印刷したマーカシートを用いて学習者レスポンスを集約する手法AwareResponseを提案する.学習者が個人用IDを印刷したマーカシートをかざすと,教師側のシステムがその向きや位置を判別し,リアルタイムにレスポンスを集約することができる.複数選択肢問題やポインティング課題へのレスポンス事例について考察した.予備実験により,多数のマーカを同時にかざした場合の認識性能について確認した.
本研究では,インタラクションエージェントとの対話においてユーザに豊かな経験を与えることを目指し,エージェントの有すべき性質として個性を挙げる.そして,人間の性格をあらわすエゴグラムに基づいて,弁別可能な異なる外見とテキストによる口調表現を有するエージェントを実装する.それらを意思決定支援システムに適用し,エージェントの個性が支援効果に与える影響を評価した結果,個性を有するエージェントを適用するほうが意思決定が行いやすく,会話を楽しめることがわかった.このことから,エージェントに個性を付与することにより豊かなインタラクション経験が得られる可能性が示された.
デジタルな文章が普及する中,現在でも手書きの筆記を利用する人々は多い.それは,手書きの方が文章を作成する時間が短くて済むというメリットがあるからである.しかし,手書きの場合は短い時間でメモとして書けば書くほど文字の大きさや太さ,バランス等が損なわれ,文章の読みにくさに繋がってしまう.そこで,我々はそうした要求を解決するために,デジタルペンの筆記特性を用いたデジタルノート再構成支援の提案を行った.本論文では,デジタルノート再構築支援のための概要とデジタルノートの再構築を支援するための文章の調節機能,線の太さ調節機能,囲いの付加機能,文章の移動機能,部分的自動補正機能,アウトライン機能について述べる.
本稿では,インターネット上の地図に投稿された風景写真をもとに,複数の人間による評価をともなうBreeding形式の対話型進化論的計算を用いて,その土地のBGMを生成するシステムを提案する.システムは,スマートフォンなどGPSとインターネット通信を持ったカメラから投稿された風景写真の緯度経度情報を用いて,地図上に写真をマッピングし,写真の情報をもとにBGMを生成するプログラムを,複数の人間の評価によるBreeding形式の対話型進化論的計算を用いて進化させるWebインタフェースと,投稿された情報やBGM生成プログラムの集団の情報を保持するサーバシステムから構成されている.
誰でも簡単に絵本を作成できるシステム「ミラクリ」を紹介する。「ミラクリ」はWEB上でキャラクタや背景、小物をカスタマイズして絵本を作成できるシステムである。多くの人にとって紙や鉛筆、マウスなどを使用して絵を描く事は高いハードルになる。ここでは、既存の絵をカスタマイズしてオリジナルの絵本を直感的に作成できる方法を提案する。また、作成した絵や物語を共有し、作品の素材として利用することができる。
本論文では,日常利用するものを使用したときそれと密接に関連するスマートフォン上のアプリケーションを自動操作する技術senseObjectを提案する.ユーザが本来の行動に集中できる環境を実現することが本研究の目的である.senseObjectは,ユーザがデバイスへ指示をする必要が無い,スマートフォン上のアプリケーションを改変することなく利用できる,ユーザがデバイスを腕時計や衣服など直接体に身につける必要が無いという特徴がある.senseObjectの上に自転車運動記録アプリケーションならびに買い物記録アプリケーションを試作し,その実験を行い,期待する動作を確認すると共にいくつかの改善点を見出した.これらは今後の課題でありその一部について解決方法を論じる.
日記は過去を振り返り,記憶を想起するための有効な媒体であるが,続けることは容易ではない.「勝手に絵日記」は,インターネット上のジオタグ(位置情報)が付与されたユーザコンテンツ(写真や文章)と,それらに含まれるユーザタグを実世界の集合知と見なし,定期的に取得・集積処理をすることで,ユーザの活動記録を自動的に記録する日記風のライフログシステムである.
具体的には,写真共有サービス「flickr」を実世界集合知のデータベースとして用い,ユーザの足取り近辺で公開されているユーザコンテンツを処理することでユーザの近傍の写真と空間関連語を定期的に抽出・提示する機能により,タイムラインを自動生成するアプリケーションによって,ユーザの記憶想起を支援する.
