大会委員長からのメッセージ

「インタラクション2012」は1997年の最初の開催から数えて16回目の「インタラクション」です.毎年先進的な研究発表を集め,多くの参加者にご参加いただき,インタラクション研究に取り組む私たちのコミュニティの主要な発表の場として成長してきました.前年度は震災のために中断して避難することになりましたが,その避難の過程でも,大人数でありながらまとまって行動する様子に,このシンポジウムを大切にするコミュニティの絆を感じました.

参加いただく多くの方に,このシンポジウムを「必ず参加しなければいけない会議」と認識していただいています.このように興味を持ち続けていただいている求心力の源泉は,そこで発表される一般講演発表,インタラクティブ発表の質の高さにあると考えます.それぞれの研究者が工夫を凝らして取組んできた研究成果をしっかりと受け止める発表の場を確実に運営し続けることが,シンポジウム「インタラクション」の使命であり,我々のコミュニティから新しいコトを起こすための必要条件であると考えています.

この認識のもと,2012年のインタラクションは,2011年と同様に社会に開かれたインタラクションであろうとする努力を続けながらも,「未来につなぐインタラクション」をスローガンに「持続可能性」を意識してデザインしています.将来にわたって持続可能な財務計画を立て,ボランティアの実行委員によって実行可能な運営方法の基本形を作ることを意識して会議全体を設計しています.また,発表された内容が,次の世代の研究者や研究プロジェクトに受け継がれるように,成果のアーカイブとしての質の向上にも取り組みます.皆さんが丹精こめて取り組んだ研究成果を参加者全員でしっかり受け止めて,じっくりと議論する機会を提供することをプログラムの機軸として編成する計画ですので,きっと楽しんでいただけることと思います.

インタラクション2012を開催するために,日本科学未来館をはじめとする関係者の皆様の御協力をいただきながら,実行委員・プログラム委員が力を合わせて準備を進めています.しかし,何よりも大切なのは,皆様自身の関与です.研究成果の投稿,当日の参加,周囲の方にインタラクションを紹介いただくこと等,色々な形でこのシンポジウムとコミュニティの発展にご参画いただけます.

インタラクションがこれからも永きにわたって新しさの源泉であり続けるために,皆様の積極的な参加をお願いいたします.

インタラクション2012 大会委員長
小林 稔(NTT)

プログラム委員長からのメッセージ

私はこの5年間,インタラクションの実行委員としてこの会議に関わってきました.インタラクション研究における国内最大級のイベントを成功させるために,毎年全力を尽くしてきました.その一方で,私自身が反省していることがあります.それは「成果を未来につなげる」という長いスパンでの認識を忘れていたことです.

インタラクションという学問分野には,その瞬間・その場でないと体験し得ないものを追求する側面があります.だからこそ,本会議でもインタラクティブ発表というデモの場があるわけですが,体験そのものを提供するだけでは,後に何も残らないお祭りになってしまう可能性があります.科学とは,先人によって築きあげられた知の上に,さらに積み上げていくものです.これを怠れば「車輪の再発明」が頻発し,学問分野全体の前進を妨げます.インタラクション研究も例外ではなく,だからこそ,その瞬間・その場にいなくとも,どのような体験なのかを可能な限り残していく必要があるのだと思います.

時空間を越えた積み上げを実現しうるメディア,それが論文です.文章での表現には限界がありますが,充実した記述を行えば,その学会に参加できなかった人たち,あるいは100年先の未来で研究する人たちも,そのインタラクションを擬似体験できます.

インタラクション2012のインタラクティブ発表では,論文のページ数を6ページに拡大しました.採録された論文はアーカイブされ,インターネット上で広く公開されます.ぜひ,提案システムのもたらす体験を,詳細な文章や豊富な図表で記していただけたらと思います.論文は,私たちの研究分野を未来につなげるための大事なメッセージなのです.

また,限られた会場内で最大限質の高い発表を実現すべく,インタラクティブ発表においても査読を行い,かつプログラム委員の投票によってインタラクティブ論文賞を事前に決定します.これによって,「よい研究とは何か」,すなわち,インタラクション研究のあるべき姿は何か,についての活発な議論が起こることを期待しています.

一般講演発表では,優れた論文を集め,より適切な査読を行うために,査読者指名制度を導入しました.プログラム委員会は,「良い研究」を判断できる眼をもった委員によって構成されていると自負しています.この委員の方々に「どのような論文に期待するか」をひとりひとり書いて頂き,このウェブサイト上で閲覧できるように致します.投稿論文のもつ多様な価値を,より適確に審査するために,最も近い観点の査読者を選んでいただければと思います.

優れた論文は論文誌に推薦しようと考えております.私たちの熱い想いに応える論文のご投稿に期待しております.奮ってご投稿ください.

インタラクション2012 プログラム委員長
宮下 芳明(明治大学)