近年,遠隔地とのコミュニケーションを行う新しいメディア技術の発達に伴い,従来の電子メールや電話に加え,TV電話などの非言語情報の通信が重要な役割を果たしている.我々はこれまで,人と人との意図や感情のコミュニケーションにおいては,具体的な状況情報よりも,「生きている」といった単純かつわずかな伝達意図の通信のみによるコミュニケーションの可能性を検証している.本論文では,限られた情報のみでコミュニケーションを行うシグナル通信の考えのもと,ボタンインタフェースを用いた実体ボタン型デバイス,振動により情報を伝える振動型デバイス,およびAndroidアプリケーションを開発した.これらのデバイスを用いた長期コミュニケーションの評価実験の結果とその解析について述べる.
携帯端末にGPSが搭載されたことにより,携帯端末で自分の位置情報や地図情報を電子地図として確認できるようになった.また,それらの情報を利用することで歩行ナビゲーションも携帯端末で提供されるようになった.しかし,それらのナビゲーションでは多様な選択肢を持つ歩行者に対し,十分に対応することができていない.またナビゲーションで用いられる電子地図も,おおよその地図情報を得ることはできるが工事情報など,現在の地図の情報を知ることはできない.そこで本稿は同一目的地を目指す他者の情報を与えることで,歩行者が他者の状況から現在の地図の情報を判断できる地図を開発し,それを利用したAndroid端末用の歩行ナビゲーションを開発した.これにより,たとえ歩行者が知らない土地であっても,歩行者が適切な道を,安心感を持って移動することができる歩行ナビゲーションシステムを提案する.
複数のカメラを利用し従来法に比べて広い頭部姿勢範囲について視線計測を可能にする手法を提案する.角膜反射やステレオ計測を利用した手法の問題点である観測距離の制約を緩和する手法として単眼カメラによる視線計測手法が提案されている.しかし,同手法には顔向きの変化に関しては依然として強い制約があり,広い空間を注視対象とした人の視線の動きを計測するためには多数のカメラが必要であった.提案手法では,顔面上の特徴点および左右の目領域画像の観測がそれぞれ異なるカメラで行われることを許容し,それらの観測を組み合わせて頭部の位置・姿勢および視線方向の推定を行うことで,少数のカメラによって大きな顔向き変化に対応できる視線計測システムを構築する.実験では2台のカメラを用いた実装によって,約120度の顔向き変化への追従,平均誤差8度以内での視線推定精度が得られることを確認した.
本研究は,学習状況のセンシングと可視化による学習者センシングシステムの実現を目的としている.そのために,加速度センサを用いて学習者の筆記行為を検知する手法を検討する.遠隔講義やeラーニングといった学習形式の多様化や,学習者の意欲や興味の多様化により,教員が学習者の状況を客観的に把握することが難しくなっている.行動識別の技術を用いることにより,書くに至っていない時点での学習者の状況を判断する.本稿では,取り付け位置を検討するとともに,加速度センサを組み込んだ筆記具を試作した.また,学習者のコンテクストを想定して,筆記行為の計測と判定を行った.
話者のシルエットを背景に薄い影絵として表示するプレゼンテーションシステムのプロトタイプを開発した.これにより,講演のポインティングデバイスに利用できるのはもちろんのこと,講演者のジェスチャを表示できる.これによって,話者がスクリーンの前にたってプレゼンしているかのような効果を提供しながら,講演者によってスクリーンが覆われるようなことを避けることができる.
本研究では,色弱者が実生活において,何かの色を確認したいとき,色弱者にとって分かりやすい形で色情報を表示するカラーピッカーについて検討した.2名の色弱者へのヒアリングを通し,知りたい色に関する情報を,カラーマップ,近似色の文字,類似色画像の3つの方法で表示するカラーピッカーを設計した.利便性を含めスマートフォン上に実装した.実装したカラーピッカーは,ヒアリングを実施した2名の色弱者により評価を受け,近似色の文字表示に関する有効性を確認すると共に,その他,改善点についても検討した.
本論文はストリング内蔵型ハプティックインタフェースの設計と実現について述べる.本デバイスは,ハプティックインタフェースSPIDARの位置・姿勢計算アルゴリズムを再検討し,性能改善を目的として最適設計したものである.その結果,パームサイズの小型でありながら,十分な忠実性の高い位置・姿勢計算が実現可能となった.提案するデバイスはグリップの内側に糸を配置するため小型化が可能であるとともに,ユーザビリティに優れている.本デバイスは6自由度(3自由度の平行移動と3自由度の回転)の位置・姿勢測定とともに6自由度の力覚提示が可能である.
個人のニーズが多様化されつつある中、鉄道利用者が求める情報も多様化されつつある。しかし、個人が求める情報を提供できなければ、「移動」と「消費」の機会損失が発生してしまっている可能性がある。現在の乗換検索サイトでは、出発駅と到着駅の二点間の移動のみの案内に着目しており、個人の細かなニーズに対応させることは困難である。そこで、本研究では、ダイヤグラムを利用することで、スマートフォン上で個人の移動行程の可視化を行い、鉄道利用を促進させていく方法を検討した。
現在,多くの歩行ナビゲーションサービスの特徴として,ルートナビゲーションが主な機能として挙げられる.ルートナビゲーションはスマートフォンのGPS機能を利用し,位置情報を測位することにより,ユーザの現在位置に応じたナビゲーションを可能にしている.しかし,ユーザには目的地に到着するという目的だけではなく,到着したい時間に間に合うという目的も同時に存在することが多い.現状のルートナビゲーションではユーザの歩行速度などを考慮しないため,間に合うかどうかに関しては全てユーザにまかせられている.本研究では,ユーザを到着したい時間に間に合わせることを目的とし,ユーザに適切な歩みのペースを提示するシステムを提案する.
文章を表示する媒体として近年タブレット型の端末が用いられる頻度が増えてきた.本研究では,タブレットが時間的に変化する表示を可能とするデバイスであることに注目し,その潜在的可能性を活かした新しいデジタル文章表示の手法として,ユーザの働きかけ(なぞり動作)に応じて,文章表示が読文中に動的に変化するソフトウェア「Yu bi Yomu」を提案する.時間とともに変動する文字表現は,音声言語と文章表現の中間的な形態ととらえることができ,動的な文章表示によって,「聞くように読む」ことが実現されれば,新しい文章表現の創造につながることが期待できる.
手と指の姿勢や動きによって演出される「手の擬人性」に着目して,手の表現を拡張する擬人化デバイスを制作した.目や口といった擬人パーツを装着することで装着者の手が自発的にキャラクターの役割を演じる.また擬人化デバイスを指に付け替えてながら,コントローラやセンシングデバイスによるインタラクティブな操作を加えることで,より生き生きとした演出が可能になる.ユーザスタディにおいて被験者がデバイスを用いて作成した表情や動物が,協調作業やデバイスの組み替えを行うことで多様な表現とインタラクションを提供することが観察された.
本稿では,日常の入力作業によって,自然に収支状況を振り返り,ユーザに多くの気づきを与える家計簿のインタラクションデザインについて提案する.提案手法は,金額を面積換算し空間配置することによって,金額の理解を促す.また,過去のデータを重畳表示することにより,現実に基づいた緩やかな予算管理を促すとともに,ひと月の収入に収まらない高額支出についても,過去や未来に渡る分散配置を行うことにより,安定的な収支管理を行う.
ユーザの屋内における位置情報を検知し,様々な付加価値を提供する屋内位置情報サービスは,センサの配置場所や環境といった様々な要件にもとづいて開発されている.通常,これらのサービスは特定の環境や条件に特化している.そのため,一般家庭等の小規模な屋内といった様々な屋内状況での再利用は考慮されていない.そこで,本研究では,様々な要件に対応することができる屋内位置情報サービス開発支援環境を提案する.提案する環境は,センサによる位置情報推定を行う検知部と,位置情報を保持しAPIを通じて公開する記録部,検知部の設定を行う支援アプリケーションから構成される.実際に,提案する環境を用いてサービスおよびアプリケーションを開発し,その有用性を確認した.
現況ネット上のECサイトにおいては,キーワード検索を中心とした情報行動が行われ,目的とする商品/サービスを検索,あるいは購買する,というような,いわば「目的指向型の購買」が主流となっている.一方で,ネットを除くリアルなショッピングにおいては,漠然とした欲求に対し,バイヤーなどの専門家,あるいは購買に同行した友人/家族などとのコミュニケーションを基に,欲求を具体化して購買にいたる,というような,いわば「コンセプト精緻型の購買」についても行われている.本研究では,ネット上での購買においても「コンセプト精緻型の購買」に近い購買環境を提供するため,あるいは,さらにリアルショッピングを拡張したネットならではの購買環境を提供するため,今後普及が期待されるタブレット型デバイスを用いた,協調型購買インターフェースを試作した.
初心者や操作になれないユーザーに利用される事が多いヘルプだが,必要な説明記事を探すことが困難であったり,説明記事内に専門用語ばかり使われていたりするため,そうしたユーザーにとってとっつきにくい存在となっている.こうした問題を解決し,ユーザーが操作方法を気軽に学ぶことのできるツールとするため,口語による索引が可能な親しみやすいキャラクター対話型ヘルプシステムを提案する.
本研究室ではスケッチの学習支援環境について継続的に研究を行ってきた.そこで本研究室では以前に人物が保持する関節間の距離・角度を正しく認識させることで人物描画の精度を向上させるシステムの構築が行われた.しかし先行研究では描かれた人物画の一部分のみの診断しか行えなかった.そこで本研究は先行研究の問題点を解決した学習支援の構築を行った.本システムは初心者を対象としたものであり,人体比率を把握する観察力と,それを忠実に描く技術の体得を達成目標としている.このために,骨格を認識させて,描いた人物画の骨格と輪郭線を診断する機能を持っている.
時刻情報付きデータとは,行動や事件などといったイベントと,それらのイベントが出現した時刻を記録したデータである.この時刻情報付きデータを分析すると,行動パターンがわかり,マーケティング分野などの様々な分野へ応用することができる.本研究では,時刻情報付きデータの分析を支援するための表現手法として,ChronoViewを開発した.ChronoViewは,アナログ時計の文字盤のような円を表示し,イベントをその中に配置することで,時刻情報付きデータに記録されているイベントと時刻の関係性のおおよその分布を視覚的に提示する.また,用途に応じたインタラクションを提供することで,イベントと時刻の関係性についての詳細をさらに分析していくことを可能にする.本論文では,Twitterのツイートデータに着目したユースケースを行い,ChronoViewの有用性を示した.
タッチパネルセンサを搭載したスマートフォンやタブレット型コンピュータが日常的に使われるようになってきた.これらのデバイスは画面上部タップによるスクロールや上部スワイプによる通知表示など,いくつかのイディオム的な便利な操作を提供しているが,画面サイズや物理的なボタン数の制約により,新たな機能を追加することが難しい.そこで我々は,デバイス画面の周囲に仮想的なボタンの存在を想定し,そこへのタップ操作を認識して追加機能に割り当てるフレームタップ方式を提案する.フレームタップ操作は本体の動きを誘引するため,内蔵されている加速度センサやジャイロセンサを使用した検出が可能である.我々は提案手法の実現可能性を検証するため,実際のデバイスから得られるデータを取得した.その結果,本体四隅へのダブルタップについては,ジャイロセンサの値を用いた簡便な処理により検出可能であることを確認した.
本研究はGUIに導入されている種々の動きの特徴とユーザーが視覚的に受ける印象との関連性を,多変量解析の因子分析を用いて明らかにする事が目的である.ユーザーが視覚的に受けている印象は「魅力的因子」「高級感因子」など数個の因子から傾向を説明できることが判明した.また,加速度運動や透明・不透明度,自然界の物体の振る舞いのメタファーなどを要素としてGUIの動的表現に取り入れる事で,ユーザーに魅力的印象を与える事が可能であるという結果が得られた.また,視覚だけではなく操作タスクを用いた実験でも同様の結果が得られており,その結果を応用した検索ツールを開発し提案する.
近年,スマートフォンやタブレット端末にて,フリックやスクロールなどの指の移動操作が一般的になってきている.しかし,タッチパネルの操作ではフィードバックが表示のみであり,更には画面が指で隠れることから操作の確認が難しい.そこで我々は,タッチパネルの表面を水平方向に動かし力覚を提示するインタラクションシステムを開発した.ワイヤ駆動にて力覚を提示する装置を構成し,新しい制御手法を提案することで,実用的なサイズで安全な装置の構成と,安定で正確な力覚提示を実現した.本稿では,インタラクションシステムとその構成について詳細に説明する.
近年非接触給電技術は家電製品のみならず様々な用途への応用が期待されている.著者らはこの非接触給電の技術を応用した玩具アプリケーションを開発している.開発中のデバイスは円状の給電デバイスと,受電デバイスで構成される.本稿ではこれらシステムをミュージックシーケンサ型楽器に応用する.給電デバイスの最適な位置に受電デバイスを置くだけで,電力が供給され,ソレノイドアクチュエータを動かし鉄琴の音板を鳴らすシーケンサタイプの楽器を提案する.
インタラクティブイルミネーションシステム「ホタルモジュール」を製作した.これは「脈波モジュール」と「同期モジュール」という光の明滅モジュールで構成される.脈波モジュールは脈拍に合わせて明滅し,同期モジュールは,引き込み現象によってその明滅に同期する.同期モジュールに引き込み現象に代表されるvan der Pol方程式を用いたところ,ユーザーにポジティブな印象を与えることがわかった.引き込み現象による同期化がより自然なインタラクションをもたらしたと考えられる.
これまでのメディアアートはミュージアムで見られることが多く,専門家だけの閉じた発表となる傾向がある.本研究では,スクリーン上の自分の影から芽が出たり鳥が止まりに来たりするインタラクティブ・アニメーション,Kageto(かげと)を開発した.メディアアートに接したことがない人々にも広く作品を体験してもらうため,JR博多駅改札口から商業施設までの通路に19日間設置した.結果,気付きの連鎖によって子供の興味が持続し,より多様な遊び方を引き出せることが分かった.
本研究では心理療法の一種である箱庭療法を応用しインタラクティブなテーブルトップ型デバイスを提案する.試作機の制作を通して,砂の触感や玩具の配置など箱庭療法の特色を検証し、箱庭に音や映像を付加することでインタラクティブな電子楽器としての箱庭型インタフェースを開発する.
ロボットの遠隔操作によって,人間にとって危険な環境での作業や,遠隔医療,遠隔コミュニケーションが可能となる.このような場合,ロボットの操縦を直感的にするために,人型ロボットのようにロボットの形状を操縦者に似せていることが多い.しかし,不整地や空中など,人間の身体形状を保ったままでの活動が難しい場所では,そのようなロボットが十分に活躍できない場合もある.本研究では,三次元空間で高い移動性を持つ小型の飛行ロボット(UAV)を用いて,人間の身体性を拡張する方法を提案する.UAVを自身の身体の一部であるかのように操作できる身体動作とロボットの動作のマッピングについて考える.そして,UAVを擬似的に身体の一部とすることで,自分の手を伸ばしているような感覚や,幽体離脱して遠くに飛んでいるような感覚を提示する.本稿では,本システムの概要やプロトタイプの構成,実際に本システムを使って行ったデモの様子について報告する.
人間と共に生活しながら、人間の支援を行う事を目的としたロボットが開発されている。一般家庭向けに発売されたロボットとしては、SONYのAIBO(1)を始めとして、多くのロボットがある。そういったロボットによるアウトプットの発展を支援する為に、電子機器における色彩や発光パターンで構成された単純な非言語的表現に焦点を当てた。本研究は、そこに人間のような感情要素を付加する事でより直感的にわかりやすく、また親しみやすい表現を模索し、表現を扱う場としてロボットを役者の1人と見立てた演劇を設定する。その上で、表現の有用性の検証やさらなる表現の発展を目的とする
近年の少子高齢化により,夫婦もしくは単身で生活する高齢者の割合が増加傾向にある.その高齢者にとって脅威となる事故の中に,年間2,000件を超える家庭内での死亡事例が報告されている転倒事故が挙げられる.本報告では,これらの高齢者の転倒の早期検知と被害の拡大防止に向け,煩雑な接触式センサを持たずとも転倒検知が可能な,サーモパイルアレイを用いた非接触型の転倒検知センサを提案するものである.本センサは,1×8構成のサーモパイルアレイを4段に重ねた構造となっており,各サーモパイルアレイの電圧情報,および電圧変化領域より算出した遠赤外線量を考慮した重心情報により,人間の進入および転倒の検出を行っている.また,本センサは,一般家庭の天井隅付近に設置が可能な立体的な検知エリアを用いていることが特徴であり,美観を損なうことなく,人間から放射される遠赤外線エネルギーを効果的に取得することが可能となる.
オンラインショッピングを通じて、より安価に商品を購入できたり、商品のさまざまな情報を得ることができる。そのため、オンラインショッピングの需要は近年急速に増加している。しかし従来のWEB上の提示方法(テキスト、画像等)では、ユーザが商品のデザイン等の情報を把握出来ない、またリアルタイムに他人の推薦を受け取れないという問題がある。この問題を解決するため、我々は屋内環境において複数人利用が可能な、仮想ファッション商品(衣類、帽子、バッグなど)試着型ショッピングインタフェースを提案、実装した。本システムでは、ユーザは定義されているジェスチャーを用いて、大型ディスプレイ上の仮想オブジェクトを移動、選択することができる。そして、ユーザは他のユーザに選択した仮想オブジェクトを手渡すことができる。身体に仮想商品をフィッティングさせることによって、ユーザは実店舗における試着と似たフィードバックを得ることができる。
本稿では,学会の登壇発表を録画した動画を2つ同時に見られるシステムを提案する.発表で重要な部分が同時刻に再生されないように,重要でない部分を高速再生し,重要な箇所の再生位置をずらす.重要箇所の検出は学会中に行われてたチャットログを用いた.これにより2つの動画を同時に,かつ注目されている部分は見逃さずに視聴することができる.
日常行われている会話には,様々な問題点がある.たとえば失言や重要な話の聞き逃しは,人間関係を悪くしてしまう危険性がある.これらは,空気中の音速で声が人間の何百倍の速さで移動する事が要因と考えられる.音速を遅くすることで,音声に追いついたり音声の重畳や参照をすることが可能になる.そこで,超低音速空間CreepingVoiceを構築し,会話の問題解決を試みている.本稿では,超低音速空間CreepingVoiceを実装するための基礎的な実験の結果について報告する.
針と糸を用いた``縫う’’という行為は,裁縫・刺繍・手術など様々な場面において我々の生活を支えてきた.しかし近年はミシンなど技術の発達により,手で縫う機会が減りつつある.本研究では,このような縫う行為を拡張/支援することで,手縫いの単調でつまらない作業を楽しくし,繊細で難しい作業をサポートするようなインタフェースの開発を目的とする.具体的には,導電布を階層的に複数枚重ねることによって,針の刺さった位置および方向を認識する手法を提案する.針の刺さった状態を認識することで,糸がどう縫われていったかを推定することができる.さらに今回は特に刺繍に着目して,これを応用した刺繍支援アプリケーションの提案を行う.
本稿では,筆記音の聴覚的フィードバックが筆記作業に与える影響を検討した.特に,一般的な紙とペンの組み合わせで生じる筆記音に着目し,筆記音を鮮明にフィードバックする条件と,筆記音をあえて遮断する条件を設け,それぞれの条件で筆記作業の単純作業(漢字のなぞり書き)がどのような影響を受けるかを実験的に明らかにした.また,筆記音の聴覚的フィードバックとしての筆記音の音像が一定の場合(モノラル方式)と移動する場合(ステレオ方式)とで作業量への影響が異なるか調べた.その結果,筆記音の聴覚的フィードバックを行うと多く書けることが明らかになった.ただし,フィードバック効果の出現時間はステレオ方式が早いことが分かった.
声の強弱、高低、速度などの要素はコミュニケーションにおいて感情や雰囲気を伝達させるために不可欠なものである。本研究では、発話におけるこのような特性をフォントの特性に基づいて視覚化できる音声認識・文章作成アプリケーションのシステムと効果的なグラフィックユーザーインターフェイスの在り方について提案と議論を行う。
ユーザの特徴やサービス環境の情報を記述するためのモデルを構築した.部屋の物的な構成を記述するモデルと起こり得る状況と一連の流れを表現するモデルを用いることで,システム内で部屋の状況を記述することが可能になった.これによって,部屋の状況へ柔軟に適応可能なサービスが実現できるという見通しを得た.また,サービス事例を実現するための実環境の構築,そこで用いる機器操作ツールの開発を行った.